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成人女性を対象とした自作小説を置いています。
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 遠くで雷鳴を聞いた気がして、眠りから浮上した。
 目を開ければそこは見慣れぬ天井で、次の瞬間には「見慣れない」と思ってしまった自分に苦笑いする。ここは樹生の部屋だ。引っ越してもう数カ月は経つ。だというのにそんなことを思うのは、樹生がこの部屋にろくに帰って来てはいないからだった。
 暁登との暮らしを手放し、改めてひとり暮らしを始めてみたものの、樹生にとってこの部屋はあまり「いらない」ものだった。以前に比べて頻繁に早の家に出入りしているし、暁登のアパートにも行く。樹生は淋しがりなので、ひとりの空間、ひとりの時間を持つよりは、そこに誰かがいなくても「この人が存在している」と思えるような場所で過ごす方が好きだった。安心して、落ち着く。自分だけの空間を持つ大切さも分かるけれど、例えば仕事あがりに暁登の部屋に合い鍵で入って、暁登がそこにいなくても暁登が暮らしている空間でごろごろしている、その方が自分という人間に合うと感じている。
 だからこの部屋は本当に仮宿だ。だがその生活に不満を持っているわけではない。とりあえず、いまのところは。
 辺りはほんのりと暗くなりはじめていた。樹生はそっと体を起こす。ブルーグレイの夏用の掛布団をめくると、そこにすっぽりと潜りこんで眠っている恋人の裸体があらわになった。
 樹生に背を向けて、丸くなってすうすうと眠っている。暑くないんだろうかと肌に触れると、さらりと乾いていた。昼間、わざわざクーラーを効かせた部屋で汗まみれになる行為に没頭して、そのまま眠り込んだはずだった。あんなに熱く湿った肌がもう乾いている、その事実に情欲がむくむくと頭をもたげる。髪に触れ、撫でながら、こめかみにキスをする。伝って耳を甘噛みし、頬にまた唇を寄せる。
 ん、と声を漏らして恋人がゆっくりと目を開けた。ごろごろとまた遠くで雷鳴がする。先ほどよりも音が大きいように思う。雨が近いのか。
「……どうした?」
「……」
「淋しいの?」
 眠りから覚めたばかりの、舌足らずに掠れた声で問われる。目覚めなんていちばん自分と外界との境界が危ういときに、樹生のことがいちばんに出たことがとんでもなく嬉しい。たまらなくなって唇を唇で塞ぐ。開いた唇から舌を入れて絡ませると、はじめは戸惑っていた恋人もうっとりと舌を押し付けて来た。
 のしかかりながら空いた手で片方の胸の尖りを探る。摘まんで少し強めに潰すと、暁登は鼻にかかった甘い声を漏らす。キスが気持ちよくてやめられないのに、息が上がって苦しくなったから仕方なく唇を離す。樹生の腕の下でとろりと融けた目をしている恋人は、寝起きを襲われてなにがなんだか分からない、という様子だ。それでも徐々に瞳の焦点が合って来た。
「――あき、起きた?」と目を覗き込んで訊く。太腿で恋人の性器を押してやると、暁登は心底鬱陶しそうな顔をした。
「起きた。――起こしてくれてありがとう」
「どういたしまして」
 あー、と暁登は顔を手のひらで顔を覆い、揉む。太腿の辺りで熱くなり始めている性器に直接手を伸ばすと、そこはみるみる硬く勃起した。
「していい?」
 暁登の手を取って、樹生の性器に触らせる。暁登は「いやだ」と言った。樹生の手から逃れるように体勢を変え、うつぶせになってしまう。樹生は「どうしていやなの」と恋人にぴったりくっついて耳元でささやく。
「――それ、ずるい」
「ずるいって、なにが?」
「あんたの声。……あーもう、起きたらどっかめし行こうって、言ったじゃん」
「でも外、雨になるんじゃないかな」
 応えるようにして再び雷鳴が轟く。部屋の中が急速に暗くなり、やがてばたばたと雨の落ちる音が響き始めた。
 いったん降りはじめれば、それはもうバケツをひっくり返すかのような土砂降りになった。
「ほら」
「すぐ止むよ……」
「なあ、暁登」
 うつぶせた暁登の尻たぶに、樹生の猛った性器を擦りつける。ぬるぬると先走りでぬめる。暁登は戸惑うそぶりを見せたが、やがて樹生が暁登の片足を持ちあげ窄まりをあらわにすると、抵抗らしい抵抗も見せなかった。
 昼間、散々つながった場所に、性器を潜り込ませる。たやすく呑み込んで、そのねっとりとした心地よさに樹生は荒く息を吐く。片足を持ちあげたまま背後から樹生は注挿をはじめる。はじめはゆっくりと、小刻みに揺するように。暁登は枕を引き寄せてそこに顔を埋め、声を必死で我慢していた。
「声、聞かせて」と言うと、「いやだ」とまた言われた。
「……壁が薄い、」
「雨音で聞こえないよ」
 体勢を変え、暁登を膝の上に乗せて後ろから抱きしめる。胸の先はピンと男を誘うように尖っていて、性器はすっかり上を向き、精をたらたらと垂らして結合部分へと垂れていく。
「聞こえないよ」
「――あっ!」
 そのまま前に倒し、獣がつながるような体位で暁登を穿つ。こらえきれなくなった暁登の声が漏れる。暁登が気持ちいいと感じる場所のことならとうに分かっている。そこを性器でこすると、暁登は「やだ、だめっ」と言って太腿を震わせ、次の瞬間にはシーツに射精していた。
 放出でぐったりする体を、樹生は容赦なくむさぼる。雷鳴とどろく土砂降りを安全な屋内で感じ取りながら、今日幾度目かの精を暁登の中に吐いた。



→ 後編



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粟津原栗子
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自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

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