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成人女性を対象とした自作小説を置いています。
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 理の足の間に身体をまるくして丁寧に性器を舐めていた慈朗だったが、理が「もう来い」と言うと下唇を舐めて、理の膝の上に乗りかかって来た。
 この瞬間はいつも「喰われる」と思う。慈朗が理を捕食しにかかっていて、理もそのことを歓迎している。
 理の腰に跨り、雄をすっかり腹に収めて、慈朗は目を瞑って快感を堪えていた。膝立ちになってなんとか腰を動かしている。自分だけがいいように動くリズムは理には少し物足りないが、目の前の痴態は充分興奮した。ん、ん、と慈朗の甘い声が鼓膜を舐める。
 少し動いて慈朗はあっけなく射精した。ふたりの腹のあいだを汚して、慈朗はくったりと理の上体に身体を預けて来た。
「早いな」と感想を漏らす。理はまだいっていない。
「……久しぶりだから……あっ、んぅ」
 恋人が甘い声で啼いたのは、理が慈朗の中からずるりと性器を抜いたからだ。
「……終わるの?」淋しいような響きで慈朗が尋ねる。
「久しぶりだから、ゆっくりやりたいだけ。……後ろ向け」
 指示されて、慈朗はのろのろと理に背中を向けた。理は慈朗の綺麗な背中を見るのが好きだ。肩甲骨を軽く食み、背後から慈朗の最奥にゆっくり挿入する。
 それから慈朗の腰を引かせて、背面座位の格好で慈朗を抱きしめた。前にまわした手で足をひらかせ、慈朗の性器に手をやる。そこは半立ちで震え、理の愛撫を待っていた。
「――あ、理」
「ん?」
 慈朗が身体を捩って後ろを向いた。キスが欲しいと口をあけてねだる。その物欲しげな唇にかぶりついた。その間にも理の手は慈朗の胸をまさぐったり膝を撫でたり性器を舐るように扱いたりと忙しい。キスをしながらどこもかしこも触ってやらないと気が済まないのは、理の性分だった。
 はじめは目を閉じていたキスも、薄目をあけてするようになった。目を逸らした方が負け、みたいに、いつの間にか闘争心みたいなものが芽生えている。子どもみたいな無邪気さで、ふたりは互いを齧る。口蓋をくすぐられて背筋がぞくぞくして、お返しに理は慈朗の舌の先を噛む。
 目を見あいながら唇を離す。それから慈朗をすっぽりと抱き込み、理は慈朗の肩口に額をつけて目を閉じた。慈朗が理の腕をぺちぺちと叩く。
「雨、やまないね」と慈朗がこぼした。梅雨前線にすっぽりと覆われ、停滞した雨雲がずっと雨を降らせている。空港から帰宅する道中ずっと雨降りで、行為をはじめてからはいっそう止む気配がない。理は雨音が好きだ。降られるのはかなわないのだが、音を聞いている分にはいい。いろんな雑音を消してくれる。
「雨の日って、犯罪率が上がるって聞いたことがある」言ったのは慈朗だった。
「逆の意見も聞いたことがあるけどな。雨の日は犯罪率が下がる」
「おれが読んだのはインターネットの記事だったんだけど、雨の日は太陽光で生成されるホルモンの分泌がないから、それが原因で苛々して、犯罪率が上がるんだって」
「まあ、薄暗いし気分も暗いし、犯罪に走りたくなる気持ちになるのかもな。多少後ろめたいことをしてもばれなさそうな雰囲気、とか」
 ふと、いましているようなことがそうだろうか、と思った。年の離れた元・教え子を抱いている。
「……おれみたいなやつか」
「なんか後ろめたいことしてるのか? 理」
「んー、まあ後ろめたいって言ったらさ」腰を軽く揺する。「これだろ」
「……後ろめたい? おれとだと」
「セックス自体がそういうもんだよな。晴れたビーチで開放的な気分で堂々とってわけにはなかなかいかない社会なわけだし。それが男女だろうと、同性だろうと変わらん」
「……でもおれ、理とすんの、好きだよ」
「それは嬉しいね」
「本気にしてない?」
「してるって。おまえはいつも百パーセントでものごとを喋るなって、……感心してんだ」
 そう言うと、慈朗は少し膨れて、むくれた。子ども扱いしているわけではないのだが、恋人はそう捉えるときがある。むしろこちらとしては忘れていたことにはっと気付かされるような気持ちになるのに、それはどうしても伝わらない。これが歳の差というものなのかもしれない。
 慈朗が理とのセックスを好きなら、理だってどうしたって好かずにはいられないのに、そのことが慈朗にはなかなか伝わらない。その、ぴったりとは添えない感覚。どうやっても隔たる溝を感じるたび、自分でない誰かを愛しているのだ、という実感が沸く。
 慈朗の性器と理を受け入れてくれている入り口とのあいだをたわむれに撫でると、慈朗の身体が途端、びくりと跳ねた。
「あっ、そこ……っ」
「ここが?」意地悪いな、と思いつつも尋ねる。
「そこ、……だめだ、理」
「でもここを触ると、中がすごい」
「……言うなってば……」
 理の手を払い、慈朗はまたキスをねだる。キスをするのに首を捩らないといけないから、慈朗はこの体位をいつも嫌がる。キスの好きな慈朗らしい理屈だ。理は背中や髪の生え際に口をつけて吸いたいと思うから、背中からの方がちょうどいい。
 焦れた慈朗が理の腕から逃れ、収めていたものを引き抜いた。向かい合わせに身体を対面させて、慈朗からキスをされる。慈朗は理の性器を何度か扱き、自身の腹に再び収めた。根元までびっちりと銜え、額に浮いた汗を理は舐める。
「……よく食うな」
「え?」
「いや、なんでもない」
「理、疲れてる? ……途中で運転代わればよかったね、おれ」
「疲れてんのはおまえの方だろ。ホノルルからエコノミーで長距離飛んでさ。おれはさほど疲れてない。教師って職業は体力勝負だからな。――いつも通りだ」
「でもなんか、やっぱ、……長いから、」
 快楽の淵ぎりぎりまで詰めておいて、放出には届かない恋人のことを慈朗は心配した。もともと遅漏寄りなので理のするセックスは大概長いのかもしれない。しつこく身体に触れたがる癖もある。慈朗は理とのセックスが好きだと言うが、受け入れている方も大変だろうとは思う。思うが、軽いスポーツでもたしなむかのように、さっと済ませてシャワーを浴びて眠る、というようなことが、理には出来ない。
 もったいないんだ、と言うと、慈朗は眩しそうに目を細めた。
「気持ちがいいことは長く続いてほしい、おれはな。欲深いんだろ、人より、多分」
「おれもそうだよ……」
「まあ、さすがに今日は長いな」
 慈朗の腰を抱え、ベッドに押し倒した。慈朗の上になって体勢が変わったことで、性器の当たりも変わり、慈朗は悲鳴のようなせつない声を上げた。
「動くぞ」
「理、」
 慈朗に呼ばれて顔を覗き込む。慈朗は手のひらで理の頬を包んだ。
「全然、後ろめたいことなんかないよ」
「……」
「おれ、理とだったら晴れたビーチでもいいよ」
「それおれは、ごめんだな」
 ぐちゅぐちゅと音をさせて動きはじめる。
「おまえとは、こういう日に雨の音聞きながらぐらいが、いちばんいい」
 と言ったが、慈朗の耳にはもう入っていないようだった。慈朗は理の動きに合わせて足を揺らめかせ、内腿をふるわせる。性器に手をやると理が触ってなくても自ら扱いていた。
 そこは慈朗自身の好きにさせて、理は腰を動かす。これでもういちばん幸福なのだからいいと思う。後ろめたいことを許される日に、最愛を抱く。


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プロフィール
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粟津原栗子
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自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

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