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成人女性を対象とした自作小説を置いています。
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「おれもあんたの所に行くから」
「うん」
「早先生のとこにも行こうよ」
「それはな」樹生は苦笑した。
「行かないと。一人を漫喫してるみたいだけど、やっぱり、親だから。年も年だし」
「あの家の手入れ、あんたもやれよ」
「――そうだな、」
 そう言って、樹生は暁登の腕を掴み、その肩に額を乗せた。目頭が熱っぽい。不意に膝の力が抜け、かくん、と樹生は暁登を引っつかんだまま床に崩れた。
 引きずられた暁登が声を立てる。
「――どうしたんだよ、」
「いやなんか、……力抜けた」
 緊張していたのかもしれない、と言うと暁登に笑われた。その笑みがいい。
 立つ? と聞かれて、樹生は首を横に振った。立たないのか? と言われて、うん、と頷く。
「眠くなってきた」
「あー、ベッドに布団敷くか。あんたは寝ろ」
「暁登も寝ようよ」
「片付けがまだ終わらない」
「寝ようよ」
 そう言うと、暁登はふん、と鼻から息を漏らして立ち上がった。部屋の壁際に降ろして寄せておいた布団をベッドに運び始める。
「ほら、寝るならこっちで寝ろ」
「あきも」
「んん、」
「寝よう」
 しつこく寝よう寝ようと言うと、暁登は面倒臭そうな顔をしたが「まあ、いいか」と樹生の腕を引っ張る。敷いたばかりの布団に二人で寝転んだ。狭かったが、久しぶりに触れる体温と重さに安心した。
「少しだけ」
「ん、……」
 体を動かすと顎と顎がぶつかった。至近距離で瞳が合わせられる。樹生は暁登の眼鏡を外した。
「おれの顔、見える?」
「見えるよ、これだけ近ければ」
 そのまま抱き合って束の間眠りについた。


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プロフィール
HN:
粟津原栗子
性別:
非公開
自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

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暑いですね。番外編短編、ちょこっと更新しています。

2021*12*04-2022*03*17
お久しぶりです。短編長編更新。
短編「さきごろのはる」
短編「月の椅子」
短編「みんな嬉しいお菓子の日」
長編「ファンタスティック・ブロウ」
短編「冬の日、林檎真っ赤に熟れて」

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