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成人女性を対象とした自作小説を置いています。
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 西川からDVDを借りたのだと言うと、鴇田は嫌そうな顔をした。
「やっぱりな。あなたのそういう反応は予想してた」
「なんで西川とつるんでるんですか。どこまで知られてるんだろう……」
「日瀧くん経由で飲んだだけですよ。彼が言わなければ知られてはないと思う。まあ、時間の問題な気もするけどね。前よりあなたの会社に近づいたじゃない? 店の移転先がさ。偶然立ち寄る機会も増えるんじゃないかな」
「そうですけど。……困るな。社長は怒ったりするような人じゃないけど……」
 ぼそぼそと近い距離で囁いて喋る。ベッドサイドのライトだけに絞った部屋で、ふたりで鴇田のベッドに乗り上げている。
 それで? と訊かれた。
「西川くん推薦DVDで学んだわけです。おかげでやり方は理解した」
「これ使う?」鴇田が手にしているのはラブローションのボトルだった。
「うん、使います。最初から使わなくてもいいけどね。とにかく、こうして、」
 暖は鴇田の肩から背に腕をまわした。浴衣越しに肌が触れ合う。風呂に浸かってしっかりと温まった鴇田の肌がみずみずしくて気持ちがいいと思った。鴇田も暖の背に腕をまわす。
「心臓の音聴いて、安心して、肌の感じを確かめましょうって」
「それがDVDに?」
「いやこれはネット情報。セックスに嫌悪感のある人って一定数いるんですよね。それでもパートナーと触れたい人向けのサイトの記事読んだんです。まあ鴇田さんが当てはまるかはちょっと違う気もするんだけど、まずはね」
 言いながら腕に力を込める。鴇田の腕の力も呼応して強まった。しっかりと抱き合い、目を見合う。唇を近づけると鴇田は自ら唇を開き、首を傾け、目を閉じた。
「――なに?」なかなか触れない唇を不思議に思った鴇田が訊ねる。
「いや、ちゃんとおれが教えたことだなあって思って」
「……よそで覚えてくるなって言ったのあんたです」
「分かってる。嬉しいだけ……」
 ようやくキスに至ると、身体じゅうが歓喜に湧いた。こうして触れながらキスをしたいとずっと思っていた。ぬるぬると舌を絡ませながら腕を下ろし、鴇田の手を取る。浴衣の合わせ目から自身の肌へ直接触れるように促すと、鴇田はたどたどしくも帯をほどき、浴衣を肩から外して肌をあらわにさせた。
 首筋に鼻を押しつけ、においを嗅がれる。どうもそこが好きな様子だ。「気になるところ全部触ってみてください」と囁く。ひたひたと確かめるように鴇田の手が肌の上を這い、すべり、撫でていく。
 鎖骨を指で辿り、手で確かめてからは唇を押しつける。それが鴇田の触れ方の基本動作になった。まず触れる。感触を確かめる。それからキスをする。衝動があるのか、時折歯が当たった。「そこ」と鴇田が辿っている胸板を示す。「軽く噛んで、吸ってみてください。キュって」
「……痛くない?」
「気持ちがいいよ。ああ、じゃあおれからやってみましょうか。嫌なら言って」
 鴇田の首筋に鼻を押しつける。そこを舐めると、ぞわぞわする感覚が慣れないのか鴇田は身体を硬くした。だがやめる選択肢を選ばない。あらかた舐めて濡れたそこに歯を軽く当て、思い切り吸った。じゅ、と吸引から離れる音が響く。
「これがマーキング」
「……あんたにもしたい。同じところ」
 そう言うなり鴇田は暖の首筋に唇を這わせる。触れることにあまり抵抗がなくなってきたようだ。歯を当て、徐々に力を込める。ピリッとした痛みが走った。そこから吸引される。尾骶骨の辺りにむず痒いような刺激を感じた。暖の手本と同じ通りに鴇田は離れ、出来た鬱血痕を見て妙に感心していた。
「結構目立つんだ」
「体質にもよるみたいだけどね」
「あんまりやると困りますよね。結構グロテスクだ」
「やっぱり嫌?」
「いえ、触れるってそういう部分も含むはずだからっていう感慨です。もっとしていい?」
「いいよ」
「大浴場には行けなくなりますよ」
「部屋のシャワー使えばいい」
 その答えが気に入ったようで、鴇田はますます暖の肌の上をまさぐる。暖も好きにさせながら鴇田の浴衣を解いていった。お互いが全裸になるころには鴇田は暖の胸の先をしゃぶっていた。舌でなぶって粒が赤く腫れ、硬く尖っていくのが変化として興奮するらしい。
 それに暖も、単純に指導役としての役割を果たせなくなりつつあった。体温はどんどん上昇し、心拍は転がるように鳴る。汗ばむ中ではっきりとした性感が生まれていた。常にやわい電流を流し込まれているかのような身体に時折びりっと強いアンペアで回路が通るときがあり、その度に腹がむず痒くなり、性器はあからさまに発情を訴えて硬く伸びる。
 臍の辺りまでやって来た鴇田が、それに気づくのは当然のことだった。下着を払っているから隠すものもない。鴇田はためらいなくそれに触れて咥えた。ねっとりと熱い口腔に包まれて思わず声が吐息と共に漏れる。
「んっ……鴇田さん、」
 キスマークとは違うコツで、鴇田はそこを強く吸った。頬をすぼめて顔を上下に動かす。こんなことは教えていない、と暖は内心で焦る。強い性感に支配されて足の先まで上手に動かせない。
 しなる性器に鴇田は熱心に唇を寄せる。肩を押しても離れようとせず、口淫は激しくなる一方だ。何度目かに呼んだ名前でようやく鴇田は顔をあげた。真剣に欲情したきつい眼差しに、心臓が唸る。
「良くなかった?」
「いや、いい。……おれにも鴇田さんの触らせて」
 頭の方向を逆にして鴇田の上に四つん這いで重なる。間近で見る鴇田の性器はすらりと長く、破裂しそうに興奮を堪えているのが分かった。
「よかった」と安堵する。
「どうして?」
「おれに触れても怖がられない。興奮してくれてんだなあって分かったから」
 そう言って鴇田の性器を含む。びくりと臀部に力が入ったのが分かった。こうやって互いの性器を刺激し合うことは前にもしているが、あれ一度きりで、時間としては半年以上が経過している。まるっきりはじめてに戻ったような感覚で、でもそれは悪くなかった。
 鴇田もぴちゃぴちゃと音を立てて暖の勃起を愛撫する。暖も顔を上下させて鴇田の性器を刺激した。くぐもった声が次第に尾を引き、下半身の痺れに乗算して目の前の相手の勃起を刺激しあうから、追い詰められているのはふたりとも同じだった。苦味を口の中に感じ、それは鴇田もそうだったと思う。ほぼ同時に吐精した。とろりとした白濁を暖は意識せずに飲みこんでいた。
 息を荒くして脱力している暇もなく、鴇田の手が暖の尻たぶを割った。室温に晒されたそこが鴇田の目にも晒されていると分かって羞恥に湧いた。「待って」と言って鴇田の上からどく。顔を合わせる。鴇田は不満そうな顔をしていた。
「そこはローション使うんだけど、あなたはしなくていいから」
 と言うと鴇田は「なぜ?」と素直に疑問を返した。
「……もしかするとあなたには目にするのも嫌なものの部類かもしれないから。前に青い顔してたし」
「じゃあどうするの?」
「……おれが準備するから、待ってて」
 すると鴇田ははっきりと「嫌だ」と言った。
「僕がしたい。やり方を教えて欲しい。気持ちがいいようにするには、どうするの?」
 あんまりにも真剣に切実な目で言われるので、暖は腹を括った。
「……ローション使って指入れる。いきなりは入らないから、少しずつ。広げたら、入るらしいから」
「体勢は?」
「後ろからが負担がないらしいんだけど、なにされてるか分かんなくて怖いから、前からがいいかな……」
 分かったと頷き、鴇田はボトルを手にする。「封が開いてる」と驚いていた。
「そりゃまあ、開けましたから」
「三倉さんが?」
「自分でやってみたんですよ。どんなもんかなって。でも指の第一関節入れるぐらいが精一杯で諦めた。ひとりじゃなかなかうまく行かない」
「……無理をさせましたね」
「ひとりで予習はやっぱり虚しかったかな。気持ちよさは感じなかったし。ああ、でもこれで引いたりしないでくださいね。教材DVDじゃみんな気持ちよさそうだった。そうなりたい」
「僕もです」
 鴇田は自身のてのひらにローションを垂らし、その冷感と粘性をぬるぬると確かめていたが、暖の身体をベッドに倒すと足を広げさせ、指で触れた。
「……触りにくい。枕ください」と頭上にあった枕を取ると、腰の腰の下にそれを敷き、下半身がまるきり上を向くような体勢にされてしまった。



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粟津原栗子
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自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

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