忍者ブログ
ADMIN]  [WRITE
成人女性を対象とした自作小説を置いています。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 再び、緩みきった三崎の最奥に、村上が進んでくる。先ほど、ジェルを足したから侵入は実にスムーズで、村上のものが中をずり上がっていく感覚に、三崎は酔った。
「あっ、はあっ、……」
 挿入の際にかたく閉じていた目をあけると、ぽろりと、汗か涙かも分からないものが伝い落ちた。村上はそれに気づいて、上体を倒して三崎の目元を吸ってくれた。長い性行のあいだに陽は動き、真昼の部屋に、日差しが差し込みはじめていた。村上の背にも当たっている。そこだけ眩く光っている。
 そういえば高校時代の村上はよく三崎の背中を見ていたのだと言った。発光する首筋を見ていた、と。こんな風だったのかな、と三崎は村上の肩先を照らす陽光に手を伸ばす。三崎の手は村上へ落ちるはずの光を遮り、陽は、指先の一本一本まで丁寧に照射する。
「どうした?」と村上が訊くので、三崎は「昼間っからセックスしてるから」と答える。
「あかるい。変な感じ」
「ふうん」
 と村上は、窓の外を見遣った。細い目がさらにきつく尖る。それから三崎を見下ろして、「わるくないな」と微笑んだ。
「あんたが、全部見える」
「……おれも見えるよ。汗がすごい、士信」
「ああ」
 ひたりと、傷に障らぬように優しく、村上の右頬に触れる。親指の腹で村上の目尻を撫でた。村上はくすぐったそうに笑い、痛みのあるはずの手で三崎の手を上から握った。
「……捻挫、……おでこも、早く治るといいね」
「そうでもないぜ。あんたと昼間っからこんなこと出来るんだから」
 と、唐突にキスをされた。
「怪我の功名ってやつか?」
「……おれは、いや」
「ん?」
「心配になるし、気ぃ遣わなきゃいけないし。洗いものとか片付けとか、全部おれだし。……士信の右手がつかえなくて、全然触ってくれないのも、いやだ」
「は」
 あんた本当にいやらしいね、と村上がしみじみとこぼす。褒め言葉をいただけて光栄だ。
「早く治して、うんと触って」
「じゃああんた、その時はまた、昼間誘ってくれ」
「気に入った?」昼間のセックス。なにもかも見えて、晒して、ちょっと心許なくて、でもさっぱりと清々しい心地がする。
「高校を思い出す。日なたの席」
 村上もまた、光を掴むかのようにシーツに落ちた日差しに手を伸ばし、空を掴む。そのまま三崎の脚を掴み、しっかりと胴に巻き付けさせると、小刻みに腰をつかいはじめた。
「――あっ、んっ、ふっ、ふあっ」
「確かにおれ今日は全然触ってないな、あんたに」
 は、と息を吐きながら、村上は身体を折り曲げた。三崎の胸の先にくちびるを寄せて、やわく食む。ぴりっとしたちいさな刺激がそこで生まれる。
「全然触ってないのに、こんなになってる」
 左手は、三崎の性器に伸びた。こぼれて幹を伝う腺液を撫で広げるように指を動かし、そのまま親指の腹でぐりぐりと鈴口を押された。
「あ、あっ」
「いやらしくて気持ちいい顔してるのが、よく見える」
「あっ、それ、いく……っ」
「いけよ、三崎」
 言葉と同時に前を猛烈に扱かれ、不規則に中も突かれて、三崎は射精する。村上は残液まで搾り取るかのように下からぐうっと扱いてきた。腹や胸に散った精液まで、指の腹で掬う。
 べたべたの手を拭いもせずに、村上は再び体勢を立て直して、腰をつかってきた。いったばかりの身体は獰猛な動きに耐えられず、腰から下ががくがくと痺れた。もう自分の口でなにを言っているのかも判別つかなかった。やだ、とか、いい、とか、もっと、とか、あられもないことを、唾液をまき散らしながらきっと叫んでいる。
 村上の左手が、三崎の右手を取った。その手を性器に導かれる。
「自分で扱いて、あんたがいくところ、もう一回見たい」
 三崎、と村上が呼んだ。顔にまで陽が当たりはじめ、本当に発光しているみたいだった。三崎は夢中で前をこする。その動きに乗算して、村上の注挿も重たく深くなる。
 いやらしい音をいっぱい立てて、突いて、村上も頂きを迎えた。きゅうっと寄った眉根が愛おしく、続けざまに三崎も精を吐く。二回目だったから薄く、しかし中にいる村上を思い切り締めあげた。痙攣する三崎に村上が覆いかぶさり、裸の胸と胸が重なりあう。その肌の熱さはきっと、日なたにいたせいだ、と三崎は思った。


「あんた、花は好きか」と唐突に村上が訊いた。ひと眠りして、まだ陽が高くて、ふたりくっついたままベッドに転がっているときだった。いい加減に腹が減っていた。でもシャワーを浴びに起きるのが面倒とか、そんなことを考えていた三崎は、村上の台詞にきょとんとした。
 まさか村上の口から「花」なんて単語が出るとは思わなかった。
「見れば、綺麗だと思う程度には」
「おれは、地面に咲く花は興味ねえんだ。ただ、木に咲く花はいいかな、って」
 そう言う村上の視線の先は、今日何度めか、また窓の外だった。寝転んでいるから、空や庭木が見える。ああそうか、と三崎は思いつく。いつも村上が撮るアングルは、こういう、「見あげた」ものだった。
「桜とか、空を向くと勝手に映り込んでくるんだよな。あの空色と白っぽいピンクはさ、毎年、見事なもんだな、と思って写真撮ってた」
「その写真、ある?」
「探せばどこかに」
「見たい」
「だったら、見に行こうぜ」
 村上はそう言って笑った。
「桜が咲いたら」
「……もうじき咲くよね」
「ああ」
 今度こそデートだ、と思い、三崎は嬉しくなる。桜が咲いたら、村上の傷が治ったら、春になったら。
 窓の外を見る。それはそれはうららかな日差しで、よく晴れていて気持ちがいい。


End.


← 3


タイトルと文中に引用した曲は「卒業式の歌」と言うそうです。そのまんまです。(調べていて知りました。)
長い曲なので、いまはもう歌わないかもしれません。私は歌いました。

おつきあいくださってありがとうございました。





拍手[57回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
mochaさま(拍手コメント)
読んでいただいてありがとうございます。
春が待ち遠しいですね、というお話でした。三崎くんも、村上くんも、野口くんにも、平等に春がやって来ます。楽しんでいただけたようで、ほっといたしました。
後日談へのリクエストもありがとうございます。そうですね、村上くん。怪我しっぱなしで終わりましたから。また書ければいいなと思うふたりです。
今日などは暖かい日になるようですが、先日までの寒波はすごかったですね。まだ冬、ですがもう少しで春です。mochaさんもどうかお体ご自愛ください。
拍手・コメント、ありがとうございました!
粟津原栗子 2015/02/11(Wed)07:45:56 編集
ellyさま(拍手コメント)
いつもありがとうございます。
三崎くんの魔性っぷり、楽しんでいただけたようで嬉しく思いますw 欲に素直なのが三崎くんなので、変にねじれていない分、とても書きやすかったです。
また、村上くんの「あんた」は実はこだわりポイントだったので、突っこんでくださる方がいて嬉しいです(笑) フルネームだって知ってるだろうに名前でもなく、「おまえ」でもなくましてや「あなた」でも「きみ」でもなく、「あんた」。村上くんの性格は「あんた」と呼んでいる、ということで決まったようなものです。気に入っていただけて嬉しいです。
体調へのお気づかいも本当にありがとうございます。だいぶよくなりました。ですが油断大敵、充分に暖かくして過ごしたいと思います。
拍手・コメント、ありがとうございました!
粟津原栗子 2015/02/12(Thu)08:28:26 編集
プロフィール
HN:
粟津原栗子
性別:
非公開
自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

****
2022*08*11-21
暑いですね。番外編短編、ちょこっと更新しています。

2021*12*04-2022*03*17
お久しぶりです。短編長編更新。
短編「さきごろのはる」
短編「月の椅子」
短編「みんな嬉しいお菓子の日」
長編「ファンタスティック・ブロウ」
短編「冬の日、林檎真っ赤に熟れて」

2021*08*16-08*19
甘いお菓子のある短編「最善最愛チョコレート」更新。
カウンター
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
最新記事
フリーエリア
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]

Template by wolke4/Photo by 0501