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成人女性を対象とした自作小説を置いています。
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「……その顔だめだって……、――っ、」
 銜え込むと、黙った。片手でシーツを握り、もう片方の手は瑛佑の髪をいじり出す。男なんか相手にしたことがないので、いま施していることはすべて透馬を手本としている。裏側を辿り、まるみをねぶり、先の抉れを舌先で突く。透馬が瑛佑にしてくれる時は、全部をすっぽりと銜え込んで圧をかける、という手練れたことまでしてくれるのだが、それをするにはまだ経験や勇気が足りない。舌で弄って軽く食む、ぐらいが精一杯だが、透馬は目を閉じて浸ってくれている。
 そっと薄目をあけ、快感に酔いしれた瞳で「瑛佑さん」と呼んだ。
「おれもしたい。させて」
 そう言って瑛佑の腰の方へ顔を寄せてくる。勃起を瑛佑の口元へあてがったまま、互い違いとなる格好だ。透馬の腿に頭を乗せるとちょうどよく、濡れる先端にしゃぶりつく。
「――瑛佑さん、べたべただよ」
 瑛佑の下着に出来た染みを、透馬は嬉しそうに報告した。普段からよく喋るのは承知だが、セックスにまで口数が多いのは恥ずかしい。瑛佑が無口な性分だから余計にそう感じるのかもしれない。
 下着の上から舌を這わせてくる。直接的にはなかなか触れてこないのが、じれったくてもどかしい。刺激がほしくて尻が勝手に動く。下着が濡れてゆくだけで、張りついてくる布地が窮屈。
「……透馬、ちゃんと触れ……」
「――うわ、」
 喋ると、口の傍にある透馬の勃起からじわりと蜜がにじんだ。
「いま、夢の通りだったよ」
 言わせたくせに。
「ちゃんとします、ね……」
 下着をずらされて、焦らされっぱなしの勃起が勢いよく飛び出したのが分かった。そこからは透馬の猛攻がはじまる。ありとあらゆる技で瑛佑を追い詰め、ぎりぎりのところでくちびるを離す。尻たぶをぐいと掴まれ、蜜をこぼす中心どころか渡りから奥まで舐められて、透馬に施すことが難しくなった。
 這いまわる舌に、身体がびくびくと攣る。触れてゆく先からそこらが溶けてかたちを失くしてしまいそうだった。久々に触られるからなのか、透馬が巧いからなのか。透馬から与えられることはすべて瑛佑を気持ち良くすると、身体にしっかりと教え込まれてしまったからなのか。
 いつの間にか体勢が入れ替わり、尻を高く持ち上げた姿勢ですべてを透馬にさらしていた。シャツも下着も透馬の手で取り去られている。透馬はシャツだけを着ていたが、暑い、と言って自分で脱いだ。
 ぬかりなく用意されていたローションを、透馬の手を介して垂らされる。先程まで透馬が散々舐めまわしていたせいで、長いこと閉じていたはずの後腔は緩みかけている。そこを指で探られ、伺いたてるように中に一本入れられて、腰が跳ねた。
「――あっ」
「……痛……くない、よね。苦しい?」
 痺れて動けなくなっている身体にどうにか力を込めて、首を横に振る。背後でほっと息を吐く気配、同時に「もう少し」と言って指が奥までぐうっと入り込んできた。
 一本まるまる飲みこまされて、自然と締め付けてしまう。それでも透馬が指を出し入れしたり空いた手で太腿や尻を撫でてくるうちに、はじめの違和感が薄れ、緩む。ローションがさらに足され、指の数も増える。三本まとめて出し入れされる頃には前も後ろもどろどろで、膝がふるえて体勢を保っていられなかった。
「シーツに垂れてる」
 前をゆっくりと扱いて、透馬が言った。その刺激にまた身を捩る。
「瑛佑さん、気持ちよさそう」
「……気持ちいいんだよ……」
「……おれのせい?」
 頷くと、透馬は心底あまい顔をした。すべて透馬が教えたことだから、透馬に責任を取ってもらわねば困る。ひくりと蠢く背後は、指だけで到底満足し得るものではなかった。透馬、と名前を呼ぶ。早くほしい。
 瑛佑の背後に覆いかぶさると、耳に直接「すきです」を吹き込まれた。身体中に鳥肌が立つ。
 先端だけを瑛佑の窄まりにひっかけておいて、なかなか入れようとしない。少しだけ腰を押し進めて、引く、を繰り返す。切羽詰って懇願するのは透馬の思いどおりなのだと分かっていて、そうせざるを得なかった。はやく、と普段の自分からは想像できないほどのみっともない声が出た。
「……おれが、ほしい?」
「しつこい……っ」分かり切っているだろう。
「すいません。おれも余裕ぶってる場合じゃないよ……」
 紡ぎだされる言葉のひとつひとつが、耳にあまい。崩れそうな腰をぐっと掴むと、透馬はようやく腰を強く押し付けた。
「――ああっ……あっ、」
「……っ、瑛佑さんっ、」
 だっこ、と言って透馬は瑛佑の腕を後ろに引いた。自由のきかない足をなんとか踏んばらせて、そのまま透馬の胸に背板を預けた。座した透馬の上でつながっている状態だ。思わぬ深い場所まで透馬が届いて、心臓が口から押し出されてしまうような気になる。
「あ…あ、」
「……瑛佑さん」
 顔をのけぞらせて内部の圧迫を味わっていると、透馬の手で横を向かされてキスをされた。舌を絡ませ合い、歯列をしごく。口蓋に舌が届くと腰まで痺れが走って、透馬が握りこんでいる勃起がたらりと蜜をこぼした。
「ん、」とひとつ呻いて、透馬はくちびるを離す。「瑛佑さん、色っぽい。かわいい」
「まだいっちゃだめだよ」
「な……んで」
「ゆっくりしたい」
 それは瑛佑も賛成なのだが、下半身の事情はそうもゆかなかった。さっきから先走りをこぼしっぱなしで、自分の下半身がどんな状態になっているのか目の当たりにするのが怖くて目をそらし続けている有様。ぴちゃぴちゃと音を立てながらキスをするのと、ゆるく腰をゆすられるのと、先走りを広げるようにじっくりと瑛佑のものを撫でる透馬の指とで、瑛佑はどんどん追い上げられる。
 たわむれに透馬の先端がかすめた場所に、射精感を募らせるまでもなくあっけなくいってしまった。内部が絞られて透馬もたまらなかったのか、続けざまに奥へ熱いものが流れ込む感触がして、身をふるわせた。
 ぐったりと透馬に寄りかかっていると、透馬も後ろへ倒れ込んだ。「いっちゃった」と惜しむ声。荒い呼吸のまま「でも、まだ」と言って瑛佑の身体を横にした。
 つながったまま横向きに二人で転がって、またキスをする。「ほんとうにきもちいい」と透馬がこぼした通り、どこを触られてなにをして動いても、気持ちが良かった。足を大きく開いて透馬に絡ませ、ゆるゆると腰を動かしているうちに瑛佑のものも透馬のものも完全にかたくなった。横向きだと苦しい思いをせずにつながれるのが嬉しい。透馬の手は自由に動き、瑛佑のあちこちを撫でる。
 くちびるを離した透馬は、瑛佑のうなじに吸い付いた。噛まれ、ちくりとした痛みは全身を駆け抜ける。なにをされたのか分かって、途端に顔から火が出そうなぐらい恥ずかしくなった。
「……見えるところ、」
「見えないよ、多分」
 あやうげな言い分に、ふ、と吹き出す。確かに制服の襟に隠れるか隠れないかの、ぎりぎりを吸われた。思わぬタイミングで人目にさらされることもあるだろう、位置。
「おれのものだ、って言っちゃっていいんだよね」
 背後からぎゅうと瑛佑を抱きしめて、透馬が言う。その不安げな台詞に、透馬の手を上から握る。
 ただただひたすらにあまいセックスで透馬の不安が消えてなくなりますようにと願わずにいられない。こんなに触れ合ってあますところなく見せて、大丈夫だと何度言い聞かせたら信じ込んでくれるだろう。
 せつなく絞られる胸は透馬のせいだ。握っている手にさらに力を込める。痛い、と透馬が訴えるまでこめる。
「いいよ……すきに、言え」
 透馬が触れている胸の上、心臓をじかに撫でるように答える。透馬は驚いた顔をして、すぐにせつなそうに表情を歪めた。
「おれも言うから」
「……おれにも痕、つけて」
「どこがいい?」
「瑛佑さんが『好きだ』って、思ってるとこ」
 なら透馬の横顔が一番好きだが、頬につけるわけにはゆかない。選ぶふりをして透馬の身体をじっくりと眺めるのは、なかなか良かった。結局、透馬につけられた場所と同じところにした。首筋にかかる髪を分けてキスをすると、透馬は「はは」と照れ笑いをする。
 それから、長いキスをした。舐めあっているうちに我慢ならなくなって腰を揺すり、また透馬が瑛佑に入り込んできて、くったりと力の入らぬ身体を好きにされた。


 シングルベッドふたつ、ばんざい、と言いながら透馬は瑛佑のベッドに潜りこんだ。なにがいいって、汗だの唾液だのローションだの精液だのでぐしゃぐしゃに濡れたベッドをとりあえず捨てて、乾いたベッドで眠れることだ。そういう意図はなかったな、と喜ぶ透馬に苦笑しつつ、タオルを放って瑛佑もベッドに潜りこむ。二人ともシャワーを浴びた後で、つめたいシーツがさっぱりと肌に心地よい。難があるとすれば男二人と飼い猫一匹にはシングルは狭すぎる、という点。夏場なら多分一緒に眠らない。
 セックスのまま眠りこんでも良かったのだが、ちゃんとシャワーを浴びてリセットしたのは二人とも明日仕事があるからだ。さすがに眠って休まなければ、と時計を確認する。もう早朝に近い時間だ。窓の外はひやりと冷え込んでいるらしく、閉じたカーテンを超えて冷気がすうっと肌を撫でる。
「瑛佑さん」と話しかける透馬に、「もう眠い」と答える。
「……少しだけ、」
「ん?」
「おれがじいさんになったら、っていう話していいですか?」
 こわごわと、でも真面目に言うので、くるりと身体をまわして透馬に向き合った。
「おれ、瑛佑さんよりも貧弱なもやしだから先に足腰立たなくなると思う」
「……いきなりなんだよ」
「……そういう限界が来ても、一緒にいたい、っていう意味です」
 瑛佑の手を取り、自分の心臓の上へと導く。透馬の願いと同時に、迷いも分かる。勇気を出して言ってくれたことに、胸の内側がぼわりと暖かくなる。
 瑛佑の頭の中では、まだ鈴が鳴り転がっている。透馬の歌声が幸福を呼んでいる。
「介護になるのは面倒だから、透馬はいまのうちに歩かないとな」
 髪を梳いてそう言うと、透馬は瞳をきょとんとさせた後、顔を歪めた。泣きそうなのと嫌そうなのと笑い出しそうなのがごちゃまぜになって、複雑だ。
「今度の休日にN岳の開山祭があって、秀実と行く約束なんだ。透馬も行こう」
「え、無理です。ヒデくんと瑛佑さんと一緒なんて。もうちょっと初心者向けにしましょう、公園一周とか」
「Nなんてバスターミナルがすぐだからちょっとしか歩かないよ。行こう」
「いやいや、」
「おんもにでたい、って散々歌ってたじゃないか」
 そう笑うと、透馬も吹き出した。「確かに歌いましたけど」
「Nならまだ寒いだろうけど、ふもとじゃ桜がいいころあいじゃないかな」
「桜……」
「透馬、春だよ」
 そうだ、春なのだ。長くつめたい冬の終わり、すべて溶け、ほころぶ春。
 スケッチブック持って行っていいかな、と言った恋人に笑ってやると、笑顔を瑛佑に返してくれた。笑い合い、ふと思いついて、瑛佑は透馬に子守唄を求めてみた。
「え」と笑い顔のままかたまる。
「さっきあれだけ歌ってたじゃないか」
「あんなの鼻歌ですよ。それにおれ、うまくないし」
「さっきのあれが良かったからリクエストしてるんだ」
「えー……照れる……」
「なあ、透馬」
 すると透馬は、瑛佑に向こうを向くように促した。歌ってやるからあっちを向け、という意味か。素直に従うと、同時に腰の下に腕が差しこまれる。背後から抱え込まれる格好は先ほどもしていたが、服がまとわりつくとまた感じる肌の伝わり方も違う。
 透馬の少し低めの体温が、徐々に伝わってくる。腹の上で手をつなぐと、透馬は瑛佑のうなじに額を押し付けて、恥ずかしそうに歌い始める。
 はーるよこい はーやくこい
 あーるきはじめた みーちゃんが
 
 とん、とん、と節に合わせて上下する手指。歌が終われば、またうたってくれた。瑛佑が眠るために、ほとんど囁き声の、掠れた透馬の音で。
 瑛佑にとっての、幸福を呼ぶ鈴。
 心地よさが目の前に大きく広がる。出勤で慌ただしくなるまで、しばらく眠りについた。


End.


中編




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milmilさま(拍手コメント)
いつもありがとうございます!
登場人物たちには本当に長いこと時間をかけてあれこれと練りましたので、milmilさんの言葉を頂いて嬉しく思います。「臆病」な透馬くんと「普通」の瑛佑くん。彼らがどんな日々を歩むのか、楽しみだと思います。
地下潜伏と言いましたが、28日に短編をひとつ更新します。瑛佑くんと透馬くんです。覗きに来てやってくださいね。
拍手・コメントありがとうございました!
粟津原栗子 2014/02/26(Wed)08:29:12 編集
ellyさま(拍手コメント)
いつもありがとうございます!
背中、ばしばし叩いてやってください(笑)「花と群青」は冬のお話だと思っていたので、ようやく春のお話が書けて楽しかったのでした。
まだ番外編たくさん書きたいと思っていることがあるので、まだまだおつきあいくださいね。
次の連載はまだ未定なのですが、気長にお待ちください。
そしてねぎらいのお言葉を本当にありがとうございましたw
粟津原栗子 2014/02/26(Wed)08:35:24 編集
るなさま(拍手コメント)
読んでくださってありがとうございます。
地下潜伏しますとか言っておいて、明後日(28日)にはひとつ短編を更新予定です。冬のうちに冬のお話を、と思っています。ぜひ遊びにいらしてください(笑)
その後の予定は未定ですが、この二人で書きたい短編が山ほどあるので、不定期更新でも続けてゆく予定です。お楽しみに!
拍手・コメントありがとうございました。
粟津原栗子 2014/02/26(Wed)08:38:07 編集
konさま(拍手コメント)
いつもありがとうございます。
今回の番外編は、もうどれだけ透馬くんが幸せで幸せで仕方がないか、という春てんこ盛りのお話です。konさんの仰る通り、「番」だと思います。いえ、とても素敵な言葉をありがとうございますw
彼らには本当に人生の終わりまでパートナーでいてほしい、と思っています。透馬くんの絵や字や花を愛する心が瑛佑くんにも伝わって、或いは瑛佑くんの運動好きな部分も伝わって、うまく影響し合って生活してほしい、というのが私の願いです。
透馬くんは感受性豊かな子です。感性が好き、と仰って頂けて、本当に嬉しかったです。瑛佑くんもこういうところに惹かれているんじゃないかと思います。
拍手とコメントをありがとうございました!
粟津原栗子 2014/02/26(Wed)08:51:08 編集
mmさま(拍手コメント)
いつもありがとうございます!
mmさんの仰る通りで、透馬くんの存在がどれだけ瑛佑くんにとって喜びであるか、というお話でした。瑛佑くんはもうすべてを委ねているし、また透馬くんのことを可愛くて仕方がない、とも思っています。春のはじまりのお話を書けて本当に楽しかったですw
100話を超えた長いながいお話が、充実していたのは読んでくださる方々がいらっしゃったからでした。書いて良かったな、と思える作品です。こちらこそお礼を申し上げます。ありがとうございました。
また短編はちょこちょこあげていきたいと思っていますので、お楽しみに!
粟津原栗子 2014/02/26(Wed)08:55:31 編集
nさま(拍手コメント)
いつもありがとうございます。
「花と群青」が冬の寂しさ、寒さ、対して人といる温かさ、がテーマだったので、もう春が嬉しい、嬉しくて嬉しくて仕方がない、という爛漫な様子がこの番外編です。書いてて「春まだかなあ」と思っていました。
貴和子さんと瑛佑くん親子、あまりにも格好いい、と評判よくて満足です!離れて暮らしているから出来る、さばさばとした親子関係だと思います。また別の番外編でも出したいと思っていますので、その時はよろしくお願いしますね。
17時を楽しみにしていてくださって、本当に嬉しいです。ひとまず28日に短編を更新予定です。冬のうちに冬のお話をひとつ更新します。おつきあいくださいませ。
拍手・コメント、本当にありがとうございました!
粟津原栗子 2014/02/26(Wed)09:01:34 編集
プロフィール
HN:
粟津原栗子
性別:
非公開
自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

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