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いとしい人はずっと、両腕で顔を覆って、かくしてしまっていた。表情が見たいのに、腕を外しても、「見たい」と懇願しても、かくしてしまう。その、恥ずかしがっている姿もまたいいのだけれど。隆央のことならなんでも見ていたいからあれもこれも、と欲求が次から次へとあふれる自分はもう、隆央の虜でしかなかった。
首筋をべろりと舐めると、隆央はふるえた。沸騰まで煮詰めた蜜のようにとろけた内部が収縮し、深谷を締めあげる。
「――痛い?」
と訊くが、痛いわけがないのは、分かっている。思考まで性行の熱に侵されていて、言葉のコントロールができない。
隆央は両腕でかくしたまま、顔を横に振る。
「苦しい?」
それも、ないことだと分かる。隆央の中心はかたく張り詰めていて、先ほどからずっと、濡れた先端の裏側を深谷の腹に押し付けっぱなしだからだ。感情面での苦しさがあるとすれば、それはちょっと分からないけれど。
「顔が見たいな……」
今度はあやすようにやさしく、舐めた場所にキスをする。深谷の求めに、最終的には応じてくれる隆央を知っている。根負けするのか、本人にも悦びがあるのか、深谷を信じてくれるのか、隆央なりの理由があり、それを訊ねたことはないけれど、知っている。
手を掴んでそろそろと両腕をひらかせると、快感に真っ赤に潤んでどうしようもなくなっている隆央の顔が現れた。
喜びが身体中を駆けめぐる。深谷は満足の吐息をこぼしながら笑う。
「――深谷さん、」
「ん?」隆央の髪を掻き上げながら首を傾げる。
「……なんで動かないの……」
隆央の声は情事に掠れていて、熱をはらみ、耳に絡む。
答える代わりに額にキスをした。じれったくなった隆央は、自分から腰を揺すり出す。そういう、みだらな隆央も良かったが、深谷は両側から腰骨を強く掴んで、それをやめさせた。上体を起こし、上からじっと隆央を眺める。
隆央はまた顔の前に腕を持ってこようとする。その手を払いのける。さっきからこの繰り返し。
時間を気にしないで好きなだけ隆央を眺めていられるセックスが、深谷はいちばん好きだ。こういう時、本能と、深谷自身が持つ欲が混ざって、恍惚となる。対象とされている隆央はいい迷惑だろうか。深谷の気まぐれで、性器を何時間でも漲らせたまま、放っておかれる。かと思えば、いきなりの愛撫で何度もいけと促される、深谷との長い夜。
それでも隆央は嫌と言わない。怒ったりすねたりすることはあるけれども、深谷の好きにされてくれる。こういう仲になって一年が経ったというのに、未だに深谷を飽きさせない。魅力的な人だと思う。誰にとってじゃなくて、深谷にとって、深谷だけにとって。
隆央は限界が近いようで、もう、目が沸点を見ている。そういう蕩けたまなざしをしている。たまらないな、と思った。それだけで迎えそうになるが、深谷にはもうちょっと別の望みがあった。
動きを止めて眺められていることに対して不満げな隆央に、そっと耳打ちする。
「あなたが上になって自分で動くところ、見たいな」
「……」
「――見たいよ」
そう言いながらずるりと内部に収めていたものを引きだす、と出てゆく気配に隆央は「ああっ」とせつない声をあげた。
「やっ、やだっ」
否定はもちろん、予想済み、それでも懇願せずにいられない。もっとみだらな隆央を見たいから。
「見たい」
「深谷さん、」
「たとえば、ここの線とか、」
そう言いながら隆央の腹部を人差し指で描くように触れる。白い隆央の身体、筋肉が収まっている場所。
「こことか」
わき腹、撫で上げて、胸。ボリュームのある太腿をもう片方の手で触る。
「どんなふうに動くのかな。どんな線が見えるのかな。隆央くんは――」
上に届いた手で頬をひたりと撫でると、隆央はまたびくんと肩をふるわせた。
「どんな表情になっちゃうのかな……見たいよ」
とどめ、とばかりにぎりぎりでとどまらせていた興奮を奥までひといきに押し込むと、隆央は顎をのけぞらせてびくびくとふるえた。内部が収縮し、深谷も呻いたが、予想していた動きに、かろうじて出さなかった。
「隆央くん」
腰を掴んで起き上がるように促すと、隆央は呼吸を喘がせながらも「もう、」となんとか身体を動かす。深谷にしがみつき、懸命に身体を捩る。
要望に応じてくれるのが、嬉しかった。隆央を無駄に刺激しないようにそっと自身を引き抜いて、深谷は寝そべる。
「――今日だけだから」とのろのろと上になった隆央は言った。行き過ぎる快感に、泣いてしまうんじゃないかと思えるほど瞳に涙の膜が出来、きらめいて見える。
「恥ずかしいから、あんまり、……見ないで」
「それは無理な注文……そう、そのまま」
「――あっ……ああっ、あっ――っ」
深谷に跨り、再挿入を果たした隆央の悲鳴は尾を引いた。深谷の腹にしっかりと手を突きつつ、上下に腰を揺らす。深谷の視線から逃れるかのようにうつむく顔に、顎に、手をやった。上体を軽く起こし、隆央の顔を上向かせる。
半開きのくちびるからは、深谷への恨み言も心地よさも全部いっしょくたになった嬌声しか出てこなかった。
「――うん、とてもいいよ」
揺さぶられて、深谷ももう限界だった。下から突き上げると、隆央は首をがくがくと振って身悶えた。
「本当に、あなたは最高だ――」
聞こえていたかどうか、隆央は触られもしないで射精した。深谷もいく。終わると、隆央は気絶するように寝入り、夜半になっても意識を戻さなかった。
腕を伸ばし、腰を伸ばし、身体の動作確認をした隆央は、「これで今日これから出勤なんて信じられないよ」と言った。
朝、早く目を覚ましたのは隆央の方だった。深谷の家に置きっぱなしのスエットを身に着け、庭に出て行く。音で目をさまし、深谷も縁側へ出ると、すでにまぶしい朝日の中に隆央が佇んでいた。庭のあじさいが隆央を彩っている。絵画のようで、その背中に見惚れた。
振り向いた隆央が笑う。自身の魅力を知り尽くしているかのような、鮮やかな笑みだった。出会った頃よりずっと、隆央は魅力的になった。うぬぼれかもしれないけれど、もし自分が隆央をそうつくったのだとしたら、これ以上の喜びはない。
深谷はそのまま縁側に腰掛ける。
「どうも家にいると、あなたに無茶なことばかりさせてしまうけど、大丈夫?」
「そんなやわなつくりしてないから。――まあ、昨日はさすがに、」
と、微笑まじりのため息をつく。深谷もゆっくりと微笑む。
「次はどこか出かけようか」
「次、って、いつ?」
「隆央くんが来てくれる日」
「じゃあ、再来週の末かな……でもまだ梅雨の真っ最中だろ、」
「雨が降ったら、家にいよう」
そう言うと隆央は声をたてて笑った。そのまま見つめあう。
梅雨の中晴れ、朝日を浴びてきらきらと輝く隆央は、最高によかった。この人とこういう仲になれて、深谷はいま、満ち足りている。散々な人生を送ってきたとは言わないが、離婚や、母の介護や、深谷なりの苦労がこれまでにあった。人に言えない性癖を、分かち合える日が来るとは思わなかった。
深谷の視線がまた、陶然に満ちる。隆央はすぐそれに気づきながらも、見つめる深谷の前で、じっと佇んでくれている。
End.
関連:
虜になればいい
こわれそうだよ
トップシークレット
まさしく「カルナバル」という感じのセックスだと思います。本能と深谷さん自身の性癖が結びついてしまうとどうなっちゃうのかなというのがこのお話の最初からのテーマだったのですが、こういうかたちで書けて、とても楽しかったですw
konさんが幸せと仰るので、私も幸せです。本当にありがとうございましたw
更新を楽しみにしてくださって、嬉しいです。「楽園」の方もお楽しみ頂けていますか?日野くんをぜひかわいがってやってくださいw
そして同人誌の方もありがとうございます。こちらはスローペースで進めていますのでもうしばらくお時間頂くかと思うのですが、楽しみにしていてください。私たちも楽しみです。
拍手・コメント、ありがとうございました。
深谷さんにとって、隆央くんは本当に本当に喜びそのもので、Lさんの仰る通り、一時の欲では済まないものです。骨まで愛して、という言い方がありますが、文字通り骨まで(髄まで)愛しきっている辺り、深谷さんのすごいところです。目は口ほどにものをいい、とも言いますね。すごいステージまで行きついた二人ですが、書いていてとても楽しかったです。
早くパソコンが復活しますように。そして遊びにいらしてくださいね。
拍手・コメントありがとうございました!
説明不足で申し訳ないと思いながらもほったらかしなんですが、タイトルに「前夜」とある通り、「トップシークレット」の前の晩の二人になります。
この短編は今のところ全部で4つありますが、ぜひ読み通してほしいと思います。色々とつながります。ぜひ。
Fさんのご心配のことは、あんまり考えませんでした。いつか深谷兄にばれる日が来るかもしれませんが、深谷さんは毅然と立ち向かいそうです。強い人なので、きちんと隆央くんを守ってくれるはずです。
鎌倉のあじさい、いいですよね。私は遠方なのでなかなかさくっと行く訳に行かず、毎年期を逃してばかりいます。今年は無理そうなので、また来年、となります。うーん残念。
梅雨ですが、じめじめうつうつをうまくやり過ごして乗り切りましょう。
拍手・コメント、ありがとうございました!
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