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成人女性を対象とした自作小説の物置です。
「にいちゃん、それ痛かったよな。―ごめん」
「…いや、全然、もう」
「思いっきりぶったから。本当にごめん。まだ痛い? 腫れてる?」
「いや、そうじゃなくて、……」

 ごめん、と、いいよ。それから、ありがとう。そんなのばかり無駄に繰り返し、男二人でただ突っ立っていた。湯呑を持って戻ってきた主人がそれを笑った。

「お弁当、もうひとつ買ってきてもらえばよかったかな。国見くんの分」
「―あ、いえ俺はもう、行くんで。…その、授業あるし、目的も果たせたんで」
「うん、そう?」
「はい。…あ、本だけ買ってきます。その、図録」
「はは。本人が目の前にいるならサインいれてもらったら?」

 大稀とどんなやり取りをしていたかは分からないが、主人はレジ横の棚から本を一冊取り出すと、レジを打ち始めた。とうに捨ててしまった、かつての展示会の図録。俺が画家だった時の記録。俺が見たくないものを大稀は求めていった。
 こんなに恥ずかしかったこともない。サインをくれと困ったことは言われなかったが、本を受け取った大稀はあろうことか俺の方を向き、満足げな顔を見せた。

「にいちゃん、本当に会えて良かったよ。ごめん、ありがとう」
「だからもういいよ」
「そうかもしんないけどさ。…はは、」

 ずっと眺めていたら中毒でも起こしそうなほど、強く明るい笑顔だった。それからきびきびと主人に頭を下げ、あっという間に脇を通り抜ける。いつだって大稀の行動は突然で、俺は全然ついていけないまま事が過ぎる。

「―あ、そうだ」

 去り際、大稀は長い脚を唐突に止めて振り向いた。鞄から派手な色のDMを取り出し、一枚を主人に、もう一枚を俺に寄越した。

「あ、M美大の卒展? あれ、4年生なのか国見くん」
「いえ、俺は短大の方なんで2年なんですけど。まあ、展示はみんな同じ時期に、やります。短期部2年も本学4年も、院も通信もみんな混ざって」
「そうか、もうそんな時期か。国見くんは何科?」
「デザインです。良ければ、ですけど」

 目は主人を見ている。でもその声の先は明らかに、俺に向けられていた。

「待ってます」
「――」

 じゃあこれで。そして風の速さで大稀は扉を抜けて行った。
 同じことを思ったのか、主人が「台風みたいな子だねえ、毎回」と漏らした。

「懐かしいな。学生時代の遊川くんみたい」
「ええ!?」
「卒展かあ。あっちもこっちもシーズンだね。ここ数年行ってないけど、行こうかな、僕は」

 そうして俺を見る。ポップなカラーのDMはもう、大稀からの挑戦状に間違いなかった。



  



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粟津原栗子
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非公開
自己紹介:
オリジナル小説(BL)書いてます。苦手な方は回れ右。
鶯太郎くんののんびり新生活「おやすみなさい、また明日。」17時にのんびり更新中。

****
20120404:樹海カップリング投票始めました。12時間置くと再び投票できます。10月5日までの半年間。コメント及び投票結果は今のところ私(管理人)しか見れません。遊んでやってくださいw
他、こここうしてほしいとかこれこうがいいとかご意見あればメールフォームよりお寄せください。よろしくお願いしますー

20120329:のんびりまったりやる気ない(そんなこともない)感じで新しいお話始めました。良ければー
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