×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
理はあえてゆっくりと洗濯ものを片付け、遅れて階下へ降りた。台所には短髪の、いかにも快活そうな男がいた。「こんばんはー」と理を見て手を振る。Tシャツの袖から露出する腕は太く、よく鍛えられた身体をしていた。
こんばんは、のイントネーションがここら辺とは違った。
「夜分にすんません、立花求(たちばなもとむ)言います。シローとは大学の同期ですわ。まあ、シローよりおれの方が先に卒業してもうたんやけど。いま夏休み中でして、あ、映像編集の会社に勤めてんのですけどね。ま、夏休みやーて、青春十八きっぷ使て電車旅してんのですわ。ちょうどこっちまで来て終電なりそうやて、シローに連絡してお邪魔しちゃいました。今晩よろしゅう頼んます」
「えーと、キューの出身は関西なんだよ。ごめん、うるさいね」
「きゅう?」
「あ、あだ名。名前が『求める』って書くから」
「せや、ずっとキュー呼ばれてますん、お兄さん? もどうぞお好きに呼んだってください。もうね、ちんまいころからキューやキューや呼ばれて、自分でもほんまの名前キューやないかって思うぐらい。立花キューやどう思います? なんか芸名みたいでこれでデビューできそう、て、なにデビューや、ははは」
関西の人間が皆うるさいとは思わないが、よく喋ってやかましい。慈朗は慣れているのかもしれないが、理にはややきつかった。生徒でもよく喋る傾向の人間はいるのだが、理は必ずしもそれを好んではいない。
あとは好きにしてくれ、と半ばあきれて理は隣の部屋に入った。
「あ、理、」
気にしたのか慈朗が声をかけたが、手で合図して特に答えはしなかった。布団に横になるも、隣から声がよく聞こえた。「うるさくしてもうた? お兄さんなんやシローにあんま似てないな。怖い人やな」
「それがうるさいんだって。もう喋るな。喋ったら追い出す」
「そない無理言うなって。口から生まれて来たんがおれや。分かった、わーかった。音量落とすで。こないなぐらいでどや? そんな目で睨むなって」
声がひそひそと潜められたが、音が聞こえていることには変わりない。理は寝返りを打つ。
「せやけど、怖そな人やけん、なんか雰囲気ある人やな。浴衣なん着て、よぉ似合ぉてる」
「……いいから、風呂場あっちだから、入って」
「一緒に入らへんの? 寮じゃよぉ長風呂したなぁ」
「入らねえよ!」
いつまでも声が耳障りで、寝返りばかり打った。
寝苦しい夜を過ごして、ろくに休めないまま朝を迎えた。熱を測ると微熱程度で、身体は重たいものの動けないほどではなかった。やはり今年の夏風邪は手加減があったのだろうか。だるさを引きずりながら簡単に朝食を作り、家を出て学校に向かった。玄関に脱ぎ捨てられたスニーカーを見て、うんざりする。あのやかましい男の顔をあまり見たくないし、自分が出かけているうちにまた旅に出るだろうと思った。
登校すると、先輩美術教諭に驚かれた。「てっきり今日はおやすみされると思っていましたよ」と言われ、理は曖昧な返事をする。頭が重くてうまく働かないが、仕事が出来ないほどでもないのだ。「意外と動けるので、仕事をします」と言うと、彼女はそれ以上深くは追及しなかったが、後で「休憩にしましょうよ」と言って出してくれたのは梅昆布茶だった。いつも飲むコーヒーよりはこういう簡単なスープみたいなものの方が入るので、ありがたかった。
早く帰れそうだったので生活雑貨の買い出しだけして帰るか、慈朗に連絡を取るか考えて、面倒になって車を動かした。繁華街にある古い映画館に入り、上映の近い適当な映画を選んで中に入り、椅子に深く腰掛けて目を閉じた。車の中で眠るには冷房をずっと効かせていなければならないし、うまく日陰を見つけられなければ日光がたまらない。こういうところの方が眠れる、と思った。うまいこと静かな音声の映画だったので、理はうとうとと眠った。次第に寒くなって起きた。映画館を出るとまたうだる暑さに飲み込まれ、車のエンジンをふかして家に帰る。もうさすがにいないだろうと踏んだ。
それが、「おかえりなさーい」の調子はずれな明るさで迎えられて、理は閉口した。
慈朗が申し訳なさそうな顔をしながら、やはり「おかえり」と言った。
「すんませんね、長居してます。また移動しよう思たんですけどね、久々にシローの顔見れたし、なんやおもろくなりまして。ここら辺あちこち案内してもらうことにしたんですよ。電車旅だと電車のあるところにしか行けへんですしね。今日はあすこ行きました、あすこ。高原美術館」
ぺらぺらと立花はよく喋った。電車のあるところにしか行けないことを気にするなら端から電車旅なんかやめちまえよ、と心の中で理は悪態をつく。「シャワーをつかいますので」と適当に追い払って浴室へ逃げこんだ。ぬるいシャワーを頭からかぶっていると、「理、いい?」と慈朗が脱衣場から声をかけてきた。
←(2)
→(4)
PR
◇
その夏は梅雨明けが遅かった。
梅雨の終わりまでしつこく残った雨のおかげで地面は乾かず、湿度の高い不愉快な八月だった。日光は照り、風は凪ぐ。理が数年前に異動してきたいまの学校は施設が古く、よって設備も古い。冷房の効きが悪く、効いたとしてかび臭い嫌なにおいしかしなかった。夏休みに入れば授業はない。生徒もいない。そういうわけで、冷房自体もごく控えめな使用だった。
いまの学校に移ってから、理は車で通勤するようになった。前やその前の学校は実家から比較的近かったので公共交通機関を使ったのだが、異動して、遠くなった。単身赴任する案も少しは考えたが、慈朗が嫌がったので、やめた。つくづく甘い自分を自覚する。それにそこまでして自家用車で通いたくない理由があるわけでもなかった。(あまりにも問題の多い学校だと鬱屈した生徒によって車にいたずらされる、という懸念はあったが、いまの職場はそれを心配するほどでもない。)
連日の猛暑日、連夜の熱帯夜。身体にこもる熱を理はうまく発散できない体質のようで、それは発汗機能などが関係してくるように思うが、解明に至ったことはない。とにかく八月は消耗する。その消耗がピークに達したとき、理は起きあがれなくなる。それが毎年のことで、頭痛、眼痛、めまい、倦怠感などの予兆がある。
その日も理はそのにおいを嗅ぎ取った。これはまた調子を崩すな、と思える予感だ。毎年断っても断ってもばかみたいに丁寧にやって来るのだからお中元みたいなもので、だったらつめたく冷やした水ようかんだったら嬉しいのにね、と言ったのは赤城だった。赤城はひどい甘党なのでそういう思考になるようだった。それを慈朗に話したら、「おれなら果物がいいな」とコメントした。「桃だと嬉しい」と言う。慈朗の実家では毎年Oの親戚から白桃が贈られてくるといつか聞いたことがある。
そういう、くだらない過去のことを思い出しながら、慈朗に連絡は入れておいた。「今夜からおそらく寝込む」「早く帰る」。あまり詳細なメッセージを送らなかったが、通じるだろうと思った。慈朗と暮らしはじめて二年目の夏で、看病など人の世話のへたくそな慈朗だから、要するに「こちらのことは心配せずかまわないでいい」という意味合いも含んでいた。
早めに帰宅するも、家の中は空だった。慈朗は一昨日の早朝から出張で留守だが、今日は帰って来る。帰宅の時刻までは聞いていなかった。まだ帰らないんだなと思いつつ、寒いんだか熱いんだか分からぬ身体を引きずって、台所の隣の六畳間に布団を敷いた。いつ「お中元」がやって来てもいいように準備は整えてある。二階まで上がる気力がないので洗濯物は慈朗に任せることにした。そのうち帰って来るだろうと思いながら布団に横になってまどろんだ。
夜になって目が覚めた。まだ陽がなんとなく残っていてほの明るい。いつもならもっと早く熱が上がり、食欲が失せ、起き上がれなくなるほどなのに、発熱の度合いが緩やかだ。こういうのが案外重症化するんだよなと懸念しつつ、身体を動かして風呂場へ向かった。濡らしたタオルで身体を拭って着替える。夏場、一昨年あたりから理は寝る際に浴衣を使っていた。父が好んで使っていたものが整理の際に出て来て、状態がよかったので使うことにしたのだ。羽織って腰を緩く結ぶだけなので、慣れてしまえばパジャマより手早く楽だった。
慈朗はいない。戻っていないということは洗濯ものは取りこまねばならない。二階へ這い上がって物干し場から衣類を下ろした。ガラス張りなので放っておいても風雨に当たる心配はないのだが、こういう細かなところに癖のあるのが理という男だった。
階下で人の声がした。どうやらひとりではなく複数だ。慈朗だろうか、とぼんやり考えていると、今度ははっきりと物音がした。誰かが二階へ上がって来る。
ひょこっと顔を覗かせたのは慈朗だった。
「ごめん、いま理からのメッセージ読んだ。身体、辛い?」
「まあまあ」
「そっか……あのさ、実は友達が来てて、……大学の同期で、同じ寮だったんだけど。そいつが泊まらせてくれって言うんだ。同居人がいるからだめだって言ったんだけど、ひと晩ぐらいとか言われて、それで」
それで声がふたつ聞こえたのか、と納得した。
「別にいい」
「いや、帰らすよ。理の夏風邪の方が心配」
「思ったよりは熱が上がってないんだ。今年のお中元は手加減したんじゃないの。おれは下で寝るから、泊まらせてやんな。二階、そっちの部屋は空いてるんだし」
「東部屋?」
「朝日はいちばんに入るだろうけど」
「いや、……ごめん、理」
慈朗の手がするりと理の額に伸びた。「確かに熱はあんまりないね」と慈朗が言う。襟元のあいた薄手のTシャツから見える、汗をかいた肌が妙になまめかしく、恋しかった。慈朗に会うのが三日ぶりだからか、風邪で人恋しくなっているのか。
おかえりを言い忘れたと思い、それを口にしようとして、階下から「シローっ? まだかー?」とよく響く声が聞こえた。頭の芯にぐらぐらする太さだった。
「ああ、もう……」
慈朗の身体がぱっと離れる。そのまま階段を下りると思いきや、ふと立ち止まり、理の元へ駆け寄ってきた。
理の肩口に額を載せて「ただいま」と言い、すぐに下へ降りて行った。
←(1)
→(3)
梅雨の終わりまでしつこく残った雨のおかげで地面は乾かず、湿度の高い不愉快な八月だった。日光は照り、風は凪ぐ。理が数年前に異動してきたいまの学校は施設が古く、よって設備も古い。冷房の効きが悪く、効いたとしてかび臭い嫌なにおいしかしなかった。夏休みに入れば授業はない。生徒もいない。そういうわけで、冷房自体もごく控えめな使用だった。
いまの学校に移ってから、理は車で通勤するようになった。前やその前の学校は実家から比較的近かったので公共交通機関を使ったのだが、異動して、遠くなった。単身赴任する案も少しは考えたが、慈朗が嫌がったので、やめた。つくづく甘い自分を自覚する。それにそこまでして自家用車で通いたくない理由があるわけでもなかった。(あまりにも問題の多い学校だと鬱屈した生徒によって車にいたずらされる、という懸念はあったが、いまの職場はそれを心配するほどでもない。)
連日の猛暑日、連夜の熱帯夜。身体にこもる熱を理はうまく発散できない体質のようで、それは発汗機能などが関係してくるように思うが、解明に至ったことはない。とにかく八月は消耗する。その消耗がピークに達したとき、理は起きあがれなくなる。それが毎年のことで、頭痛、眼痛、めまい、倦怠感などの予兆がある。
その日も理はそのにおいを嗅ぎ取った。これはまた調子を崩すな、と思える予感だ。毎年断っても断ってもばかみたいに丁寧にやって来るのだからお中元みたいなもので、だったらつめたく冷やした水ようかんだったら嬉しいのにね、と言ったのは赤城だった。赤城はひどい甘党なのでそういう思考になるようだった。それを慈朗に話したら、「おれなら果物がいいな」とコメントした。「桃だと嬉しい」と言う。慈朗の実家では毎年Oの親戚から白桃が贈られてくるといつか聞いたことがある。
そういう、くだらない過去のことを思い出しながら、慈朗に連絡は入れておいた。「今夜からおそらく寝込む」「早く帰る」。あまり詳細なメッセージを送らなかったが、通じるだろうと思った。慈朗と暮らしはじめて二年目の夏で、看病など人の世話のへたくそな慈朗だから、要するに「こちらのことは心配せずかまわないでいい」という意味合いも含んでいた。
早めに帰宅するも、家の中は空だった。慈朗は一昨日の早朝から出張で留守だが、今日は帰って来る。帰宅の時刻までは聞いていなかった。まだ帰らないんだなと思いつつ、寒いんだか熱いんだか分からぬ身体を引きずって、台所の隣の六畳間に布団を敷いた。いつ「お中元」がやって来てもいいように準備は整えてある。二階まで上がる気力がないので洗濯物は慈朗に任せることにした。そのうち帰って来るだろうと思いながら布団に横になってまどろんだ。
夜になって目が覚めた。まだ陽がなんとなく残っていてほの明るい。いつもならもっと早く熱が上がり、食欲が失せ、起き上がれなくなるほどなのに、発熱の度合いが緩やかだ。こういうのが案外重症化するんだよなと懸念しつつ、身体を動かして風呂場へ向かった。濡らしたタオルで身体を拭って着替える。夏場、一昨年あたりから理は寝る際に浴衣を使っていた。父が好んで使っていたものが整理の際に出て来て、状態がよかったので使うことにしたのだ。羽織って腰を緩く結ぶだけなので、慣れてしまえばパジャマより手早く楽だった。
慈朗はいない。戻っていないということは洗濯ものは取りこまねばならない。二階へ這い上がって物干し場から衣類を下ろした。ガラス張りなので放っておいても風雨に当たる心配はないのだが、こういう細かなところに癖のあるのが理という男だった。
階下で人の声がした。どうやらひとりではなく複数だ。慈朗だろうか、とぼんやり考えていると、今度ははっきりと物音がした。誰かが二階へ上がって来る。
ひょこっと顔を覗かせたのは慈朗だった。
「ごめん、いま理からのメッセージ読んだ。身体、辛い?」
「まあまあ」
「そっか……あのさ、実は友達が来てて、……大学の同期で、同じ寮だったんだけど。そいつが泊まらせてくれって言うんだ。同居人がいるからだめだって言ったんだけど、ひと晩ぐらいとか言われて、それで」
それで声がふたつ聞こえたのか、と納得した。
「別にいい」
「いや、帰らすよ。理の夏風邪の方が心配」
「思ったよりは熱が上がってないんだ。今年のお中元は手加減したんじゃないの。おれは下で寝るから、泊まらせてやんな。二階、そっちの部屋は空いてるんだし」
「東部屋?」
「朝日はいちばんに入るだろうけど」
「いや、……ごめん、理」
慈朗の手がするりと理の額に伸びた。「確かに熱はあんまりないね」と慈朗が言う。襟元のあいた薄手のTシャツから見える、汗をかいた肌が妙になまめかしく、恋しかった。慈朗に会うのが三日ぶりだからか、風邪で人恋しくなっているのか。
おかえりを言い忘れたと思い、それを口にしようとして、階下から「シローっ? まだかー?」とよく響く声が聞こえた。頭の芯にぐらぐらする太さだった。
「ああ、もう……」
慈朗の身体がぱっと離れる。そのまま階段を下りると思いきや、ふと立ち止まり、理の元へ駆け寄ってきた。
理の肩口に額を載せて「ただいま」と言い、すぐに下へ降りて行った。
←(1)
→(3)
頭の奥底が鈍く痛んだ。
目の奥が眩く発光しているような明滅を束の間味わい、理は知らずのうちに舌打ちをしていた。毎年必ずなにかと理由をつけてやって来るもの。ここまで欠かさず丁寧に来られると、嫌味に挨拶でもしたくなる。やあやあようこそ。今年もいらっしゃいませ、相変わらずお元気で。
同じく美術準備室内にいた中年の女性教諭に、「柾木先生?」と声をかけられた。
「水出しのコーヒーがちょうどよいようですけど、飲まれます?」
「いや、……今日はやめておきます」
「あら珍しい。ん? 前にもありましたね、こんなこと」
んー、と彼女は考え込み、やがて「あれが来ましたか?」と訊いた。
「そうですね、あれが」
「毎年律儀ですこと。今日はもう帰られます?」
「いえ、まだ軽い頭痛と眼痛ぐらいなので、いまのうちに仕事をします」
「そうですか、無理なさらないでね。去年は結局、どのくらい寝込んだんでしたっけ」
「確か」思い出すのも面倒だが覚えていた。「寝込んだのは、三日ほど」
「去年は完治までずいぶんかかった気がしますよ」
「来客がいてうまく休めなかったんですよ。今年は大丈夫のはずです。多分」
「この学校に来てはじめのご挨拶が『夏にはご迷惑をおかけします』だったの、あれはもう四年前でしたかね。今年こそ、お大事に」
「そうですね、気をつけます」
こうなってくるといよいよ慌ただしい。いまのうちに出来ることをして、帰れそうなら早く帰るべきだろう。今回はどうだろうな、と身体の内にこもる熱を量る。
(まあ、去年のようなことはないか)
去年のあれはあれで、慈朗の方が堪えたらしい。あれ以降連絡を取っているのかいないのか、そこまで把握はしていないが、会うときは外で、と決めているようだった。
(いまのうちに慈朗に連絡……)
目を閉じる。目蓋の辺りを熱く感じる。ふと、慈朗の冷たい手を目元に欲しくなって、理は苦笑した。幼いころ理の身体の心配をしたのは祖母で、夏場は決まって彼女が面倒を見てくれた。思春期のころには気付けば赤城がいた。ばっかだなあ、また身体だめんなってんの、と笑う声がよみがえる。
ひとりの時期もあった。何年もあった。このまま一生終わると覚悟もしていた。それでいま、自分は慈朗のことを当たり前に欲しがっている。
学習しない身体は、しかし思うほど恨めしいものでもないのかもしれない。理は相変わらず夏風邪を引いたようだった。
→(2)
写真は何枚でもあった。慈朗にしては相当数を撮ったようだ。それだけ「いい」と思える瞬間が多かったのかと思っていると、再生マークのついた画像が出て来た。「これ動画」と慈朗が言う。
「そんなの撮ったのか」
「んー、まあ、記念にね。デジカメはこういうの便利だよね」
カチ、とマウスを動かして慈朗は動画を再生した。レストラン内での動画らしい。写っていたのは椅子に並んで座るカップルと、その親たちだった。中心に花で飾られた新郎たちがいて、その両脇にそれぞれの母親がいてとても驚いた。
会場は人の話し声や奏でられる音楽でざわめいていた。その音にかき消されないように真ん中のふたりがなにか喋っているのだが、音量がちいさくて聞こえない。慈朗がパソコンのボリュームを上げた。『アヤ、元気?』と、聞こえたのは赤城の声だった。
『あら、これ柾木くんに送るビデオメッセージなの?』と赤城に訊ねたのは、隣にいた彼の母親だった。赤城とは学生のころからの付き合いなので、親のことも知っていた。赤城の父親は亡くなってしまったが、母親はこうしてハワイまで息子の挙式に出かけたのだ。
『柾木くん、相変わらずうちの息子がごめんなさいねぇ。迷惑かけっぱなしで』と息子そっちのけで赤城の母親が語り出す。
『母さんうるさいよ』
『でもね、こんな歳で息子が増えたの。あちこち飛び回ってるときはね、もうどこで死んでも知りませんって思ってたけど、こうして家族が増えるのは嬉しいね。この歳まで生きてても、そんなに悪くはなかったわ』
『ねえ母さん、相変わらずアヤ相手に自分の話をするの、やめない?』
『柾木先生、お久しぶりです。青沼です。……あ、赤城になるんですけど、』横から語りかけて来たのは青沼だった。高校生のころより上背はあったが、ただ上に長いだけという感じがしていた体躯は立派な大人のそれになっていた。
『信じらんないけど、今日はおふくろも来てます』
『柾木先生? ご無沙汰しております、青沼恵士の母です。高校の進路のことばかりでなく、色々と、息子がお世話になりました』
青沼の隣に座っていた、細面の女性が喋る。数年ぶりで正直顔までは覚えていなかったが、目元は青沼に似ていた。いつか青沼を夜に送った際には、ひどい憔悴ぶりでかわいそうに見えた。息子をどう理解していいのか分からないという印象を受けていたから、この場にいることは青沼と同じく「信じらんない」、驚くべきことだった。
『こういうのも、幸福って言うのでしょうかね。あまりうまく言葉が出ませんけど、……夢の中にいるみたいな場所です、ここは』
『おふくろ、緊張しすぎだよ』
『だって動画なんだもの。記録に残るんだから、いいこと言わないと』
『考えすぎですよ。この動画撮ってるの、雨森なんだし』
四人はそれぞれの関係性の欠片を理に示しつつ、なごやかに喋った。そして最後に赤城が『アヤ』と呼び掛けて、四人がこちらを向く。
『とにかく、僕らはこうやって生きていくから、まあ、日本に帰るときはまた会おう』
『柾木先生、ありがとうございました、色々』
『色々ってなん? 恵士』
『雨森もありがと……おまえ、なに笑ってんだよ』
わあわあと喋ったり笑ったりして動画は唐突に切れた。なんだかな、と理は息をつく。
「わざわざハワイまで行っておれ宛ての動画とか、面白くねえよ、慈朗」
「え、よかったでしょ。だって青沼のおふくろさんまで来てたから……おれ、あそこがあんな風に和解してると思わなかったなって」
それはそうだな、と思って頷く。
「おれの知ってる青沼のおふくろさんはいつも疲れてる人だったから、なんか、よかったなって思ったら、動画も撮りたくなったんだ」
「そうか」
「赤城先生の『アヤ』って久しぶりに聞いたな」
「おばさん、元気そうでよかった」
「赤城先生のお母さん?」
「ああ。確か足悪くして以降あんまり自由に出来ないっていつか聞いてたから、まさかハワイまで行くとはな」
「杖ついてたけど、景色が綺麗ねってあちこち動き回ってたよ。元気な人だった」
「おばさん、相変わらずだな」
赤城の好奇心旺盛なところは、彼女から譲られたに違いない、と昔からずっと思っていた。足を悪くする前はあちこち出かけるのが好きで、旅行は当たり前、登山にドライブにと、すこし時間があればすぐ出かけるような人だった。息子がハワイ在住になんかなってしまったら、居つきそうだ。元気な姿は安心した。
ひととおり見終えて、理は伸びをする。時計は正午を指していた。
「遅く食べたからあんまり腹減ってないけど、昼、どうする? どっか出るか?」とパソコンを仕舞う慈朗に訊いた。
「食材は昨日買って来たからあるけど」
「じゃあ家で食べようよ」
「ん」
「それでさ、しよう、理」
あんまりにもストレートな誘い文句に面食らった。
「……昨夜、したろ」
「いや、なんか写真とか動画見てたらすごく理としたくなった」
それでも言い慣れぬ台詞が照れ臭いのか、機材をいじっている。
「だめかな」
「いや、……」
理は慈朗に近づいた。
「いいよ。しよう」
「ふふ」
「そうなると昼めしが本当にどうでもよくなるな」
「あ、理ぁ」
畳に座ったままの慈朗が理を見上げる。嬉しそうにしているのでなんだろうと思っていると、慈朗は「おれ、来季からフリーになるから」と言った。
「西門(にしかど)先生のアシスタントやめるんだ」
「西門先生って、写真の?」
「うん。先生ね、今年の冬から仲間何人かと事務所立ちあげんの。そことカメラマンの契約して、これからはおれ個人で仕事を請けることにした。地方あちこちする生活は変わんないけど、スマホとパソコンがあれば仕事依頼は受けられるしね。だから拠点、ここにする」
「……」
「ここで暮らすよ」
どうかな、と慈朗は首を傾げる。そんなのだめなわけがない。
理も知らずのうちに微笑んでいた。こいつとはこうなんだな、と思う。静かに、穏やかに、暮らしていく。
それは永遠に秘め事をしているような、それを共有するような、ほんの少しの後ろめたさがある。この人は恋人ですとおおっぴらに言えない理の性格上、どうしてもそうなる。すると慈朗とは永久に共犯とでも言うのか。悪くない。
End.
←(12)
番外編はもう少し続きます。引き続きお付き合いを。
目が覚めると雨は止んで、外は明るかった。薄日が差し込んでいる。いま何時だ? とスマートフォンを引き寄せて時刻を確認すれば、朝九時をまわっていた。さすがに眠りすぎた気がしている。
梅雨の合間の陽光で、気温が上がり蒸し暑くなることを感じさせる朝だった。理の苦手なシーズンに突入しつつある。布団の中に慈朗はすでにいなかったので、あくびをしながら部屋を出た。ベランダには洗濯物がすでに吊り下げられている。
階下へ降りる。慈朗は台所の隣の六畳間で、ノートパソコンに様々なケーブルをつないでなにかやっていた。デジタルで撮った画像をチェックしているようだ。現れた理を見て「おはよ」と言い、「おなかすいたよ」と朝食を催促した。
「よく寝てたから起こさなかったけど、今日は休みでいいんだよね?」
「ああ、申請したからな。――ちょっと待ってろ、シャワーだけ浴びてくる」
と、タオルや着替えを拾いつつ、ふと慈朗の手元を見た。
「それ、今回のハワイの挙式のデータか?」
「うん、そう。改めて画像チェックしてんの。フィルムで撮ったのもあるけど、この家に暗室ないからね。それは後回し」
ちらりとパソコンの画面を見たが、拡大されていて全体像を見ることは出来なかった。「あとで見せるよ」と慈朗が言う。
「ああ」頷いて浴室へと向かう。
シャワーを浴び終えて台所へ戻った。ひとまずコーヒーを最初に入れる。理はブラックで飲むが、慈朗はミルクを入れないと飲めない。マグカップを渡して再度慈朗の手元を覗き込んだ。データの整理はあらかた済んだようだった。
「めしにしよう。ちょっと手伝ってくれ」
「うん」
理が魚を焼いているあいだに、慈朗は食器の準備をした。未だに食事を作ることは苦手だが、材料をぶち込んで具材に火が通るまで煮て、あとは味噌なりだし醤油なりコンソメなりを放り込めば汁物ぐらいはできると分かってから、慈朗は汁物だけは作るようになった。食卓に和食が並ぶ。ハワイ帰りの慈朗のためだった。
時間が遅くてテレビはニュース番組を終えていた。見るものもないので向かい合わせに座って黙々と食事にありつく。数日前の夕飯に作っておいたスナップエンドウとベーコンとジャガイモの炒め物の残りも出したが、これを慈朗は気に入ったようで、器はあっという間に空になる。
食器を片付けて、ざっと部屋を掃除する。シーツの洗濯もする。そのあいだ、慈朗は再びパソコンをいじっていた。あらかた済んだところで手招きされる。「写真、見ようよ」と慈朗は言い、台所のテーブルまでパソコンを引っ張ってきた。
椅子に腰かけて眺める画面の中には、青みがかったシルバーのタキシードに揃いで身を包み、胸に花を挿して笑っている赤城と青沼の姿があった。
「ここが教会?」
「うん。教会で挙式して、そのあと近くのレストランに移ってパーティだった。このアロハ着てるの神父さん」
慈朗の説明を聞きながら画像を繰っていく。時系列になっているので教会の様子からレストランでのパーティまでが追えた。アロハシャツを着た神父は確かにロザリオを胸から提げており、その前にはやや緊張した面持ちの青沼と、いつも通りふんわりと笑っている赤城の姿があった。誓いのキスをして、教会を出て来たところで集まっていた人々に祝福されている。慈朗が言う通り通りがかりの人もいて、それはタンクトップを着ていたり、ビーチサンダルだったりで分かった。
ここに至るまで、ふたりの道のりは長かっただろうか、と考える。一度は青沼の前から姿を消した赤城を、青沼は探し回った。再会を果たしたのは確かローマで、青沼は大学を卒業して一年目だとか二年目だとか、そんなころだったと思う。あまり昔の話ではない。今回のハワイでのウェディングは、赤城の提案だったとは聞いた。赤城となじみの友人がハワイの出身で、いつか遊びに来れば案内するよと言われていたのを、ウェディングのタイミングで実現したらしい。
理にも挙式の案内が届いていたが、学校教師が長期休みでもないのにハワイには行けなかった。慈朗はカメラマンとして来てほしいという正式な依頼があったというので、祝儀は慈朗に預けて送り出した。ハネムーンにくっついていくのもどうかと理なら思ってしまうが、あの南国の島々を、挙式後に赤城のなじみの友人の案内で、赤城、青沼、慈朗という面子でまわったらしい。だから今回の慈朗の渡航は二週間という比較的長期にわたっていた。
赤城と青沼は始終幸福そうだった。ふたりでビーチに並んで座っているのを背後から撮った写真もあり、なんかこのふたりなら晴れたビーチで開放的な気分のままことに及べそうだと、余計なことも思った。このふたりは人目を気にしなかったから、日本にいて苦しかっただろう。堂々と表を歩ける社会も世界にはあるということだ。
自分はどうだろうな、と写真を見ながら考えた。慈朗とのことを親しい人には伝えてあるが、それは親だとか慈朗の家族だとか、そういうごく一部に限られる。自分から大手を振ってこいつが恋人です、というようなことはなかなか表明できない。こういう性分だから、赤城と青沼のように海外へ行って慈朗と暮らす選択肢も、考えていない。
できるだけ穏やかに、ぬるい今日と同じような明日を暮らしたい。自分からは発火したくない。けれどそんなのはひとりでいることをやめた日に、違う、と気付いた。慈朗を守るためにはやけどもするような燃える火口にも、時には手を突っ込まなければならない。
それぐらいは覚悟を決めた。けれど慈朗はどうだろうか。まだ充分若いのだから、手放すならいまのうちに、と考えないわけではない。――生涯の伴侶に選ばれた自分のことを信じがたい。ずっと報われない恋を続けたせいかもしれない。
←(11)
→(13)
階下へ降りる。慈朗は台所の隣の六畳間で、ノートパソコンに様々なケーブルをつないでなにかやっていた。デジタルで撮った画像をチェックしているようだ。現れた理を見て「おはよ」と言い、「おなかすいたよ」と朝食を催促した。
「よく寝てたから起こさなかったけど、今日は休みでいいんだよね?」
「ああ、申請したからな。――ちょっと待ってろ、シャワーだけ浴びてくる」
と、タオルや着替えを拾いつつ、ふと慈朗の手元を見た。
「それ、今回のハワイの挙式のデータか?」
「うん、そう。改めて画像チェックしてんの。フィルムで撮ったのもあるけど、この家に暗室ないからね。それは後回し」
ちらりとパソコンの画面を見たが、拡大されていて全体像を見ることは出来なかった。「あとで見せるよ」と慈朗が言う。
「ああ」頷いて浴室へと向かう。
シャワーを浴び終えて台所へ戻った。ひとまずコーヒーを最初に入れる。理はブラックで飲むが、慈朗はミルクを入れないと飲めない。マグカップを渡して再度慈朗の手元を覗き込んだ。データの整理はあらかた済んだようだった。
「めしにしよう。ちょっと手伝ってくれ」
「うん」
理が魚を焼いているあいだに、慈朗は食器の準備をした。未だに食事を作ることは苦手だが、材料をぶち込んで具材に火が通るまで煮て、あとは味噌なりだし醤油なりコンソメなりを放り込めば汁物ぐらいはできると分かってから、慈朗は汁物だけは作るようになった。食卓に和食が並ぶ。ハワイ帰りの慈朗のためだった。
時間が遅くてテレビはニュース番組を終えていた。見るものもないので向かい合わせに座って黙々と食事にありつく。数日前の夕飯に作っておいたスナップエンドウとベーコンとジャガイモの炒め物の残りも出したが、これを慈朗は気に入ったようで、器はあっという間に空になる。
食器を片付けて、ざっと部屋を掃除する。シーツの洗濯もする。そのあいだ、慈朗は再びパソコンをいじっていた。あらかた済んだところで手招きされる。「写真、見ようよ」と慈朗は言い、台所のテーブルまでパソコンを引っ張ってきた。
椅子に腰かけて眺める画面の中には、青みがかったシルバーのタキシードに揃いで身を包み、胸に花を挿して笑っている赤城と青沼の姿があった。
「ここが教会?」
「うん。教会で挙式して、そのあと近くのレストランに移ってパーティだった。このアロハ着てるの神父さん」
慈朗の説明を聞きながら画像を繰っていく。時系列になっているので教会の様子からレストランでのパーティまでが追えた。アロハシャツを着た神父は確かにロザリオを胸から提げており、その前にはやや緊張した面持ちの青沼と、いつも通りふんわりと笑っている赤城の姿があった。誓いのキスをして、教会を出て来たところで集まっていた人々に祝福されている。慈朗が言う通り通りがかりの人もいて、それはタンクトップを着ていたり、ビーチサンダルだったりで分かった。
ここに至るまで、ふたりの道のりは長かっただろうか、と考える。一度は青沼の前から姿を消した赤城を、青沼は探し回った。再会を果たしたのは確かローマで、青沼は大学を卒業して一年目だとか二年目だとか、そんなころだったと思う。あまり昔の話ではない。今回のハワイでのウェディングは、赤城の提案だったとは聞いた。赤城となじみの友人がハワイの出身で、いつか遊びに来れば案内するよと言われていたのを、ウェディングのタイミングで実現したらしい。
理にも挙式の案内が届いていたが、学校教師が長期休みでもないのにハワイには行けなかった。慈朗はカメラマンとして来てほしいという正式な依頼があったというので、祝儀は慈朗に預けて送り出した。ハネムーンにくっついていくのもどうかと理なら思ってしまうが、あの南国の島々を、挙式後に赤城のなじみの友人の案内で、赤城、青沼、慈朗という面子でまわったらしい。だから今回の慈朗の渡航は二週間という比較的長期にわたっていた。
赤城と青沼は始終幸福そうだった。ふたりでビーチに並んで座っているのを背後から撮った写真もあり、なんかこのふたりなら晴れたビーチで開放的な気分のままことに及べそうだと、余計なことも思った。このふたりは人目を気にしなかったから、日本にいて苦しかっただろう。堂々と表を歩ける社会も世界にはあるということだ。
自分はどうだろうな、と写真を見ながら考えた。慈朗とのことを親しい人には伝えてあるが、それは親だとか慈朗の家族だとか、そういうごく一部に限られる。自分から大手を振ってこいつが恋人です、というようなことはなかなか表明できない。こういう性分だから、赤城と青沼のように海外へ行って慈朗と暮らす選択肢も、考えていない。
できるだけ穏やかに、ぬるい今日と同じような明日を暮らしたい。自分からは発火したくない。けれどそんなのはひとりでいることをやめた日に、違う、と気付いた。慈朗を守るためにはやけどもするような燃える火口にも、時には手を突っ込まなければならない。
それぐらいは覚悟を決めた。けれど慈朗はどうだろうか。まだ充分若いのだから、手放すならいまのうちに、と考えないわけではない。――生涯の伴侶に選ばれた自分のことを信じがたい。ずっと報われない恋を続けたせいかもしれない。
←(11)
→(13)
プロフィール
HN:
粟津原栗子
性別:
非公開
自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。
****
2022*08*11-21
暑いですね。番外編短編、ちょこっと更新しています。
2021*12*04-2022*03*17
お久しぶりです。短編長編更新。
短編「さきごろのはる」
短編「月の椅子」
短編「みんな嬉しいお菓子の日」
長編「ファンタスティック・ブロウ」
短編「冬の日、林檎真っ赤に熟れて」
2021*08*16-08*19
甘いお菓子のある短編「最善最愛チョコレート」更新。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。
****
2022*08*11-21
暑いですね。番外編短編、ちょこっと更新しています。
2021*12*04-2022*03*17
お久しぶりです。短編長編更新。
短編「さきごろのはる」
短編「月の椅子」
短編「みんな嬉しいお菓子の日」
長編「ファンタスティック・ブロウ」
短編「冬の日、林檎真っ赤に熟れて」
2021*08*16-08*19
甘いお菓子のある短編「最善最愛チョコレート」更新。
カウンター
カレンダー
06 | 2025/07 | 08 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
フリーエリア
最新コメント
[03/18 粟津原栗子]
[03/16 粟津原栗子]
[01/27 粟津原栗子]
[01/01 粟津原栗子]
[09/15 粟津原栗子]
フリーエリア
ブログ内検索