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「へへ」と透馬が笑った。「手え、つないじゃいましたね」
「確信犯か」
「いや、そーんな考えないです、ふわふわしてるからいま。……こういう縁石の上歩くと目線変わって、楽しいじゃないすか」
「よろけて転ぶなよ。転ぶと、群青を割る羽目になる」
「あーそれじゃ、ちゃんと歩かなきゃなー」
瑛佑と繋いでいる手をぶんぶんとまわしながら橋を渡り、先の信号機で右に折れ、また先の路地で右に折れ、元の道へと戻る。人通りの多くなる駅前に戻る頃には手を離したが、透馬はまだ足取りが覚束ない。人に当たりそうになっては「すみません」と謝るも、楽しそうだった。
「瑛佑さん」
駅まであと少し、のところで透馬が瑛佑を呼んだ。足取りがさらにゆっくりになる。
「なに?」
「おれいま酔っぱらってるから、酔っぱらってる勢い借りて言っちゃうんですけど」
「うん?」
「このまま帰るのヤだなーって、思ってます」
「うち泊まってけばいいよ」
「……や、そうなんですけど、そうじゃ、なくて」
ぜひそうしたいですけど、とか、でも、とか瑛佑には分からないことを呟いている。ついには歩みが止まり人の流れに淀みが出来てしまったので、脇に見つけたビルの緑化スペースに透馬を引っ張り込んだ。
「どうした?」と訊ねると、透馬は「デートだからさ、」と言う。
「瑛佑さんともうちょっと長くいたいていうか、触りたい、です」
うつむいたまま言ったが、顔を上げて「セックスしたいです」とはっきり言い直した。「嫌、ですか」
驚いて声が出なかったがそこはポーカーフェイスが素なので、顔には表れなかった。嫌ですか、と訊かれれば、嫌ではない――と思う。実際に透馬の身体を目の前にしてちゃんと反応するのかどうかの自信はない。ていうかセックスって、なにがあれでどんなだ。高坂に言われていたくせに考えを後回しにしていたおかげで、具体的な行為についてリサーチがあまくて想像不可能。
透馬を目の前に、急に心臓がばくっと鳴った。うわ、いてえ、と高鳴りを自覚する。
無言の瑛佑に透馬は「無理ならいいんです」と歩き出そうとするので、慌てて手首を掴んだ。
「嫌じゃない。ただ、女性と勝手が違うんだろうなと考えたら緊張した」
「……そりゃ、女の人とは、」
「比べてどっちがいい、って優劣つけたいわけじゃないからな。要はおれ、男同士ははじめてだから……――ってよく考えたら、そうでもないな」
「えっ」短く鋭い、悲鳴のような声を出された。「なに、いつどこ? 経験あんですか??」
「違うって……。社員寮にいた頃だよ、先輩たちに誘われて半ば強引に、AV鑑賞でぬきあい、ってやつ」
「……ああ、そう、」
「それ一回しかないけど、カウントすんのかな。そういえば秀実もたまに見ようぜって持ってくるんだよな。応じたことないけど、特に体育会系のやつらでああやって集団で見たがるのは一体どういう心理なんだ……って、悪い、なにを喋ってんだかな」
「いや、よく喋ってて面白い」
「緊張してる」
はは、と透馬が笑った。それから改めて「瑛佑さんち行きたいです」と言われた。今までなんであんなに平気に家へ誘っていたか、疑えるほどはっきりと裏の言語が同時通訳された。
いいよ、と頷いたが、いつものように顔を見ては言えなかった。
← 39
→ 41
「確信犯か」
「いや、そーんな考えないです、ふわふわしてるからいま。……こういう縁石の上歩くと目線変わって、楽しいじゃないすか」
「よろけて転ぶなよ。転ぶと、群青を割る羽目になる」
「あーそれじゃ、ちゃんと歩かなきゃなー」
瑛佑と繋いでいる手をぶんぶんとまわしながら橋を渡り、先の信号機で右に折れ、また先の路地で右に折れ、元の道へと戻る。人通りの多くなる駅前に戻る頃には手を離したが、透馬はまだ足取りが覚束ない。人に当たりそうになっては「すみません」と謝るも、楽しそうだった。
「瑛佑さん」
駅まであと少し、のところで透馬が瑛佑を呼んだ。足取りがさらにゆっくりになる。
「なに?」
「おれいま酔っぱらってるから、酔っぱらってる勢い借りて言っちゃうんですけど」
「うん?」
「このまま帰るのヤだなーって、思ってます」
「うち泊まってけばいいよ」
「……や、そうなんですけど、そうじゃ、なくて」
ぜひそうしたいですけど、とか、でも、とか瑛佑には分からないことを呟いている。ついには歩みが止まり人の流れに淀みが出来てしまったので、脇に見つけたビルの緑化スペースに透馬を引っ張り込んだ。
「どうした?」と訊ねると、透馬は「デートだからさ、」と言う。
「瑛佑さんともうちょっと長くいたいていうか、触りたい、です」
うつむいたまま言ったが、顔を上げて「セックスしたいです」とはっきり言い直した。「嫌、ですか」
驚いて声が出なかったがそこはポーカーフェイスが素なので、顔には表れなかった。嫌ですか、と訊かれれば、嫌ではない――と思う。実際に透馬の身体を目の前にしてちゃんと反応するのかどうかの自信はない。ていうかセックスって、なにがあれでどんなだ。高坂に言われていたくせに考えを後回しにしていたおかげで、具体的な行為についてリサーチがあまくて想像不可能。
透馬を目の前に、急に心臓がばくっと鳴った。うわ、いてえ、と高鳴りを自覚する。
無言の瑛佑に透馬は「無理ならいいんです」と歩き出そうとするので、慌てて手首を掴んだ。
「嫌じゃない。ただ、女性と勝手が違うんだろうなと考えたら緊張した」
「……そりゃ、女の人とは、」
「比べてどっちがいい、って優劣つけたいわけじゃないからな。要はおれ、男同士ははじめてだから……――ってよく考えたら、そうでもないな」
「えっ」短く鋭い、悲鳴のような声を出された。「なに、いつどこ? 経験あんですか??」
「違うって……。社員寮にいた頃だよ、先輩たちに誘われて半ば強引に、AV鑑賞でぬきあい、ってやつ」
「……ああ、そう、」
「それ一回しかないけど、カウントすんのかな。そういえば秀実もたまに見ようぜって持ってくるんだよな。応じたことないけど、特に体育会系のやつらでああやって集団で見たがるのは一体どういう心理なんだ……って、悪い、なにを喋ってんだかな」
「いや、よく喋ってて面白い」
「緊張してる」
はは、と透馬が笑った。それから改めて「瑛佑さんち行きたいです」と言われた。今までなんであんなに平気に家へ誘っていたか、疑えるほどはっきりと裏の言語が同時通訳された。
いいよ、と頷いたが、いつものように顔を見ては言えなかった。
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プロフィール
HN:
粟津原栗子
性別:
非公開
自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。
****
2022*08*11-21
暑いですね。番外編短編、ちょこっと更新しています。
2021*12*04-2022*03*17
お久しぶりです。短編長編更新。
短編「さきごろのはる」
短編「月の椅子」
短編「みんな嬉しいお菓子の日」
長編「ファンタスティック・ブロウ」
短編「冬の日、林檎真っ赤に熟れて」
2021*08*16-08*19
甘いお菓子のある短編「最善最愛チョコレート」更新。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。
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2022*08*11-21
暑いですね。番外編短編、ちょこっと更新しています。
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