忍者ブログ
ADMIN]  [WRITE
成人女性を対象とした自作小説を置いています。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「――熱い」と暁登は言った。
「そうだな、」
「岩永さんの心臓、すごいです」
「めちゃくちゃ鳴ってるだろ、」
「……肌、がさがさ」
「酷いもんだよね」
 すると暁登は、先ほど樹生がしたように胸に顔を近づけ、そのまま頬を当ててきた。
 それきり動かないので、樹生はその頭を抱える。しばらくそうして、お互いの体温や心拍を確かめる。やがて暁登の手がするりと樹生の性器に伸びて、樹生は息を詰めた。
 ぎこちなく握られ、ぎこちなく擦られる。その不慣れな感じは悪くなかったが、沸点には足りない。樹生は暁登の手を上から握り、「こう」と言って自慰のリズムと強弱で暁登の手を動かした。
 濡れた音が室内に響き始める。樹生の吐息も荒くなる。手を外してももう、暁登は樹生の性器を気持ちよく刺激することが出来た。「気持ちいいですか」と訊かれたので、樹生は頷く。
「すげー気持ちいい。もう、だいぶ、やばい」
「……なんか、」
「ん?」
「おれも興奮してきました、また」
 見れば先ほど放出した暁登の性器も、立ちあがっていた。
「若いな」と笑うと、暁登は恥ずかしそうに目を背ける。
「いや、こういうのは意地が悪いよね。悪かった。……嬉しいよ」
「……」
「……一緒にしようか」
「え?」
 そう言って、いったん暁登の手を止めさせた。体制を直し、暁登の体をあぐらをかいた樹生の上に向かい合わせに載せる。勃起した性器と性器が触れあうさまを見て、思わず喉を鳴らしてしまった。
 暁登の手を導き、二人分の性器を二人でまとめて握った。
「重くないんですか、」と手を動かしながら、暁登が尋ねる。
「全然。むしろ軽くて怖い。もっと食って肉つけた方がいいよ、塩谷くん」
 樹生の膝の上で快感に悶え目尻を朱に染める暁登の姿は最高に艶っぽく、樹生はますます興奮した。そのうち暁登は自ら手を外してしまう。樹生の首にしっかりとしがみつき、裸の胸と胸が触れあって、心臓がドン、と跳ねた。
 二人分の性器を樹生は好きに扱いた。耳元で暁登は荒い吐息を漏らす。樹生も保たない。樹生が沸点を見て精を吐き出した時、暁登の性器はまだ硬いままだったが、残液を搾り取るように手を動かしていると彼もまた体を震わせて射精した。薄い精液を吐き出す。
 お互いの肩先にお互いの頭を乗せて、二人はしばらく放心した。
「……なんか、」先に口を開いたのは暁登だった。
「ん?」
「おれ、確かにセックスで金もらおうとしてましたけど、それはセックスがしたかったからじゃなくて、金が欲しかったからで、こういうことにあんまり興味はなかったんです」
「……」
 答える代わりに、樹生は暁登の背をぽんぽんと叩いた。
「たまるときはあるけど、……ひとりで処理できるからいいや、って」
「うん、」
「でも、岩永さんとするのと、ひとりでするのとじゃ、全然違ってて、」
「うん」
「体温が気持ちいいとか、手の大きさや力強さがたまらなかったりとか、触れている肌とか、髪のくすぐったさとか、そういうの全部ひっくるめて、知って、――なんでみんなセックスしたがるのかが、分かった」
「……うん」
「だから、おれ、は、……この先、どうしていいのか分からなくなって」
「……なんで?」
「自分以外の誰かの肌が恋しいってことは、……ものすごく暴力的な感情だなと思ったから、――あんまり知りたくなかった。もうこの先、ひとりきりじゃ無理だ……」
 その語尾が震えていたので、樹生は暁登のこめかみに唇を押し付けて、髪を撫でた。
 この青年はどうやって生きていくつもりだったのだろうか、と、樹生は思った。
 ひとりで完結できる人生などない。受精の段階ですでに自分でない男と女の存在があるのだ。母親の腹から出てもすぐにひとりで立てるわけではないから、誰かの手に抱かれる。抱かれた記憶をまた誰かに返したり、与えたりして、暮らしていく。
 たった二十歳かそこらで「ひとりきり」なんて言葉の出てくる暁登のことを、哀れに思い、淋しく思い、愛しく思う。樹生は頭の後ろに当てた手で、ぐしゃぐしゃと髪を掻きまわした。



→ 27

← 25



拍手[9回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
«秘密 27]  [HOME]  [秘密 25»
プロフィール
HN:
粟津原栗子
性別:
非公開
自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

****
2022*08*11-21
暑いですね。番外編短編、ちょこっと更新しています。

2021*12*04-2022*03*17
お久しぶりです。短編長編更新。
短編「さきごろのはる」
短編「月の椅子」
短編「みんな嬉しいお菓子の日」
長編「ファンタスティック・ブロウ」
短編「冬の日、林檎真っ赤に熟れて」

2021*08*16-08*19
甘いお菓子のある短編「最善最愛チョコレート」更新。
カウンター
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
最新記事
フリーエリア
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]

Template by wolke4/Photo by 0501