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成人女性を対象とした自作小説を置いています。
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 日瀧が案内した食堂は、古く小さく、手書きのメニューが壁一面に貼られている、それでもありふれた食堂だった。こんな時間でもわりと人がいて、スーツを着た人がひとりで中瓶のビールをあけていたりする。腹が減ったという日瀧は肉野菜炒めの定食を頼んだ。遠海は迷った末、けんちん汁を単品で頼む。
 待っているあいだ日瀧は「ここは親父の行きつけで」と説明した。
「おれの親父、トラック運転手やってんです。こういう安くてうまい食堂いっぱい知ってて。ここはちいさいころから家族で来てました。仕事以外で来れば親父は酒が飲めるし、おれらガキはめしが食えるし」
「なるほどね。都合よさそうだ」
「ここは親父の趣味ですけど、姉貴の趣味は生音が聴ける店です。カントリーミュージックのライブやるパブとか喫茶店とか。ライブハウスもいいって言って一時期は通ってましたけど、どっちかって言えば音と飯がいいって流れになって」
 オーダーはあっという間に運ばれてきた。割り箸をぱきっと割って、日瀧は定食に手を付ける。だが日頃の無愛想とは変わって話はやめなかった。
「姉貴はいま大学で保育士になる勉強してんですよ。リトミックに興味があって、そんなにピアノが弾けるわけじゃないけど音楽自体は好きなんすよね。おれもその影響で散々あちこち連れまわされました。その中にジャズバーがあった。そこはおれも気に入って、酒飲めないし、本当は校則でそういうとこ行っちゃいけなかったんですけど、内緒でよく行ってました。バイト終わったその足でこっそり飯だけ食いに行くとかさ」
「そう……」
「去年の秋に台風被害のせいで閉店しちゃってすげー残念でした。いつか酒が飲めるようになったらそこで飲みたいなって思ってたんで」
「……」
「まわりくどい言い方はやめますね。鴇田さん、そこでピアノ弾いてましたね」
 そう言われ、遠海は瞬間的に目を閉じてゆっくり息を吐いた。
「背中まるめて、すげーかっこよかった。ピアノのこと本当に好きなんだなって伝わるっていうか。ピアノがいちばんよく鳴る弾き方してるんですよね。このピアノのこと全部まるわかりみたいな。恋人みたいだなって思ってました。そのピアノに対する親密さが尋常じゃなかった」
「……」
「ああ、じゃあまわりくどい言い方続けます。そのピアニストのピアノがおれはめちゃくちゃ好きでした。それでそのピアニストはよく、演奏が終わるとカウンターでひとりで酒を飲んでいて。それがもうおれにはものすごく憧れで。大人の男って痺れるなって」
「そんなに格好いいもんじゃないと思うよ」
「おれは酒が飲めないから、もう全部の憧れがあの店に詰まってたんです。……それでね、そのうちにそのピアニストはひとりで酒を飲まなくなりました。やっぱり格好いいジャケット着たシュッとしてる人とカウンターで飲むようになった。親しいみたいで、距離が近くて。セッションする仲間がいてもいつもひとりで飲んでるイメージだったんで、ピアノ以外に心をひらく人がいるんだなって思って見ていて」
 遠海は黙って水を飲んだ。
「いつだったかな。店が閉店するちょっと前ぐらいだったと思うんですけど、いつものカウンターでピアニストが隣にいる人の顔に手を当ててた。顔かな? 目元だったと思う」
「……」
「到底割り込めない雰囲気で、でも目が離せなかったんです。誰かの顔なんて家族でもなかなか触れないですよ。これはあとからのおれの考察ですけど、そのピアニストって多分あんまり触れることが得意じゃない人なんですよね。狭いトラックの座席の横に乗ってるからすげー分かる。べたべた触る人なんかめちゃくちゃ苦手だと思うんです。西川さんとか」
「……」
「だからあのピアニストがああいうことをしていた人ってのは、ものすごく近いところを許した人だったんだろうなって思ったんです。……まあもうその店ないですし、そのふたりをその後で見てないから、わかんないですけど」
「……そう」
「昨夜の話聞いてそれを思い出してました。おれが鴇田さんに今日したかったのは、そういう話です」
 冷めちゃいましたね、と日瀧は鴇田の椀を指した。頷いてようやく口にする。塩加減が染みて美味しいと思った。久々に味覚を使っている気がした。
 お喋りをやめて黙々と食べた。食べ終えてサービスの緑茶で息をつくと、「美味かったでしょ」と向かいの男が微笑んだ。
「ちょっとしょっぱめの味付けがまた古い食堂らしくて」
「うん。美味しかった。ありがとう」
「よかった。またよければ来てください」
「……本当は西川にもお礼を言わないといけないんだ」
 そう言うと、日瀧は「なんで?」と真顔で訊ね返した。
「おにぎりとか、まんじゅうとか、色々と気を遣ってもらってる。確かに距離の詰め方は苦手なんだけどね。……それに実際あのおにぎりもまんじゅうも、美味しかったんだ」
「そうすか。どっちでもいいと思いますけどね。お礼なんかまともに言ったら嬉しくなって調子乗って余計になつかれちゃいますよ」
「きみらは本当に仲がいいよね。西川って大卒入社だから歳も離れるだろうに」
「あー、そうすね。四コ違います。でも多分、精神年齢が一緒なんですよ。話しやすいです」
 なるほど、と頷いていると、日瀧は「西川さんの髪」と言った。
「長いの、理由あんですよ」
「……僕が訊いてもいい理由なのかな」
「いまの鴇田さんは聞いた方がいいと思います。――あいつが高校の時、好きな先生がいたらしいんです。その先生は風紀の顧問だったそうです。当時も西川さんは髪にこだわりを持って通ってたらしいんですけど、まー風紀を守れ、その髪を切れって、言われまくってたんですって」
「……それに逆らって髪を伸ばしてる、ってこと?」
「違います。その先生、でもいい先生だったんですよね。髪伸ばしてることを校則上では注意するけど、おまえみたいな気骨は好きだからって言ったらしいんです」
「……」
「それであいつはこのスタイルを貫き通すことが信条みたいになったんですよね。先生が好きだって言ってくれたスタイルを続けたいんです。大学はデザイン系って言ってましたけど、こんな会社に就職したのは面接のときの社長に偏見がなかったからなんですって。就活ってフツーは身だしなみめちゃくちゃ気にして髪切りますけど、そうしないで面接に行ってもここの社長は認めてくれたって。うちにはそういう規則もないしなって笑ってたから嬉しかったんだって言ってました」
 あの社長なら言いそうだな、と思った。遠海を公務員から引っ張って来た時もそうだった。豪快でおおざっぱ、けれどそういう面でいろんな人から慕われている。
「あのピアニストの人もさ、また弾いてほしいなって思うんです」
「……ピアノを?」
「ピアノを。あのスタイルで。あのピアニストの隣にいた人もそういうところが好きだったと思うし、聴きたいと思ったからきっと傍にいたと思うんですよね。信念のある人は格好いいし、どうしたって人を惹き付けますよ」
 最後の茶をすすって、割り勘で店を出た。春の明るい日差しがまだほんのりと残っている時間だった。
「日瀧にも信念がありそうだね」と別れ際、訊ねた。日瀧は笑う。
「ないっす、そんな格好いいものは。でも格好いい大人になりたいとは思ってますよ。それで行きつけの格好いい店で音楽と酒を楽しむのが夢です。楽しむ? たしなむ、って言うんですかね」
「そうか。楽しみだね」
「それ、あの店のあのピアノじゃないと叶わないんで。頼みますね」
 じゃあ、と言って日瀧は駅の改札へと消えていった。バネを内包した軽やかな背中は十代のもので、そのしなやかさをとてつもなく眩しく感じた。


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西川くんのこと







拍手[9回]

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「でもその人、結婚してて」
「旦那さんいる人なんですか? うわー辛い。辛いけどわかりますよー、僕は。言っちゃいましょうよ、この際」
「なにを?」
「気持ちですよ、鴇田さんの気持ち! 伝えたらすっきりするかもしんないじゃないですかー」
「伝えたよ」
「え?」
 今度は三人揃って同じ反応をした。
「伝えたけど全然すっきりしてない」
 遠海は耐え切れなくなり、顔を伏せた。語尾が震える。
「僕は、伝わってないのかなって思って、いっぱい言ってしまった。ことあるごとに言ったよ。好きで辛いって。でもその人は、頷いたり笑ったりするだけで、絶対に僕を好きだとは言わなかった」
「……」
「『情』はあると言われたけれど、僕にはそれの意味するところがよく分からない。愛情だと言われたら嬉しかったのかな。……僕のことは眼中になくて、愛情を持って大事にしたい人がいたんだよ……それが、いいなと思ってた」
「いい?」
「大事にしてもらってる人のことが、羨ましかった」
 思っていることを口にして、そうだったのかと不思議な気持ちになった。こんなことを考えていたんだな、という発見。いまだに思っている、という発見。感情を言語にすることの意味をひとつ理解した気になった。
 田代も西川も日瀧も三者三様に黙り込んでいた。酒は一滴も飲んでいないのに場の雰囲気に流されて喋り過ぎだ。トイレに立とうとして、最初に口をひらいたのは西川だった。目も開けられないほど酔って日瀧に寄りかかっているのに、眉根を寄せて遠海の台詞を考えている。
「『情』があって、頷いたり笑ったりしてくれたってことは、鴇田さんのこと受け止めたってことだと思いますよ」
「……」
「受け止めるって、すごくエネルギーいることだと思うんですよ。断るとか受け流すこともできたはずでしょう? そうしなくて、鴇田さんになんべんも好きだって言わせて、私も愛してるわよーなんての冗談でも言わなくて、『情』だと答えたんですから。その人は鴇田さんのこと真剣に考えてたんじゃないですかね。好きだって気持ちを返せなくても」
「……そうかな、」
 三倉の困った笑い顔が浮かぶ。
「旦那さんいるんですから、私も好きよだなんて言えないですよ。お世辞じゃ言えるかもしんないですけど、それも言わなかったってことは、鴇田さんのことがその人なりの価値観で『大切』だったんです。旦那さん裏切らないで、でも鴇田さんのこともちゃんと受け止めようって、してたんじゃないですかね。だから頷いてくれたり、笑ってくれたり、したんじゃないですかね」
「そうだなあ」
 西川の言葉を引き継いだのは、田代だった。
「鴇田にとっちゃ『情』なんて言葉で濁されて相手の態度は煮えきらなかったかもしれないが、結婚してる人ならそれが限度だよ。むしろうかうかと鴇田になびかなかったんだから、誠実だったんじゃないか? 鴇田のこと、ちゃんと考えてたんだろ。『情』だぞ、『情』。なんとも思ってなけりゃ湧きもしないぞ」
「でも僕は……情よりも愛情が欲しかったと思ってしまうんです」
「愛情も情だぞ。それにそりゃ好きになったんだから当然だろう。相手の立場で好き嫌いの判断するわけじゃないからな。好きになってしまった人にパートナーがいようがいまいが、その人を好きになるのは鴇田の自由だ。叶わないのが辛いところだけどな」
「……」
「さっき西川も言った通り、いい人好きになったんだ。だからまあ、飯は食えよ。鴇田がちゃんと食って寝て働くのが、その人も嬉しいんじゃないかな」
「情ですもんねえ」
「そーそ。思いやりだし、慕う気持ちだし、心が動くってことだよな。だったら鴇田に対しては、無表情でも仕事ぶりはいいいつものアレがいいって思うんじゃないかな」
 田代がそう結ぶ。幹事が「そろそろいったんおひらきにしますんでー」と叫んだのが同時だった。


 田代が異動したことで遠海にもより事務的な作業がまわって来るようになった。ただ安全と衛生に気を付けてごみだけ回収していればよかった作業に、次第に責任が乗るようになってきた。年齢を考えれば妥当なコースなのかもしれない。でも自分にはその先がない。家族を持つ予定がないのだから、守りたい人も、養っていく子も、この先にはないだろう。
 ため息をつきつつパソコンに向かっていると事務室に日瀧が入って来た。きょろきょろとなにかを探している。「どうした?」と声をかける。
 日瀧は振り向き、「救急箱ってありますか?」と訊ねた。
「あるよ。怪我?」
「はい。たいしたことないんですけど、さっき収集したごみの中にガラスの破片が混ざってて、ごみ袋から飛び出してたので引っ掻いちゃって」
「ああ、そういうのよくあるんだよね。救急箱はここ。誰が見ても分かるように今度事務の鈴木さんにテプラ貼っといてもらうよ」
 棚から救急箱を取り出し、日瀧に渡す。日瀧の傷を見せてもらったがてのひらを掻いて血が滲んでいるだけで、深さもなく、破片が入っているわけでもない。本人の言う通りたいしたことはなさそうだった。
「消毒液もばんそうこうもあるはず」
「あります。ありがとうございます」
 またパソコンに向かい、かたかたとキーボードを叩く。いま打ち込んでいるのは来月の勤務表だ。希望休を聞きつつ要員を考え配置する。田代から引き継いだ仕事のうちのひとつだった。
「――昨日、帰りは大丈夫でしたか?」と日瀧に訊かれた。
「え?」
「泣きそうな顔して電車乗ってったから。本当は見送りたかったんですけど、西川さんがぐでぐでで」
「ああ」
 昨夜の別れ際を思い出した。一次会で帰宅したのだが、二次会に向かうという田代に「今度ダンも誘って飲みにでも行こうか」と言われ、他意はないと分かっていても耐えられないと思ったのだ。会いたい気持ちと会いたくない気持ちがまたまぜこぜになって、田代には固辞した。
「大丈夫だよ。そっちこそ西川は大丈夫だった?」
「いや、大変でした。やつのアパートまで送ったんですよ。そのまま寝ちまえばいいのに、こんな焼肉の煙でいぶされたまま寝るなんて髪に悪いとかわめいて、どうしても風呂入るって言って。でも給湯のボタンさえ押せないんすよ。挙句髪洗えだのトリートしろだの。ブローが下手だって文句まで言われて散々す。二度と送ったりなんかしません」
「それは大変だ。西川は髪にこだわりがあるんだね。いつもきれいにまとめてるもんな」
 仮で仕上がった勤務表に保存をかけ、出力する。要員が足りているか、希望休を取れているかとマーカーを引きながらチェックしていると、日瀧は急に「これから時間ありますか?」と訊いてきた。
「え?」
「めし食いに行きません? その仕事終わったら」
「あ、もう終わるけど、」時間を確認する。午後三時半をまわったところだった。「これから飯行ったんじゃ店やってなくない?」
「こんな時間でもやってるいいめし屋知ってんすよ。食堂なんすけどね。単品でも頼めますから、ちょっとつまむだけでもよくて酒も飲めます」
「ああ、……いいよ」
「じゃあおれシャワー浴びて着替えて休憩室で待ってます。漫画読んでますんで、急がなくていいすから」
「分かった」
 救急箱を棚に戻し、日瀧は事務室を出て行った。後姿を見送ってもう少しだけ勤務表を直す。



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拍手[7回]

「いい人、いないのか」と野菜をぺたぺたとひっくり返しながら田代は訊く。もう焼くものもあまりなく、腹もいいので、手持ち無沙汰にそうしているだけだと分かる。
「……三倉さん、お元気ですか?」
「お? おお、ダンか。知らねえなあ。最近全然連絡取ってない。鴇田の方が仲良くなってた雰囲気だったけど、おまえもか」
「記事はよく見るんですけどね」
「あー、そう? 集積所の方ってあおばタイムス取ってないから見てねーわ。まあ、元気なんじゃない? 新城といつまでも仲良くって感じでしょ、あそこは」
「アラキ?」
「あー、ダンの嫁さんの旧姓」
「……ご存知なんでしたっけ、そこ」
「あいつらとは大学のときから一緒だからな。あそこは長いよ。確か大学四年で付き合いはじめてるから、えーと、十四年? 十五年?」
「そうですか」十五年なら、出会って一年も経たない遠海が太刀打ちできる仲ではない。……考えてばかみたいだと思う。比べようがないのに比べている辺りが。
「ひとつの仲を保って行くのは難しいよな。会社でさえ毎年顔ぶれが変わるのに、夫婦は離婚か死別でもしないと変わらないもんなあ」
「……」
 自分で話題を振っておいて大いに落ち込む話になった。黙り込んでいると隣から「その新しい顔ぶれでーす」と声が割り込む。「烏龍茶のおかわりください、ふたつ」の別の声も続く。いつの間に近くのテーブルにいたのか、西川と日瀧が揃ってやって来た。
「センセーですよね。新人研修のときお世話になった西川アンド日瀧です」と西川がなつこく田代を呼んだ。
「覚えてるよ。なに、鴇田と同じ班の配属だっけ?」
「そうでーす。西川でーす。こっちが日瀧でーす」
「なんべんも言うなよ。分かってるわ」日瀧が突っ込む。西川はだいぶ酔っているようだった。
 烏龍茶が運ばれてくる。日瀧はひとつを自分に取り、ひとつを遠海に寄越した。遠海のグラスが終わりかけているのを見て頼んでくれたのだ。高卒採用とは思えない気遣いだと思った。
「そうか、じゃあありがたい新人っておまえらのことなんだな」と田代が笑った。ほっと息をついたのが分かった。
「そうでーす。ありがたいでーす」
「西川さん、あんた飲み過ぎだから」
「それよりもー、なんで僕を早く呼んでくれなかったんですか」
 西川が喚く。隣にいるとべたべたと触られそうな距離感で、酔っていると分かっているとはいえ嫌悪感がじわりと背中を這う。烏龍茶のグラスを持って田代の側に避難した。
「あーもう、鴇田さん行かないでっ」
「あんたが酔ってるから嫌がられてるんだよ。ほらもー、これ飲めよ」
 渡された烏龍茶をぐびぐび飲み、くたくたの身体で「だあって鴇田さんはさー」と西川はぼやく。
「なんか遠いんだよー。僕はねえ、淋しいです。仲良くなりたいんです」
「まあそれは鴇田のデフォルトだからしばらくは見守ってやって」と言ってから田代は遠海を見た。「違うか。おまえが見守る側だよな。新人に心配させてなにやってんだよ、先輩」
「特に心配はさせてないつもりですけど」
「ごはんいっつもゼリーで十秒チャージだし」
「あ、まだおまえそんなことしてんの? ばかだねー、そりゃ痩せるよ。仕事もたねぇだろうが」
「昼飯の後は大体事務作業しか残ってないので問題ないですよ。朝は食ってますし」
「夜は?」
「……適当に、」
「あほたれ。カロリーの需要と供給が合ってねえよ。社会の仕組みが崩れるぞ」
「消費と摂取じゃないんですか。なんですか、社会って」
「鴇田遠海って言う社会だよ」
「そうなんですよー。いいこと言いますよねー。そうなんですよねー」
 西川はもはや日瀧に身体を預けきり、それでも眉間にシワを寄せて遠海を心配する。
「さっきいい人うんぬんって聞こえて来たんで来ちゃいました。いい人いないんですか? このまんまじゃ鴇田さん、死にますよ」
「いい人と僕が死ぬことが結びつかないよ」
「だからー、鴇田さんの世話焼いてくれるいい人いないんですかーって。僕らが心配しててもいいんですけどー。でも僕らは所詮他人じゃないですかー。ただの後輩じゃないですかー」
「……」
「僕らは淋しいですよ。鴇田さんは喋らないけど仕事出来るかっけー人だから、尊敬の念を込めて、言うんです」
 好かれたな、と田代は笑いながらビールを口にする。なんとなく気まずく、西川の顔を見られない。決して誰にも告げるつもりのなかった胸の痞えを、晒してしまえばどうなる、という気になった。気まずさのまま烏龍茶を口にしてようやく顔を上げると、目が合ったのは西川ではなく、西川を支えている日瀧だった。日瀧の静かな眼差しが遠海をきちんと捉える。無愛想だが決して人が悪いわけではなく、むしろ全てを許せるようなおおらかさがあった。
 ――あなたのピアノ、好きですよ。
 頭の中できらっとフレーズがよみがえる。
 ――穏やかな春の海みたいだと思う。遠浅にどこまでもやわらかく透きとおっている、ぬるい温度の海。たまに激しいけれど、それも海のおおらかさなんだと思う。
 いつかそう言ってくれた男の台詞が鮮やかに脳内で再生された。忘れてしまえない。どうやってもなかったことにはならない。
 触りますよと言って触れられた時、あんなに嫌じゃなかったてのひらの感触のこととか。緑色の映画とか。触れていた膝頭とか。散々飲み明かした夜。眩しいと言って呻いた、涙の湿度でさえ。
 過ぎたことがこんなにも鮮やかに遠海の中に堆積している。
「――好きな人は、いるよ」と答えていた。目が合ったままの日瀧はそのままの表情で、西川が「ほらー」と言い、田代は「えっ?」と驚いていた。



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拍手[8回]

 その日の作業は三人一組で行った。大型の収集車に運転手ひとりと、遠海と日瀧で乗り込んだ。運転手の男は作業中の事故の後遺症で片足がやや不自由である。ゆえに運転手の業務しか行わないため、収集車から降りてごみを回収し積み込んでまた乗り込む作業は遠海と日瀧のふたりに限られた。
 汗だくになって黙々とごみを積み込む。積載量がいっぱいになったのでほぼ予定していた通りに集積所へ向かった。その途中、住宅地の中で寄り添って歩く男女を見かけた。春の日差しの中を小柄な女性と標準的な体格の男性が歩いている。女性のショートカットと白いシャツの後姿、男性の身体にぴったりと添ったシャツの後姿で、ぎくりと身体がこわばった。三倉と蒼生子だと瞬間的に思った。
 男性の方はベビーカーを押して歩いている。ゆっくりと歩く夫妻に、そうか、と心臓が冷え込む。不妊治療中だと言っていた。いつ子どもが出来ても不思議はなかった。それが叶ったのだと思い、トラックに揺られているだけの視界が砂嵐かのように霞んだ。
「鴇田さん?」
 遠海の身体のこわばりを、隣に座っていた日瀧が察した。声をかけられたが、遠海は夫婦から目を離せない。嫌だ、と思った。三倉がはるか遠くへ行く。そうあってほしいと願っていながらその準備はちっとも出来てはいなかった。
 車は徐行しながら夫婦の横を抜ける。ハンドル操作を誤って夫婦に突っ込んだらどうなるだろう、とばかげた想像がよぎった。車が抜ける際、サイドミラーで後方を確認した。きちんと確認すれば女性は蒼生子ではなく、男性も三倉ではなかった。ベビーカーに乗る子どももだいぶ大きい。人違いであったことにほっとしつつ、こわばった身体から力をうまく抜くことが出来ない。
 それでも通常通りに仕事をこなし、昼すぎに会社へ戻った。作業は終えていたので車を清掃し、今日の業務を報告して休憩に入る。あとは事務処理が残っているだけだ。胸ポケットから社員証を取り出し、中に収めてある紙片の内容を頭の中で思い浮かべた。そうか、そうだな、とそのときようやく納得した。三倉には子どもが出来たのかもしれない。夫婦念願の。
 昨年の十一月に掲載された三倉のコラムを難解だと思いながらもずっと持ち歩いていた。このコラムの意図するところが見えたとき、三倉の思いを知れるかもしれないと期待したからだ。なんだと思う。少年の未来とか、生命のありかとか、直接的なことが書かれているのに分からなかった。自分にはよっぽど遠い話であるからだ。三倉には、子どもが出来た。
 そう思ってしまったら、もうそうとしか思えなくなった。確証はなかったし、確かめようもないが、遠海の中で確実になにかが切れた。ぶちっと音を立てて身体から剥がされた気がする。その隙間を狙って重たいなにかが流れ込む。
 休憩で口にしようと思っていたゼリー飲料すら飲み込める気がしない。身体の内側でアラートが響く。手足が重たく痺れている感覚があった。疲れた、と思う。
 不意に目の前にラップで包まれた丸いものが差し出された。蒸したまんじゅう、と認識して顔を上げる。別の箇所をまわっていた西川も帰社して日瀧と合流し、揃って遠海の前に座ってこちらを窺っていた。
「疲れたときって甘いものですよね」
 西川はそう言い、日瀧は「なんでまんじゅうなんか持ってんだ、ばあちゃんか」と西川に突っ込む。
「明日の歓送迎会、無理に出席しなくていいと思いますよ」
「……」
「いつか僕とヒタキくんを個人的に誘ってください」
 普段はお喋りにまとわりつくだけの新人は、そう言ってすんなりといなくなった。遠海は額に手を当て、しっかりしろと言い聞かす。
 あのときから時間も経った。けれどいまだに、こんなにも動揺している。
 あの人を好きなまま、遠海はなにも変わらない。周囲だけが星の速さで遠海を置いて過ぎ去っていく。




「なんだ、元気そうじゃん」
 焼肉屋の二階、大人数の予約に対応するための座敷席で、向かい合った田代はそう言った。
「さっき耳にしたのはあんまり元気ないみたいですよって噂だったんだけど」
「どこの噂ですか?」
「事務のおスズ姉さん。でも噂の出元は新人らしいな」
 翌日の歓送迎会には、意地でも来た。ひと晩寝て過ごしたらすこし軽くなっていた気もしたし、それは多分まんじゅうが効いたのだと思うことにした。ありがたい新人が入ったなと思っていると、「おまえを気にかけてくれるような新人でありがたいよな」と同じことを田代も漏らした。思わず苦笑する。
 先ほど社長の挨拶があり、幹事の仕切りで乾杯を済ませている。場は一気に騒がしくなり、肉を焼く音があちこちからじゅうじゅうと響いている。目の前の田代もタンから焼き始めた。田代は仕切りたがりで、こういう宴会の際は自らトングを握って人の皿を支配する。
「でもまた痩せたか? 一時期よりはまともな気もするけど」
「田代さんこそ痩せましたね。ストレスですか?」
「いや絞ってんの。さすがにこの腹がこのまま成長し続けたらおれ操縦席座れねーわって気づいた。近所の公園走ってんだわ。あと食事制限」
「じゃあ焼肉もビールもやめた方がいいですよね」
「今夜は特別。こういう日もあるだろ。久々の鴇田だしなー」
 そう言って田代は笑った。ですね、と遠海は烏龍茶を口にしながら同意する。
 この四月の異動で田代は遠海たちと職場を別にした。過去の経験を生かし、現在は指導員として大型機械の研修に参加する傍ら、自らも操縦士として集積所に勤務している。これまでは遠海ら収集作業員らの直属の上司として勤務していたわけだが、本人いわく「もっとヒリヒリする現場に出たくなった」とかで、配置換えの希望が叶った形である。
 田代の手で鮮やかに焼かれたタンが次々と皿に放り込まれる。同じテーブルになった同僚は田代の仕事ぶりに相槌を打ちながらも肉に噛り付いている。なかなか噛み切れない肉を口の中で咀嚼し続けながら、食べる気がない、そもそも噛もうという気がない自分に気づく。怖くて体重計には乗っていないが、そのうち健康診断があるだろうから、判明するに違いない。三倉と会ってから自分はどこまで消耗し続けるつもりなのか。
 田代が「次カルビ行くぞー」と網の交換を店員に頼む。遠海の皿には冷えかかったタンが残っていた。「早く食えよ」とトングで指される。
「おお、すごいなこのカルビ。骨付きだ」
「ここの店のはうまいんすよ。いまはなくなっちゃったんですけど、昔はレバ刺しも食えてそれが最高で」
「あー、生レバーな。いま食えなくなっちゃったもんなあ。生で内臓食ってるのっていかにも肉食のケモノっぽくて妙な背徳感あるよな」
「で、女とかはきゃーきゃー言うんすよ。こんなのグロくて食べれなーいって。でも結局食うんすよね」
「女の方が内臓には慣れてんじゃない? だって子ども産むじゃん。産んで終わりじゃないんだよな。後産とかさ、おれそんなのあんの? って嫁さんにびびった」
「胎盤出すんすよね。あれも焼いたら食えるんすかね?」
「食えないことないんだろうけど、……いまこれ以上の話はやめるか」
 音を立てて焼ける肉を見て、思うところがあったらしい。田代も同僚も既婚で子どもがいる。遠海には到底共感しがたい話だ。ついていくことを諦め、飲み込めていないタンを烏龍茶でようやく流す。
「鴇田はいー人いねーの?」と同僚は酔って赤らんだ顔をこちらに向けた。
「やめとけ。人には人のペースがあんだから。鴇田がこういう話に乗ってきた試しないだろ」
 田代がそっとかばってくれたが、同僚は「若いよなあ、いいよなあ」としきりに絡む。
「いまいくつ?」
「再来月で二十九です。そんなに若くもないですよ」
「二十九かー。俺結婚した歳だ。いねーの、鴇田」
「なにがですか」分かっていてしらばっくれる。
「彼女か、結婚したい女か、やらせてくれる女か、やりたい女でも」
「鴇田はおれの姪っ子と純愛を貫くことになってるんだよ。肉焼けたぞ」
 ほいほいと肉が配分される。同僚はビールをぐびぐびと飲み、肉にかじりつき、嫁と子どもの自慢と職場の愚痴を散々田代と語りあい、別のテーブルへと移って行った。よく喋るなと思って黙っていたが、こういう場を必ずしも苦痛に思うタイプでもない。伊丹の店に行けばこんなのはよくある話だし、もっとえげつない駆け引きを繰り広げるカップルだってたくさん見ている。BGMに徹することは得意なので特に困りはしなかった。
 もっとも場を気にする田代は困っていたようで、「あいつもストレス溜まってるな」と同僚のフォローをした。



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拍手[6回]


 ここのところは晴天続きだが、この先も好天が続くとは言えないでしょうと気象予報士は喋っていた。週間予報では月末の連休あたりが怪しいらしい。「春の嵐となるかもしれません」と中年の予報士は語った。また嵐か。荒れてばっかりだなと思いながらぼんやりとキーボードを鳴らす。テレビを点けているので電子ピアノから伸びるイヤフォンは片耳にしか差し込んでいない。ただ指を動かす程度に音を鳴らす。ちっとも面白くなくて、指は動かなくなった。
 子どものころ、はじめて伊丹の家でピアノを弾かせてもらった日のことを思い出す。伊丹の家には何度も通っていたが、弟が生まれて以降の母親は幼い弟の手を引くことに一生懸命で、遠海の手は引いてくれなかった。淋しかったわけでもなく、遠海もひとりで充分歩ける年齢だった。その先、そこを曲がるんだよ、と母親と弟が後ろからついて指示を出してくれたが、道の大体は覚えていた。
 当時の伊丹は楽器店に勤めていた。母親とは音楽大学時代の先輩と後輩という間柄で、音大のピアノ科卒業という出身ながら家にピアノを置けなかった母親は、伊丹を頼って時折ピアノを弾きに行っていた。子どもがいようがいまいが構わず、自分の楽しみのために弾いた。伊丹の家には立派なグランドピアノがあった。それが後に自身がひらくジャズバーに置かれることになるわけだが、当時は「あまり弾いてくれる人もいないから」と母を含め遠海たちを歓迎してくれた。
 ーー今日はこの子に触らせようと思うんです。
 と母は言い、伊丹はにこりと笑って遠海を傍に呼んだ。
 椅子を調節してもらって、ピアノの前に座る。どうしていいのか分からなかったが、隣の伊丹が指を一本すっと出して、単音を鳴らした。それがはじまりだったと思う。白と黒の板を押したら音が鳴る。その音はとても魅力的で、いつまでも聴いていたいと思った。すぐに夢中になり、めちゃくちゃに音を試した。ここは高い音がする。こっちは低い。この黒いところはあいだの音。こことここの板を同時に押すと気持ちがいい。そうやって八十八鍵をひとつひとつ確かめていると、あっという間に日は暮れて、だがピアノに触れられなかったはずの母親も伊丹もなぜか嬉しそうにしていた。
 ――とおみもそれ好き?
 と母親はにこにこして訊ねた。普段は家事と育児とパートとで疲れ切っている印象の母親だったので、そのやわらかさは、慣れなくてドキドキした。
 ――うん。すき。
 ――じゃああのおじちゃんにご挨拶して。ここでピアノを弾かせてくださいって言うんだよ。
 おじちゃんかあ、と伊丹は苦笑していた。当時の伊丹は三十代前半だったと思う。まださほど言われ馴れない呼び名だったのだろう。
 ――ここでぴあのをひかせてください。
 ピアノ、がなにを指すのかも理解出来ていなかった。ただ絵本やアニメで観る鯨みたいに真っ黒で大きなあれを、そう言うんだろうと思って言った。あれをもっと鳴らしてみたいと思った。
 ――大歓迎だ。改めてきみの名前を聞かせてくれる?
 ――ときたとおみです。
 ――いい名前をつけてもらったね。海の曲を弾くから、聴いてくれる?
 そう言って伊丹は遠海が座っていた椅子にさっと腰かけ、魔法のように鍵盤を掻いた。次々とまろび出る音が本当にこの鯨から鳴っているのが不思議でならなくて、遠海は伊丹の手元を一心に眺めながら音に聴き入っていた。
 五分少ししかない曲で、終わるのがとても惜しかった。母親は久々に先輩のピアノを聴いた、と拍手をし、弟もまねして手を叩いていた。
 ――ラヴェルの、海原の小舟っていう曲だよ。
 ――ぼくもできる?
 ――うんと練習しにおいで。なんだって弾けるようになるから。
 それから遠海のピアノ通いの日々がはじまった。伊丹がいれば伊丹が教えてくれたし、いなければ伊丹の母親が教えてくれた。遠海の母親も時折やって来て、連弾をする日もあった。普段の母親のことをなんとなく苦手に思っていたが、一緒にピアノを弾く母親のことは好きだと思った。
 クラシックだったのがジャズになったのは伊丹と母親の趣味だったが、伊丹が言った通り、遠海はうんと練習したからなんだって弾けるようになった。学校で歌の練習のときに同級生がする伴奏を聴き、自分はもっと弾けるという確信が常にあった。でも学校では一度たりとも弾かなかった。鳴らしたいと思うのは伊丹の家にあるピアノ、それだけだった。
 高校卒業後に音大すら目指さなかったのは家庭の事情もある。そこまで金銭的な余裕のある家ではなかった。むしろ金のなさを痛感していたからこそきちんとした職に就くべきだと思い、高卒で清掃局に入局した。遠海が就職したときは市の管轄で、遠海は公務員の扱いだった。その後間もなく民間に業務委託することになり、遠海をかわいがってくれていたいまの社長に誘われて現在の会社に移った。清掃会社は人が嫌がる仕事だからかおおむね賃金がいい。伊丹の家にさえ通ってピアノを弾ければ、遠海の生活はなにも不足はなかった。
 そのピアノも、いまはない。伊丹は新たな住所地での開店を決めて準備中だが、ピアノの話は聞かなかったし、あったとしても遠海を呼んでくれるとは限らない。世の中にピアノの弾ける人間は山ほどいる。鴇田はあくまでもアマチュアであり、伊丹が望む店のことを考えると、きちんとしたプロのミュージシャンを雇って再出発の方がいいように思う。
 遠海は、伊丹があのピアノをあそこに用意したから弾いていた、それだけだ。特に個性のあるような魅力的な演奏を出来るわけではない。紗羽は帰国しているが演奏する場所がないので連絡を取りあっていないし、ケントは帰国すらしていない。このままこの部屋にある電子ピアノにかじりついて終わる。想像して、それでもいいかもしれない、と笑った。身の丈に合っている。いままでが贅沢に望みすぎたのだ。
 電子ピアノの椅子から降りて、通勤に使っている鞄を引っ張り出す。中には今日事務所からもらってきた「あおばタイムス」が入っている。会社では前々からあおばタイムスを定期購読しており、休憩中に誰でも読めるようになっていた。だが読み終われば不要になる。それを事務員に頼んでもらって帰るのがここ数カ月の遠海の日課だった。
 よれたそれをひらき、三倉が担当した記事を探す。同じ地域で担当は何人もいるし、コラムは持ち回りで掲載されない日もあるから、必ずしも三倉の文章を読めるわけではなかった。それでも探す。たまに三倉の記事が一面トップに使われていたりするとどうしようもなく嬉しかった。
 今日の掲載分で三倉は、役所の議会の様子を報告してあった。子育て支援拡充のための特別法を議会が提出、とある。議会など傍聴したこともない。ラジオで流れる国会中継だって眠くなるのに、そういうものに興味を持って取材をする人間とはどういうことだと思ってしまう。
 やっぱり自分とは遠い人間だったのだと、最近はよく思う。一時的に近い場所にいたが、やはり一時のことだった。近い場所にいる人間だと思った夜もあったけれど、例えばそれは自分の荒野と隣人の荒野の話で、密集地の近さではなかった。それに人はその荒野から出ることがある。自身の荒野に見切りをつけて街へ降りられたのなら、もういっそ関係がないと思える。
 テレビでは歌番組が始まり、悲恋を綴ったヒット曲を歌手が歌う。ばからしい、と思って消した。そんなんじゃない。そんな曲を自身と重ねるほど、遠海の恋はたいしたことではないはずだ。
 くまなく見たが三倉の記事はそれだけで、見終えた新聞紙を部屋の隅にまとめて置いて洗面所へ向かった。どうしても新聞の束を捨てられない。



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今日の一曲(別窓)






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