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成人女性を対象とした自作小説を置いています。
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 さっぱりした気持ちで「おまえが言う通りだった」と鞠子に告げた。十月初旬、今度は放課後に鞠子の家に行ってアイスクリームを食べていた。鞠子は家業の青果店の、店番中だ。
 鞠子は意味分からないという風に首を傾げて、「おれ、なにか言いましたっけ」と訊ね返した。
「ずっと前に言っただろ、東京のおじさんは忙しかっただけなんだ、って」
「――はあ、その話ですか」顔がうんざりしている。
「あれ、そういうことにした。そうなんだよ、忙しかっただけなんだ」
「はあ?」
「しょうがないよな、かっこいい大人はそうじゃないとな」
 鞠子は心底分からない、と首を横に振る。
 結局、メモ書きの住所は訪ねなかった。悩んだ末あのメモは燃やしてしまった。友隆小父につながる人物が住んでいるかどうか、色々と確証のない物事であるし、友隆小父を暴くような行為に後ろめたさを感じた。というか、自分が心底嫌になった。だから、やめた。
 火を直接扱うのは理科の実験以来だった。父親のつかう灰皿の上で、紙切れはぽっと炎をあげて焦げて消えてしまった。燃やして、清々した。そうしてから、鞠子を労わってやる気持ちになった。
 ぼくにしたら珍しく、鞠子にアイスクリームを買って行った。ぼくらがいつも買うメーカーのものより百五十円も高い新商品だ。なにか裏があるんじゃないかとびくびくしながらアイスを受け取る鞠子が、可笑しかった。鞠子といると楽しいのは、中学からずっと変わらない。
 東京へ行くのやめたんだ、と告げると、鞠子はしばらくの沈黙の後に「えっ」と簡潔に叫んだ。
「大学、志望校変更。地元にする」
「地元って、これから変更? あんた東京がいいってあれほど言ってたのに」
「んー、でもなんかいい。東京はさ、就職のタイミングで行ったっていいじゃん。親も喜んだし」
「そういうこと言ってると一生出損ねますよ」
 呆れた、と言わんばかりの顔で言う。その顔に「だからこれからも頼むよ」と言うと、鞠子は口を中途半端に開けたまままた黙った。
「いいじゃん。こっちって、おまえいるし」
「いますけど、そりゃ、」
「そりゃ、なに。おまえも『大学は東京に』って考えてた口?」
「……考えてましたよ、東京。先輩行くって言うし」
 お、と思わず声が出た。鞠子を見ると、怒っているのか迷っているのか照れているのかよく分からない顔で、そっぽを向いていた。
 その顔を振って、こちらを向いた。「でも地元にするって言うなら、おれもこっちにします」と鞠子は言う。
「言っておきますけども、おれは先輩よりも真面目で勉強ができますから。地元だったらSランク狙いです。K学院大」
「え、ちょっともっと落とせよ、ランク。一緒のところ行こうぜ」
「あんたが勉強頑張ってください」
「無理だよ。これから志願変更すんだぜ」
 鞠子が大学受験をするまで、あと二年ある。鞠子が考えなおして志望校を変える方がいい。あ、違うか。思いつきに、ぼくは頷く。
「二年かけてベンキョしたら、さすがにK学院大もおれを入れてくれないかな。そしたら一緒に入学出来るな」
「……ばっかじゃないですか」
 呆れきって鞠子は、笑い出した。


End.



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ellyさま(拍手コメント)
こんにちは。いつもありがとうございます。

慧介と鞠子に関しては、清己と七嶋の高校生時代をリンクさせて書いています。同じ高校生の彼らが、いまどんなふうに日々を送るのか。ゆるゆる短編でした。

さてあと二人です。おっさんと高校生が出てきます。どんなお話になるか、どうぞお楽しみに!
拍手コメントありがとうございました!!
粟津原栗子 2013/08/15(Thu)06:45:12 編集
プロフィール
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粟津原栗子
性別:
非公開
自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

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