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成人女性を対象とした自作小説を置いています。
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「入れてくれ……」
 囁いて鴇田の性器を握る。上下に扱くとたまらないのは男も同じで、ぬるぬると先走りでぬめる。だからもうこれを入れられても痛くない。きっとものすごく気持ちがいい。
「僕も分かって来たんだ」と性器を入口にあてがって、鴇田は呟いた。
「三倉さんがどういう風に触れられて、どういう入れ方でどこを引っ掛けて擦れば、気持ちがいいか」
「あっ……ああぁ……――」
 ゆっくりと差し込まれ、内壁を押し上げて鴇田が進んでくる。瞬間的に力んでしまってもなじんで鴇田の形になることをもうお互いが分かっている。膝裏を掴まれ、鴇田は長いストロークで抜き差しをはじめた。押し込むたびに当たる肌が卑猥に音を出す。
 ぎりぎりまで引き抜いて、引っかかりで縁を擦られると、その後への予感でぞくぞくした。
「んっ、鴇田さん、」
「これで」
 浅い所をぐりぐりと刺激され、物足りなくてつま先が揺れる。
「こうされると、あんたは気持ちがいい」
「あっ、ああっ、んっ」
 散々焦らされ、ひと息に押し込まれる。奥までやって来た鴇田を迎合する。内部が締まり、視界が激しく暗転と来光を繰り返す。大きく引き攣った後の痙攣が止まらなかった。
 痺れた下腹を撫で、鴇田が上からこちらを覗き込んで来た。快楽を堪え、けれど喜びで目を弧にして笑っている。
「――気持ちが良かった、よね」
「……ここまで教えたかな、おれは」
 出した体液が鴇田の腹も汚していて、触れあうとにちゃにちゃと粘った。いったばかりで辛い身体もいたわることなく、鴇田は小刻みに腰を動かす。
「基礎を覚えたら復習して応用を」
「ピアノもそうやって覚えた?」
「うん」
「じゃあ許す……」
 鴇田が触れるピアノのように、弦が擦り切れて切れるまで触ってもらえたら幸せだと思った。この身体はいつまでもつのか分からないけれど、触れられるあいだは触れていたい。鴇田がよそのピアノに興味を示さないように、どうかおれにも飽きないで、と思う。
「鴇田さんがよその人を弾くようになっちゃったら、おれは辛くて浮気も出来ない」
 そう漏らすと、鴇田は汗を浮かせた顔を近付けた。
「……って思っちゃうぐらい、重たいやつになっちゃったな……」
「よそに行かないんですね」
「うん。おれ以外を知って欲しくないのは、狭いよなあ」
「いえ、……分かる気がします」
 そう言って鴇田は暖の首筋の裏を舐めた。
「僕はあんたしか知りたくないです。全部あんたで覚えて、全部あんたで知った。未来のことを考えても分からないから仕方がないけど、他はどうとか、知りたいと思わない」
「おれの身体、好き?」
「とても。でもあんたを知らないまま知りたかったことではないです。あんたじゃないなら、知らなくていい。僕にとって触れることは、そういうこと」
「なら、あなたと会えてよかったな……」
 肉の快楽を知らないままの鴇田。それで一生を終えるより、誰かとでもいいから知ってほしかったとはもう思えない。暖が教えた快楽でしか溺れない鴇田は、井の中の蛙なのかもしれない。大海を知らない。されど空の青さを知る。荘子の言葉に誰が後付けしたかまでは知らないが、そういう意味も悪くない。
 暖のことならなんでも知っている。細胞核まで見えてしまうような繊細で根気強い観察で。
 小刻みなリズムのままするキスは気持ちが良かった。角度を何度も変えて互いの口腔を貪る。肉の快楽と精神的な充足を一度に与えられて、暖はもう行き場がない。これ以上どこにも道はなく、ただ恐ろしいほどの深さだけが待っている。
 びくびくと身体を引き攣らせながら鴇田の背を掻く。しがみつくことしか出来ない。息継ぎで唇を離した鴇田は、自身の欲を高めるために体勢を変える。ぐるりと反転してうつぶせにされた。
 いったん引き抜いたものを、背後から押し込まれる。もう挿入になんの障害もない。本格的な注挿に背筋が痺れてたまらず、硬く張り詰めた自身の性器を握りこんだ。
「――あんたはこっちも感じる」
「んんっ」
 押し潰すように内部を揉まれ、蹂躙される。これがちっとも嫌じゃない。いかれていると思うのだけど、鴇田とだから許してしまう。鴇田じゃない誰かとこんなのはあり得なかった。
 鴇田の動きが激しさを増す。暖はそれに合わせて自身を懸命に扱く。シーツに顔を押し付けて、また沸点がちらつく。夢中で擦っていると手を取られ、後ろでまとめられてしまった。
「なんで……」
「触らないで」
「じゃあ鴇田さんが触ってよ……」
「いや、僕は」鴇田は両腕をしっかりと掴むと、腰を大きくスライドさせた。「触らない」
「あっ」
「あんたが一番気持ちがいいところを見たい」
「あっ、やだっ……」
「僕でおかしくなれるならなってほしい――」
 あとはもう追い詰められるだけだった。普段は薄まって存在も分からないような性感を火で炙り、どんどんと濃く煮詰めていく。沸騰してぼこぼこと膨らんで破裂しているのに、もっと見たい、もっと鳴って、と鴇田は火を加え続ける。
 その沸騰は、焦げ付かずにきちんと飲み干された。甘く粘った暖の性感を、鴇田は引き受ける。激しく何度も腰を打ち付けられ、届かない奥を許して、暖は声も出せずに痙攣する。その収縮に鴇田も身体を委ねて、一番奥で射精された。
 鴇田の性器が脈打っているのさえ分かる。たっぷりと注がれて、戒められていた腕が解ける。高く上げていた腰が崩れ、鴇田の性器も抜けた。受け入れていた口から体液が流れ落ちるのが分かる。
 荒い呼吸のまま、痺れた身体を無理に動かして鴇田にひざまずき、先ほどまで自分の中を苛んでいた性器を口に含んだ。
「ん……三倉さん、」
 あえて卑猥な音を立てて、残滓を残らす吸引する。鴇田の手は優しく暖の髪をまさぐった。幹やその下の丸みまで丁寧に舐めて、暖は唇を離す。
「……うん、美味しくない」
 感想を漏らすと鴇田は困った顔で笑った。舌を覗かせて見せると、そこに噛み付くようにしてキスをされる。暖が味わったものを鴇田も味わおうとしているかのようだった。舌を擦り合わせ、唇を押し付けて、ようやく離れる。
 額同士を合わせて、目を見合う。何度見ても真夜中の鴇田の目は暗すぎて怖くなる。底の見えない凪いだ湖を覗き込んでいるかのような恐ろしさがある。しんと静かであるのに情熱が宿っていることもまた、暖を得体の知れない背徳に巻き込む。ぞくぞくする。
 どちらからともなく布団に倒れ込む。身体もびっしょりと濡れているが、シーツも暖の放った精液や体液、ジェルなどで濡れている。鴇田が事後の後処理をしようと枕元のタオルに手を伸ばす。「やってしまった」と苦笑すると、鴇田は怪訝そうな顔でこちらを見た。


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プロフィール
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粟津原栗子
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自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。

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