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成人女性を対象とした自作小説を置いています。
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「……めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど、この体勢」
「どうして? すごく興奮する……」
 指の腹でぬるぬると尻の奥を探られる。撫でているだけだった指が境界を超えて潜り込んできた。違和感に目を硬く瞑る。滑りを借りて挿入はスムーズで、鴇田の指一本をまるっと飲み込んでしまった。
「……痛い?」と窺われる。
「平気。……でも違和感がすごい。それ、動かして。上下に差し込んだり抜いたりする感じ」
 暖は頼るものがないのが不安で、結局傍にあった予備の枕を抱いた。誰も触れられないような内腑を鴇田には晒しているんだという感慨で、違和感よりは次第に興奮が勝って来た。鴇田にもそれは伝わっているようで、指の動きは滑らかに、暖を窺って出し入れされる。
「緩んできた……ですよね」
「指、増やしてみて……大丈夫だから」
 束ねられた指が新たなるローションを足されて潜り込んでくる。今度は左右にも動かされた。鴇田の指の腹で掻くように暖の内壁の一点を刺激されて、知らずに身体が跳ねた。唐突に強い電流を流し込まれた感じ。半立ちだった性器がいきなり漲って、鴇田の指を内壁は締め上げる。
「――うっ、……んぅ」
「苦しい? 痛かった?」
「違う。これは……まずいな……」
「まずい?」
「あるってことは知ってたんだけど思いのほかまずい。変になる……」
 身体の力を抜こうと試みる。鴇田の指を含まされている部分がひくひくと蠢いているのが分かる。下腹が性感で痛くてたまらなかった。暖は身を捩って枕に縋る。
 反射的に閉じた足を鴇田は広げ直し、また指をあてがう。今度は三本。もう異物感はなく、鴇田の指をスムーズに受け入れている。抜き差しされて、ばらばらに動かされ、暖はもうまともに口を聞けない。
「すごいよ」と鴇田が呟いた。「三倉さん、入れていい?」
 引き抜かれた指を惜しんで、閉じても閉じきらないような感覚がした。枕を脇に退けて、暖は「いいよ」と答える。
「おいで。……おれも早く欲しい、」
 鴇田は頷き、自身の性器にローションを足して数度扱いた。その先端をぴたりと最奥に押しつける。鴇田の欲望が内壁をずり上げて進んでくる感覚にくらくらした。一点をこすりながら暖の奥へ奥へとじわじわと進んでくる。半分差し込んでとどまり、もう半分を一息に押し込まれる。呼吸が詰まって目の前に火花が散った。回路がショートして激しく痙攣する。信じられない快楽が身体を一瞬にして駆け巡った。まるで落雷だったかのように。
 瞬間的に鴇田をきつく締め上げた。整わない呼吸では、いま起きたことを理解するのに時間がかかった。お互いに荒く息を吐いて、暖は奥にじわりと温かいものが注がれた感覚を味わう。
「……すいません」と鴇田は謝った。「入れただけなんですけど、その、……」
 鴇田が身体を倒して暖を覗き込む。頬を撫でられ、目尻に指を当てられ、涙がこぼれていたことに気づかされた。
「痛い?」
「違う。……おれも多分、いった」
「え? 本当?」
「分かんないけど、出た感じがある……」
 鴇田は身体の間にある暖の性器を確かめた。緩い硬さのそこから腹に体液が散っているのを確認したらしく、指で掬って口にした。やめろと言いたかったがいまさらだ。
「そっか。気持ちいいですか?」
「いい。……まだ出来るならして。これじゃまだ入り口だ」
「動かしていい?」
「いいよ……」
 硬さを取り戻した鴇田の性器が腹の内側をこすり上げる。たまらず暖は嬌声をあげた。足が引きつってうまく動かせないけど、もっともっとと鴇田を求めてしっかりと腰に絡ませる。単調に前後運動するだけだった鴇田は次第に感覚を覚え、ぎりぎりまで引き抜いたり、奥へ一気に押し込んだり、ゆるゆると浅く動かしたりと、暖の反応を窺いながらありとあらゆる動かし方で暖を翻弄する。
「ここ……」
 抜けかかった性器をまた潜らせ、浅い箇所でぐりぐりと押しつけるように動かす。性器が勝手に漲る一点を完全に把握して、そこを攻められた。
「あっ、……あ、やだ、そこっ……」
「ここをこうすると、三倉さんは気持ちがいい」
「あっ……うぅ、んっ、んっ」
 揺さぶられて、暖はもはや喘ぐことしか出来ない。一番いいところを絶え間なく刺激されて、身体の表裏が入れ替わるような快感が常に満ちている。ふと鴇田が身体を起こし、つながった箇所をじっとりと見つめた。指でふちをなぞられ、それすらぞくぞくした。
「……あんま見るな、」
「なんで? あんたの中にいるんだなって、あんたはそれで気持ちがいいんだなって、よく分かる」
「気持ちわるくない?」
「気持ちがいい」
「そっか」
 鴇田に手を伸ばす。求めに応じて鴇田は顔を寄せて来た。キスをする。前も後ろもどこもかしこも鴇田でいっぱいにされていて、しかし不思議と飽和することなく、常に枯渇している。だから求める。
「じゃあ見て。いっぱい触って。……おれとセックスしてるんだって、思い知ってよ」
 がぶりと噛み付くようにキスをされた。注挿の動きが激しくなる。舌を絡ませながら、苦しくて喘ぐ。またキスをする。声が漏れる。
 もうぐずぐずに溶けて、鴇田の肌なのか自分の肌なのか境目の判別がつかない。ただ単純に気持ちがよくて、それはもっと気持ちよくなれる確信があって、どんどん突き詰めていく。
 鴇田は長い性器を夢中で暖に擦り付ける。それを締め上げて、暖も鴇田の肩を掴んで間断なく叫び続ける。いい、とか、もっとして、とか。沸点が近い。
「あっ、鴇田さん、もう、んっ」
「……っ、出る、」
「ん、あ、ああっ――」
 一番奥の、もうこれ以上いけないという場所まで突き上げて、鴇田は射精した。内壁を濡らされる喜びで暖もふたりの間で腹を汚す。痙攣が止まらず、もう薄いのにいくらでも出せそうで、それは怖くなるほどの凄絶な歓喜だった。


 鴇田の上に対面で重なり、うっとりとキスをしているさなかだった。また雨が降り出したようで、窓ガラスを叩く雨音がした。あ、と鴇田が唇を離す。ベッドサイドに設置されている電子時計を見て、「十二時まわった」と呟く。
「今日、誕生日なんです」と言われて驚いた。
「――えっ?」
「旅行の最終日に歳取るなって思ってて、それきり忘れてた」
「言ってくれよ……いや、訊かなかったおれも悪いですけど。プレゼントなんにも用意してないよ」
「貰ってるよ」
「あげた覚えはないですよ」
「好きな人と一緒にいる誕生日ははじめてだなと思ってる。だから、充分」
 戯れに腰を揺すられて、暖は性感に呻く。
「いくつになったんだっけ」と訊いた。
「二十九です」
「若いな」
「そうでもないんだけど。西川や日瀧の方がずっと若いし」
「遅れちゃうけど、なにかプレゼントさせてな」
「別にいいんですけど、……じゃあ、楽しみにしてます。あんたのときもプレゼントさせてください」
「楽しみだな。まだ先だけど。……リクエストある?」
「欲しいもの?」
「うん」
「んー、特には。……あ、安いのでいいので、カメラを持ってみたい」
 意外なリクエストだ。どうして、と訊ねる
「あんたみたいに色々撮ってみるの、楽しそうだと思ったから。スマホのカメラでもいいんですけどね」
「そっか。考えてみるよ」
 くすくすと笑って、またくちづける。鴇田の耳を甘噛みし、見つめあって、鴇田は枕を背に後ろに倒れた。
「動いてください。あんたのリズムを知りたい」
「……じゃあ、見ててね」
「うん」
 官能の宿った目が暖に向けられ、頼りなさを感じながらも腰を動かした。不器用に、ぎこちなく。いいところに当たると腰が砕け、手が滑って姿勢を保っていられなくなる。もう何度出して出されたか分からないものが卑猥な音を立て、鴇田の性器を伝い落ちる。
 鴇田に抱き留められ、身体の位置を反転して暖はシーツに沈む。まだ性感はいくらでも膨れる。もっと出来る。もっとしたい。もっと触りたい。
「旅が終わっちゃうな」と鴇田が呟く。ぱたっと鴇田の汗が頬に落ち、それを掬って舐めた。海のような塩辛さが舌に残る。海なのだろう。この男は、海。
「……キスしてください」
「うん……」
 また舌を絡ませる。手も足もどこまでも絡みもつれあう、こうやっていつまでも触れていたいと切実に欲を訴えながら相手に没頭する。


 カーテンの外側がうっすらと明るくなりはじめたころ、ようやくお互いを手放す気になって、寝転んだ鴇田が言った。
「これを怖がってしない選択をしなくてよかった」
 暖は散々声をあげ、眠気が身体に満ちている。それでも鴇田の声を、発言を、漏らすまいと必死で聞く。
「触れることはやっぱり抵抗があるし、この先も拒んだり受け入れたりの繰り返しかもしれない臆病者だけど、そのたびにいまみたいな選択をしたい。あなたに触れられたらいつ死んでもいいぐらい思ってたけど、違いますね。いつまでも、何度だって触りたい」
「……」
「ずっと前に、何度だって生きたいって言ったあなたの気持ちがようやく分かった。僕も何回だって生まれなおしたいです。喜びだから」
 よかった、と呟いたが、掠れて音にならなかった。けれど恋人の耳には届いたと思う。抱きしめあってチェックアウトの時間ぎりぎりまで寝倒した。



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プロフィール
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粟津原栗子
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非公開
自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

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