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「……めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど、この体勢」
「どうして? すごく興奮する……」
指の腹でぬるぬると尻の奥を探られる。撫でているだけだった指が境界を超えて潜り込んできた。違和感に目を硬く瞑る。滑りを借りて挿入はスムーズで、鴇田の指一本をまるっと飲み込んでしまった。
「……痛い?」と窺われる。
「平気。……でも違和感がすごい。それ、動かして。上下に差し込んだり抜いたりする感じ」
暖は頼るものがないのが不安で、結局傍にあった予備の枕を抱いた。誰も触れられないような内腑を鴇田には晒しているんだという感慨で、違和感よりは次第に興奮が勝って来た。鴇田にもそれは伝わっているようで、指の動きは滑らかに、暖を窺って出し入れされる。
「緩んできた……ですよね」
「指、増やしてみて……大丈夫だから」
束ねられた指が新たなるローションを足されて潜り込んでくる。今度は左右にも動かされた。鴇田の指の腹で掻くように暖の内壁の一点を刺激されて、知らずに身体が跳ねた。唐突に強い電流を流し込まれた感じ。半立ちだった性器がいきなり漲って、鴇田の指を内壁は締め上げる。
「――うっ、……んぅ」
「苦しい? 痛かった?」
「違う。これは……まずいな……」
「まずい?」
「あるってことは知ってたんだけど思いのほかまずい。変になる……」
身体の力を抜こうと試みる。鴇田の指を含まされている部分がひくひくと蠢いているのが分かる。下腹が性感で痛くてたまらなかった。暖は身を捩って枕に縋る。
反射的に閉じた足を鴇田は広げ直し、また指をあてがう。今度は三本。もう異物感はなく、鴇田の指をスムーズに受け入れている。抜き差しされて、ばらばらに動かされ、暖はもうまともに口を聞けない。
「すごいよ」と鴇田が呟いた。「三倉さん、入れていい?」
引き抜かれた指を惜しんで、閉じても閉じきらないような感覚がした。枕を脇に退けて、暖は「いいよ」と答える。
「おいで。……おれも早く欲しい、」
鴇田は頷き、自身の性器にローションを足して数度扱いた。その先端をぴたりと最奥に押しつける。鴇田の欲望が内壁をずり上げて進んでくる感覚にくらくらした。一点をこすりながら暖の奥へ奥へとじわじわと進んでくる。半分差し込んでとどまり、もう半分を一息に押し込まれる。呼吸が詰まって目の前に火花が散った。回路がショートして激しく痙攣する。信じられない快楽が身体を一瞬にして駆け巡った。まるで落雷だったかのように。
瞬間的に鴇田をきつく締め上げた。整わない呼吸では、いま起きたことを理解するのに時間がかかった。お互いに荒く息を吐いて、暖は奥にじわりと温かいものが注がれた感覚を味わう。
「……すいません」と鴇田は謝った。「入れただけなんですけど、その、……」
鴇田が身体を倒して暖を覗き込む。頬を撫でられ、目尻に指を当てられ、涙がこぼれていたことに気づかされた。
「痛い?」
「違う。……おれも多分、いった」
「え? 本当?」
「分かんないけど、出た感じがある……」
鴇田は身体の間にある暖の性器を確かめた。緩い硬さのそこから腹に体液が散っているのを確認したらしく、指で掬って口にした。やめろと言いたかったがいまさらだ。
「そっか。気持ちいいですか?」
「いい。……まだ出来るならして。これじゃまだ入り口だ」
「動かしていい?」
「いいよ……」
硬さを取り戻した鴇田の性器が腹の内側をこすり上げる。たまらず暖は嬌声をあげた。足が引きつってうまく動かせないけど、もっともっとと鴇田を求めてしっかりと腰に絡ませる。単調に前後運動するだけだった鴇田は次第に感覚を覚え、ぎりぎりまで引き抜いたり、奥へ一気に押し込んだり、ゆるゆると浅く動かしたりと、暖の反応を窺いながらありとあらゆる動かし方で暖を翻弄する。
「ここ……」
抜けかかった性器をまた潜らせ、浅い箇所でぐりぐりと押しつけるように動かす。性器が勝手に漲る一点を完全に把握して、そこを攻められた。
「あっ、……あ、やだ、そこっ……」
「ここをこうすると、三倉さんは気持ちがいい」
「あっ……うぅ、んっ、んっ」
揺さぶられて、暖はもはや喘ぐことしか出来ない。一番いいところを絶え間なく刺激されて、身体の表裏が入れ替わるような快感が常に満ちている。ふと鴇田が身体を起こし、つながった箇所をじっとりと見つめた。指でふちをなぞられ、それすらぞくぞくした。
「……あんま見るな、」
「なんで? あんたの中にいるんだなって、あんたはそれで気持ちがいいんだなって、よく分かる」
「気持ちわるくない?」
「気持ちがいい」
「そっか」
鴇田に手を伸ばす。求めに応じて鴇田は顔を寄せて来た。キスをする。前も後ろもどこもかしこも鴇田でいっぱいにされていて、しかし不思議と飽和することなく、常に枯渇している。だから求める。
「じゃあ見て。いっぱい触って。……おれとセックスしてるんだって、思い知ってよ」
がぶりと噛み付くようにキスをされた。注挿の動きが激しくなる。舌を絡ませながら、苦しくて喘ぐ。またキスをする。声が漏れる。
もうぐずぐずに溶けて、鴇田の肌なのか自分の肌なのか境目の判別がつかない。ただ単純に気持ちがよくて、それはもっと気持ちよくなれる確信があって、どんどん突き詰めていく。
鴇田は長い性器を夢中で暖に擦り付ける。それを締め上げて、暖も鴇田の肩を掴んで間断なく叫び続ける。いい、とか、もっとして、とか。沸点が近い。
「あっ、鴇田さん、もう、んっ」
「……っ、出る、」
「ん、あ、ああっ――」
一番奥の、もうこれ以上いけないという場所まで突き上げて、鴇田は射精した。内壁を濡らされる喜びで暖もふたりの間で腹を汚す。痙攣が止まらず、もう薄いのにいくらでも出せそうで、それは怖くなるほどの凄絶な歓喜だった。
「どうして? すごく興奮する……」
指の腹でぬるぬると尻の奥を探られる。撫でているだけだった指が境界を超えて潜り込んできた。違和感に目を硬く瞑る。滑りを借りて挿入はスムーズで、鴇田の指一本をまるっと飲み込んでしまった。
「……痛い?」と窺われる。
「平気。……でも違和感がすごい。それ、動かして。上下に差し込んだり抜いたりする感じ」
暖は頼るものがないのが不安で、結局傍にあった予備の枕を抱いた。誰も触れられないような内腑を鴇田には晒しているんだという感慨で、違和感よりは次第に興奮が勝って来た。鴇田にもそれは伝わっているようで、指の動きは滑らかに、暖を窺って出し入れされる。
「緩んできた……ですよね」
「指、増やしてみて……大丈夫だから」
束ねられた指が新たなるローションを足されて潜り込んでくる。今度は左右にも動かされた。鴇田の指の腹で掻くように暖の内壁の一点を刺激されて、知らずに身体が跳ねた。唐突に強い電流を流し込まれた感じ。半立ちだった性器がいきなり漲って、鴇田の指を内壁は締め上げる。
「――うっ、……んぅ」
「苦しい? 痛かった?」
「違う。これは……まずいな……」
「まずい?」
「あるってことは知ってたんだけど思いのほかまずい。変になる……」
身体の力を抜こうと試みる。鴇田の指を含まされている部分がひくひくと蠢いているのが分かる。下腹が性感で痛くてたまらなかった。暖は身を捩って枕に縋る。
反射的に閉じた足を鴇田は広げ直し、また指をあてがう。今度は三本。もう異物感はなく、鴇田の指をスムーズに受け入れている。抜き差しされて、ばらばらに動かされ、暖はもうまともに口を聞けない。
「すごいよ」と鴇田が呟いた。「三倉さん、入れていい?」
引き抜かれた指を惜しんで、閉じても閉じきらないような感覚がした。枕を脇に退けて、暖は「いいよ」と答える。
「おいで。……おれも早く欲しい、」
鴇田は頷き、自身の性器にローションを足して数度扱いた。その先端をぴたりと最奥に押しつける。鴇田の欲望が内壁をずり上げて進んでくる感覚にくらくらした。一点をこすりながら暖の奥へ奥へとじわじわと進んでくる。半分差し込んでとどまり、もう半分を一息に押し込まれる。呼吸が詰まって目の前に火花が散った。回路がショートして激しく痙攣する。信じられない快楽が身体を一瞬にして駆け巡った。まるで落雷だったかのように。
瞬間的に鴇田をきつく締め上げた。整わない呼吸では、いま起きたことを理解するのに時間がかかった。お互いに荒く息を吐いて、暖は奥にじわりと温かいものが注がれた感覚を味わう。
「……すいません」と鴇田は謝った。「入れただけなんですけど、その、……」
鴇田が身体を倒して暖を覗き込む。頬を撫でられ、目尻に指を当てられ、涙がこぼれていたことに気づかされた。
「痛い?」
「違う。……おれも多分、いった」
「え? 本当?」
「分かんないけど、出た感じがある……」
鴇田は身体の間にある暖の性器を確かめた。緩い硬さのそこから腹に体液が散っているのを確認したらしく、指で掬って口にした。やめろと言いたかったがいまさらだ。
「そっか。気持ちいいですか?」
「いい。……まだ出来るならして。これじゃまだ入り口だ」
「動かしていい?」
「いいよ……」
硬さを取り戻した鴇田の性器が腹の内側をこすり上げる。たまらず暖は嬌声をあげた。足が引きつってうまく動かせないけど、もっともっとと鴇田を求めてしっかりと腰に絡ませる。単調に前後運動するだけだった鴇田は次第に感覚を覚え、ぎりぎりまで引き抜いたり、奥へ一気に押し込んだり、ゆるゆると浅く動かしたりと、暖の反応を窺いながらありとあらゆる動かし方で暖を翻弄する。
「ここ……」
抜けかかった性器をまた潜らせ、浅い箇所でぐりぐりと押しつけるように動かす。性器が勝手に漲る一点を完全に把握して、そこを攻められた。
「あっ、……あ、やだ、そこっ……」
「ここをこうすると、三倉さんは気持ちがいい」
「あっ……うぅ、んっ、んっ」
揺さぶられて、暖はもはや喘ぐことしか出来ない。一番いいところを絶え間なく刺激されて、身体の表裏が入れ替わるような快感が常に満ちている。ふと鴇田が身体を起こし、つながった箇所をじっとりと見つめた。指でふちをなぞられ、それすらぞくぞくした。
「……あんま見るな、」
「なんで? あんたの中にいるんだなって、あんたはそれで気持ちがいいんだなって、よく分かる」
「気持ちわるくない?」
「気持ちがいい」
「そっか」
鴇田に手を伸ばす。求めに応じて鴇田は顔を寄せて来た。キスをする。前も後ろもどこもかしこも鴇田でいっぱいにされていて、しかし不思議と飽和することなく、常に枯渇している。だから求める。
「じゃあ見て。いっぱい触って。……おれとセックスしてるんだって、思い知ってよ」
がぶりと噛み付くようにキスをされた。注挿の動きが激しくなる。舌を絡ませながら、苦しくて喘ぐ。またキスをする。声が漏れる。
もうぐずぐずに溶けて、鴇田の肌なのか自分の肌なのか境目の判別がつかない。ただ単純に気持ちがよくて、それはもっと気持ちよくなれる確信があって、どんどん突き詰めていく。
鴇田は長い性器を夢中で暖に擦り付ける。それを締め上げて、暖も鴇田の肩を掴んで間断なく叫び続ける。いい、とか、もっとして、とか。沸点が近い。
「あっ、鴇田さん、もう、んっ」
「……っ、出る、」
「ん、あ、ああっ――」
一番奥の、もうこれ以上いけないという場所まで突き上げて、鴇田は射精した。内壁を濡らされる喜びで暖もふたりの間で腹を汚す。痙攣が止まらず、もう薄いのにいくらでも出せそうで、それは怖くなるほどの凄絶な歓喜だった。
鴇田の上に対面で重なり、うっとりとキスをしているさなかだった。また雨が降り出したようで、窓ガラスを叩く雨音がした。あ、と鴇田が唇を離す。ベッドサイドに設置されている電子時計を見て、「十二時まわった」と呟く。
「今日、誕生日なんです」と言われて驚いた。
「――えっ?」
「旅行の最終日に歳取るなって思ってて、それきり忘れてた」
「言ってくれよ……いや、訊かなかったおれも悪いですけど。プレゼントなんにも用意してないよ」
「貰ってるよ」
「あげた覚えはないですよ」
「好きな人と一緒にいる誕生日ははじめてだなと思ってる。だから、充分」
戯れに腰を揺すられて、暖は性感に呻く。
「いくつになったんだっけ」と訊いた。
「二十九です」
「若いな」
「そうでもないんだけど。西川や日瀧の方がずっと若いし」
「遅れちゃうけど、なにかプレゼントさせてな」
「別にいいんですけど、……じゃあ、楽しみにしてます。あんたのときもプレゼントさせてください」
「楽しみだな。まだ先だけど。……リクエストある?」
「欲しいもの?」
「うん」
「んー、特には。……あ、安いのでいいので、カメラを持ってみたい」
意外なリクエストだ。どうして、と訊ねる
「あんたみたいに色々撮ってみるの、楽しそうだと思ったから。スマホのカメラでもいいんですけどね」
「そっか。考えてみるよ」
くすくすと笑って、またくちづける。鴇田の耳を甘噛みし、見つめあって、鴇田は枕を背に後ろに倒れた。
「動いてください。あんたのリズムを知りたい」
「……じゃあ、見ててね」
「うん」
官能の宿った目が暖に向けられ、頼りなさを感じながらも腰を動かした。不器用に、ぎこちなく。いいところに当たると腰が砕け、手が滑って姿勢を保っていられなくなる。もう何度出して出されたか分からないものが卑猥な音を立て、鴇田の性器を伝い落ちる。
鴇田に抱き留められ、身体の位置を反転して暖はシーツに沈む。まだ性感はいくらでも膨れる。もっと出来る。もっとしたい。もっと触りたい。
「旅が終わっちゃうな」と鴇田が呟く。ぱたっと鴇田の汗が頬に落ち、それを掬って舐めた。海のような塩辛さが舌に残る。海なのだろう。この男は、海。
「……キスしてください」
「うん……」
また舌を絡ませる。手も足もどこまでも絡みもつれあう、こうやっていつまでも触れていたいと切実に欲を訴えながら相手に没頭する。
カーテンの外側がうっすらと明るくなりはじめたころ、ようやくお互いを手放す気になって、寝転んだ鴇田が言った。
「これを怖がってしない選択をしなくてよかった」
暖は散々声をあげ、眠気が身体に満ちている。それでも鴇田の声を、発言を、漏らすまいと必死で聞く。
「触れることはやっぱり抵抗があるし、この先も拒んだり受け入れたりの繰り返しかもしれない臆病者だけど、そのたびにいまみたいな選択をしたい。あなたに触れられたらいつ死んでもいいぐらい思ってたけど、違いますね。いつまでも、何度だって触りたい」
「……」
「ずっと前に、何度だって生きたいって言ったあなたの気持ちがようやく分かった。僕も何回だって生まれなおしたいです。喜びだから」
よかった、と呟いたが、掠れて音にならなかった。けれど恋人の耳には届いたと思う。抱きしめあってチェックアウトの時間ぎりぎりまで寝倒した。
← 15
→ 17
「今日、誕生日なんです」と言われて驚いた。
「――えっ?」
「旅行の最終日に歳取るなって思ってて、それきり忘れてた」
「言ってくれよ……いや、訊かなかったおれも悪いですけど。プレゼントなんにも用意してないよ」
「貰ってるよ」
「あげた覚えはないですよ」
「好きな人と一緒にいる誕生日ははじめてだなと思ってる。だから、充分」
戯れに腰を揺すられて、暖は性感に呻く。
「いくつになったんだっけ」と訊いた。
「二十九です」
「若いな」
「そうでもないんだけど。西川や日瀧の方がずっと若いし」
「遅れちゃうけど、なにかプレゼントさせてな」
「別にいいんですけど、……じゃあ、楽しみにしてます。あんたのときもプレゼントさせてください」
「楽しみだな。まだ先だけど。……リクエストある?」
「欲しいもの?」
「うん」
「んー、特には。……あ、安いのでいいので、カメラを持ってみたい」
意外なリクエストだ。どうして、と訊ねる
「あんたみたいに色々撮ってみるの、楽しそうだと思ったから。スマホのカメラでもいいんですけどね」
「そっか。考えてみるよ」
くすくすと笑って、またくちづける。鴇田の耳を甘噛みし、見つめあって、鴇田は枕を背に後ろに倒れた。
「動いてください。あんたのリズムを知りたい」
「……じゃあ、見ててね」
「うん」
官能の宿った目が暖に向けられ、頼りなさを感じながらも腰を動かした。不器用に、ぎこちなく。いいところに当たると腰が砕け、手が滑って姿勢を保っていられなくなる。もう何度出して出されたか分からないものが卑猥な音を立て、鴇田の性器を伝い落ちる。
鴇田に抱き留められ、身体の位置を反転して暖はシーツに沈む。まだ性感はいくらでも膨れる。もっと出来る。もっとしたい。もっと触りたい。
「旅が終わっちゃうな」と鴇田が呟く。ぱたっと鴇田の汗が頬に落ち、それを掬って舐めた。海のような塩辛さが舌に残る。海なのだろう。この男は、海。
「……キスしてください」
「うん……」
また舌を絡ませる。手も足もどこまでも絡みもつれあう、こうやっていつまでも触れていたいと切実に欲を訴えながら相手に没頭する。
カーテンの外側がうっすらと明るくなりはじめたころ、ようやくお互いを手放す気になって、寝転んだ鴇田が言った。
「これを怖がってしない選択をしなくてよかった」
暖は散々声をあげ、眠気が身体に満ちている。それでも鴇田の声を、発言を、漏らすまいと必死で聞く。
「触れることはやっぱり抵抗があるし、この先も拒んだり受け入れたりの繰り返しかもしれない臆病者だけど、そのたびにいまみたいな選択をしたい。あなたに触れられたらいつ死んでもいいぐらい思ってたけど、違いますね。いつまでも、何度だって触りたい」
「……」
「ずっと前に、何度だって生きたいって言ったあなたの気持ちがようやく分かった。僕も何回だって生まれなおしたいです。喜びだから」
よかった、と呟いたが、掠れて音にならなかった。けれど恋人の耳には届いたと思う。抱きしめあってチェックアウトの時間ぎりぎりまで寝倒した。
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西川からDVDを借りたのだと言うと、鴇田は嫌そうな顔をした。
「やっぱりな。あなたのそういう反応は予想してた」
「なんで西川とつるんでるんですか。どこまで知られてるんだろう……」
「日瀧くん経由で飲んだだけですよ。彼が言わなければ知られてはないと思う。まあ、時間の問題な気もするけどね。前よりあなたの会社に近づいたじゃない? 店の移転先がさ。偶然立ち寄る機会も増えるんじゃないかな」
「そうですけど。……困るな。社長は怒ったりするような人じゃないけど……」
ぼそぼそと近い距離で囁いて喋る。ベッドサイドのライトだけに絞った部屋で、ふたりで鴇田のベッドに乗り上げている。
それで? と訊かれた。
「西川くん推薦DVDで学んだわけです。おかげでやり方は理解した」
「これ使う?」鴇田が手にしているのはラブローションのボトルだった。
「うん、使います。最初から使わなくてもいいけどね。とにかく、こうして、」
暖は鴇田の肩から背に腕をまわした。浴衣越しに肌が触れ合う。風呂に浸かってしっかりと温まった鴇田の肌がみずみずしくて気持ちがいいと思った。鴇田も暖の背に腕をまわす。
「心臓の音聴いて、安心して、肌の感じを確かめましょうって」
「それがDVDに?」
「いやこれはネット情報。セックスに嫌悪感のある人って一定数いるんですよね。それでもパートナーと触れたい人向けのサイトの記事読んだんです。まあ鴇田さんが当てはまるかはちょっと違う気もするんだけど、まずはね」
言いながら腕に力を込める。鴇田の腕の力も呼応して強まった。しっかりと抱き合い、目を見合う。唇を近づけると鴇田は自ら唇を開き、首を傾け、目を閉じた。
「――なに?」なかなか触れない唇を不思議に思った鴇田が訊ねる。
「いや、ちゃんとおれが教えたことだなあって思って」
「……よそで覚えてくるなって言ったのあんたです」
「分かってる。嬉しいだけ……」
ようやくキスに至ると、身体じゅうが歓喜に湧いた。こうして触れながらキスをしたいとずっと思っていた。ぬるぬると舌を絡ませながら腕を下ろし、鴇田の手を取る。浴衣の合わせ目から自身の肌へ直接触れるように促すと、鴇田はたどたどしくも帯をほどき、浴衣を肩から外して肌をあらわにさせた。
首筋に鼻を押しつけ、においを嗅がれる。どうもそこが好きな様子だ。「気になるところ全部触ってみてください」と囁く。ひたひたと確かめるように鴇田の手が肌の上を這い、すべり、撫でていく。
鎖骨を指で辿り、手で確かめてからは唇を押しつける。それが鴇田の触れ方の基本動作になった。まず触れる。感触を確かめる。それからキスをする。衝動があるのか、時折歯が当たった。「そこ」と鴇田が辿っている胸板を示す。「軽く噛んで、吸ってみてください。キュって」
「……痛くない?」
「気持ちがいいよ。ああ、じゃあおれからやってみましょうか。嫌なら言って」
鴇田の首筋に鼻を押しつける。そこを舐めると、ぞわぞわする感覚が慣れないのか鴇田は身体を硬くした。だがやめる選択肢を選ばない。あらかた舐めて濡れたそこに歯を軽く当て、思い切り吸った。じゅ、と吸引から離れる音が響く。
「これがマーキング」
「……あんたにもしたい。同じところ」
そう言うなり鴇田は暖の首筋に唇を這わせる。触れることにあまり抵抗がなくなってきたようだ。歯を当て、徐々に力を込める。ピリッとした痛みが走った。そこから吸引される。尾骶骨の辺りにむず痒いような刺激を感じた。暖の手本と同じ通りに鴇田は離れ、出来た鬱血痕を見て妙に感心していた。
「結構目立つんだ」
「体質にもよるみたいだけどね」
「あんまりやると困りますよね。結構グロテスクだ」
「やっぱり嫌?」
「いえ、触れるってそういう部分も含むはずだからっていう感慨です。もっとしていい?」
「いいよ」
「大浴場には行けなくなりますよ」
「部屋のシャワー使えばいい」
その答えが気に入ったようで、鴇田はますます暖の肌の上をまさぐる。暖も好きにさせながら鴇田の浴衣を解いていった。お互いが全裸になるころには鴇田は暖の胸の先をしゃぶっていた。舌でなぶって粒が赤く腫れ、硬く尖っていくのが変化として興奮するらしい。
それに暖も、単純に指導役としての役割を果たせなくなりつつあった。体温はどんどん上昇し、心拍は転がるように鳴る。汗ばむ中ではっきりとした性感が生まれていた。常にやわい電流を流し込まれているかのような身体に時折びりっと強いアンペアで回路が通るときがあり、その度に腹がむず痒くなり、性器はあからさまに発情を訴えて硬く伸びる。
臍の辺りまでやって来た鴇田が、それに気づくのは当然のことだった。下着を払っているから隠すものもない。鴇田はためらいなくそれに触れて咥えた。ねっとりと熱い口腔に包まれて思わず声が吐息と共に漏れる。
「んっ……鴇田さん、」
キスマークとは違うコツで、鴇田はそこを強く吸った。頬をすぼめて顔を上下に動かす。こんなことは教えていない、と暖は内心で焦る。強い性感に支配されて足の先まで上手に動かせない。
しなる性器に鴇田は熱心に唇を寄せる。肩を押しても離れようとせず、口淫は激しくなる一方だ。何度目かに呼んだ名前でようやく鴇田は顔をあげた。真剣に欲情したきつい眼差しに、心臓が唸る。
「良くなかった?」
「いや、いい。……おれにも鴇田さんの触らせて」
頭の方向を逆にして鴇田の上に四つん這いで重なる。間近で見る鴇田の性器はすらりと長く、破裂しそうに興奮を堪えているのが分かった。
「よかった」と安堵する。
「どうして?」
「おれに触れても怖がられない。興奮してくれてんだなあって分かったから」
そう言って鴇田の性器を含む。びくりと臀部に力が入ったのが分かった。こうやって互いの性器を刺激し合うことは前にもしているが、あれ一度きりで、時間としては半年以上が経過している。まるっきりはじめてに戻ったような感覚で、でもそれは悪くなかった。
鴇田もぴちゃぴちゃと音を立てて暖の勃起を愛撫する。暖も顔を上下させて鴇田の性器を刺激した。くぐもった声が次第に尾を引き、下半身の痺れに乗算して目の前の相手の勃起を刺激しあうから、追い詰められているのはふたりとも同じだった。苦味を口の中に感じ、それは鴇田もそうだったと思う。ほぼ同時に吐精した。とろりとした白濁を暖は意識せずに飲みこんでいた。
息を荒くして脱力している暇もなく、鴇田の手が暖の尻たぶを割った。室温に晒されたそこが鴇田の目にも晒されていると分かって羞恥に湧いた。「待って」と言って鴇田の上からどく。顔を合わせる。鴇田は不満そうな顔をしていた。
「そこはローション使うんだけど、あなたはしなくていいから」
と言うと鴇田は「なぜ?」と素直に疑問を返した。
「……もしかするとあなたには目にするのも嫌なものの部類かもしれないから。前に青い顔してたし」
「じゃあどうするの?」
「……おれが準備するから、待ってて」
すると鴇田ははっきりと「嫌だ」と言った。
「僕がしたい。やり方を教えて欲しい。気持ちがいいようにするには、どうするの?」
あんまりにも真剣に切実な目で言われるので、暖は腹を括った。
「……ローション使って指入れる。いきなりは入らないから、少しずつ。広げたら、入るらしいから」
「体勢は?」
「後ろからが負担がないらしいんだけど、なにされてるか分かんなくて怖いから、前からがいいかな……」
分かったと頷き、鴇田はボトルを手にする。「封が開いてる」と驚いていた。
「そりゃまあ、開けましたから」
「三倉さんが?」
「自分でやってみたんですよ。どんなもんかなって。でも指の第一関節入れるぐらいが精一杯で諦めた。ひとりじゃなかなかうまく行かない」
「……無理をさせましたね」
「ひとりで予習はやっぱり虚しかったかな。気持ちよさは感じなかったし。ああ、でもこれで引いたりしないでくださいね。教材DVDじゃみんな気持ちよさそうだった。そうなりたい」
「僕もです」
鴇田は自身のてのひらにローションを垂らし、その冷感と粘性をぬるぬると確かめていたが、暖の身体をベッドに倒すと足を広げさせ、指で触れた。
「……触りにくい。枕ください」と頭上にあった枕を取ると、腰の腰の下にそれを敷き、下半身がまるきり上を向くような体勢にされてしまった。
← 14
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海鮮定食は美味しかった。少なくとも昨夜の食事よりもはるかに味がした。腹を膨らませたあとは運転を交代してもう少し南下した。カーナビは隣県を超えている。適当なところで車を停めて海岸でも歩こうかと話したが、昨日と同様に雨が降り出したので海の見える堤防に車を停めて荒れる海や雨音をミュージックにして眺める。
どおん、どおん、と打ち寄せる波音が地の奥底から響いていた。時折白い鳥が慌てたように飛んでいく。
平日のこんな雨の日だからか、周辺に停まる車は一台もなかった。このまま暖がアクセルをふかして海に突っ込んだら心中だなあ、とどうでもいいことを想像した。一緒に死ねば満足するだろうか。しないだろうな、とすぐに打ち消す。だって鴇田にはこんなにも触れきっていない。身体の期限を迎える前にしたいことをほとんどなにも消費出来ていないのに、身体の期限を自ら迎えるなんてばかばかしい。
ポケットからカメラを取り出し、目の前の鈍色の海を撮った。鴇田が怪訝な顔をし、「なにかありました?」と訊く。暖は首を振った。
「ただの記録。ここまで私は西に来ましたよ、っていう」
「三倉さんって意外と出不精ですよね。九州も行ったことないんでしたっけ」
「ない。四国もない。北海道や沖縄なんてもってのほか。ああでも、関東や東京都内はよく動いてんですよ。三宅島行ったことあるし」
「都内だなあ」鴇田が苦笑する。
「学生の貧乏旅行で行ったんです。友達がそこの民宿でバイトやるから来いよって誘ってくれました。島までは船だったんだけど、船の底に男女雑魚寝で敷き詰められてさ。いまもああなのかな? よく間違いが起こらなかったもんだと思う。何年後かで噴火になってびっくりした」
「ああ、ありましたね。全島避難でしたっけ」
「そう。あれきりでずいぶん時間が経ちましたね。まあそういうわけで都内なら詳しいですよ、わりとね」
「南下はしたことあるってことですよね」
「うん。こんなに西に来たのははじめて。そうは言っても鴇田さんみたいに激しく南下してるわけじゃないですけど」
「オーストラリアのことですか?」
「もっと南下してる?」
「いえ、あそこが僕の最南端」
どろどろと遠くで音がする。雷鳴に似ているが海鳴りの音だ。
「僕だってあんなに急に南下するとは思ってなかったんです」と鴇田は言った。
「でも絶対に恋を諦めないといけないと思ったから。要は逃げたんだ」
「……」
「恋はイコールで回避すべきものだったんです。僕にとっては。そうやって誰にも触れないで生きていくしかないと思っていたので。そうじゃないと僕は僕じゃなくなる気がして。他人を混ぜることは、とてつもなく怖い」
「……いま、鴇田さんは鴇田さんじゃない?」
「よく分からない。……地図見て南極大陸が自然とちらつくような土地まで行ったとき、僕は心の底からほっとしたけど、ここまで来たらもう会えないぞって思ったけど、……それでもどこかで猛烈に淋しかった。だから色々あっていまあんたがこういう距離にいて」
鴇田はこちらを向いた。
「嬉しいのか、淋しいのかも、やっぱりはっきりしない。どっちにも振れる。逃げたいのか、逃げたら後悔するのか、分からないんだ」
ばらばらっと音がして雨粒がとりわけ強く車を叩いた。海風に煽られて雨が一定しない。もしくはこれは波しぶきなのかもしれなくて、なにもかもが不明瞭だった。
「昨日はすいませんでした」
鴇田は謝った。
「……鴇田さんわるくないでしょう。誰もわるくない」
「でも僕が気にして落ち込んだから、あんたを不愉快な思いにさせてしまったことは確か。謝らずに意地張ってさっさと帰って逃げちゃう手もあったんだけど、それはやっぱり嫌だと思ったし。僕は結局のところ、あんたから逃げ切るつもりはない。あんたをこれだけ好きになってしまったんだから、逃げるとか怖いとかぐだぐだ考える前に触れてみればよかったと思います。けれど頭の中でそう思っても、身体は自然と逃げる。そういう性なのが僕だから、面倒くさいですよね」
「……確かに面倒かもしれない」
「……」
「でもあなたひとりで結論付けるのは早い。悩むんだったらおれも混ぜて。そういう仲なんだよ……」
また波が打ち付け、振動が伝わる。鴇田が身動いだ。
「運転代わりましょうか。そろそろ宿に戻らないと」
「ああ」
もっと言葉にすべきで、だが見つからず、うまくコメント出来ないまま座席を入れ替えて車は発進する。海沿いを北上し続けながら暖は考える。好きなら触れたいと思うこと。それがうまく出来ない鴇田のこと。でもきっとそういう鴇田のことを好きになったので、暖ははじめからお手上げなのだ。なす術はなく、神様の采配する運頼みで進む恋。
……そんなのに身を投じるなんてばかげている。暖は暖で鴇田に触れたいし、触れて欲しいと言っていい。鴇田が困るなら一緒に困ればいいし、悩むなら、悩めばいい。
今夜もう一度触れて欲しいと言おうと決意したころ、薄日が射しはじめた。雲の割れ目から光が薄い布地のひだのように地上に、海上に、落ちた。
言葉を失い、ただ眺める。鴇田も車を路肩に寄せて、光を見た。ふたりで車を降りて海に落ちる光の柱を茫然と見る。咄嗟に暖は身体を震わせた。ポケットからカメラを取り出し、海を背にして鴇田を立たせる。
「どういう顔していいのか分かんない」と鴇田は言ったが、気にしなかったし、ぎこちなさはあったけれど本人も笑っている。カメラを夕景に設定して海を背後に鴇田を撮った。満足してカメラを仕舞おうとすると鴇田の手が伸びる。
「僕にも撮らせて」
「おれを撮ってくれんの?」
「こんなに西まで来たんだっていう記念に」
一緒に撮ろうと言わない辺りが鴇田らしいなと思った。カメラの設定だけ指定して、同じアングルで撮ってもらう。その場でピクチャを再生してみたが、初心者なりにうまく撮れていた。嬉しいと思った。
「さっきまであんな天気だったのにね」と夕景を眺めて呟く。
「――前にあんた書いてましたよね。雨でも晴れでも同じ空、みたいなこと。暴風は怖いけど薫風には癒されるって」
「ああ、メイストームのコラムのときかな」
「なんか、本当にそうなんだよなって思う。本当、さっきまではもうだめだって思うような気分だったのに、たったこれだけでここまで来て良かったなって」
「……分かる」
「早く宿戻りましょう。戻りたい」
鴇田は笑った。この旅の中で一番さっぱりと嬉しそうな顔をしている。
「温泉浸かって、美味いめし食って、あんたに触りたい。触ってみたい」
「……」
「単純だよな」
自身に呆れる響きで、でも嫌じゃないと思っているのが伝わった。暖はポケットから手を出し、ぎゅっと鴇田の手を握る。
「――いって、」
「おれが運転するよ。鴇田さんの運転じゃ日が暮れる。まじで」
「法定速度で走ってるんだけど」
「ものごとって崩していけばすごくシンプルなんですよ」
そう言うと鴇田は目を細めた。目を細めてまた光を見る。
「色々と絡んでわけが分からなくなってしまうけど、ほどいてみればなんだっていう単純さ。だからあなたの誘い文句は嬉しかった。おれも触ってよって言おうと思ってたんです。早く戻ろう」
「あ、待って。日が雲に隠れそうってか、雲の流れが」
「ああ、――すごいな」
言葉なく夕日を眺め、海を眺め、また曇天に戻ったのを見送って車に乗り込んだ。
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湯に浸かりながら雨に打たれて少しはまともになった身体で部屋に戻る。鴇田はスマートフォンを手にしていた。暖の顔を見ると安堵して、「どこに行ったのかと思って心配した」と言った。部屋を出てから二時間以上が経過していた。
「外湯行ってたんです」
「フロントから電話があって、夕食の用意が出来てるって」
「そんな時間か。こっちは西の方だからかな、いつまでも明るい感じがしますね」
連れ立って歩き、大広間で食事を取った。豪勢な海の幸を堪能するとまではいかなくて、言葉すくなに食べて部屋に戻る。鴇田は風呂に向かった。暖はベッドの上に寝転ぶ。
まだ旅程は一泊二日を残している。明日どうしようかな、と気が重い。今日のままの気持ちで過ごすならいっそ繰り上げて帰ろうか。
やがて鴇田が戻ってきた。暖は顔も上げずに寝転んでいる。室内の照明を落とし、フットライトだけにして、鴇田も隣のベッドへ入った。
「あんたと別れたいとは、どうしても思えないんです」と、隣から声がした。背を向けていたがそちらへ寝返る。下からのわずかな明かりの中、陰影を濃くして鴇田がこちらを見つめていた。
「誰を傷つけていても、いたとしても、あんたと一緒にいたい」
「――だったら、触ってよ」
そう言うと鴇田は苦しそうに顔を歪めた。
「……おれに触ってくれよ……」
「……すみません」
それだけ言って鴇田は目を閉じた。暖はフットライトを消した。暗闇で雨音と空調、衣擦れが耳に障る。
「外湯行ってたんです」
「フロントから電話があって、夕食の用意が出来てるって」
「そんな時間か。こっちは西の方だからかな、いつまでも明るい感じがしますね」
連れ立って歩き、大広間で食事を取った。豪勢な海の幸を堪能するとまではいかなくて、言葉すくなに食べて部屋に戻る。鴇田は風呂に向かった。暖はベッドの上に寝転ぶ。
まだ旅程は一泊二日を残している。明日どうしようかな、と気が重い。今日のままの気持ちで過ごすならいっそ繰り上げて帰ろうか。
やがて鴇田が戻ってきた。暖は顔も上げずに寝転んでいる。室内の照明を落とし、フットライトだけにして、鴇田も隣のベッドへ入った。
「あんたと別れたいとは、どうしても思えないんです」と、隣から声がした。背を向けていたがそちらへ寝返る。下からのわずかな明かりの中、陰影を濃くして鴇田がこちらを見つめていた。
「誰を傷つけていても、いたとしても、あんたと一緒にいたい」
「――だったら、触ってよ」
そう言うと鴇田は苦しそうに顔を歪めた。
「……おれに触ってくれよ……」
「……すみません」
それだけ言って鴇田は目を閉じた。暖はフットライトを消した。暗闇で雨音と空調、衣擦れが耳に障る。
大広間での朝食の合間に、鴇田が「予定変更します」と宣言した。していいですか、というお伺いではなかった。おれだって帰ろうって言うもんな、と暖はぼんやりと聞く。だが鴇田の提案は帰宅ではなかった。
「レンタカーで寺社めぐりの予定だったじゃないですか。そういうのどうしても見なくていいなら、海に行きたいなと思って」
「海?」
「海岸線ドライブ。寝てていいですよ。僕が運転します」
「レンタカーで寺社めぐりの予定だったじゃないですか。そういうのどうしても見なくていいなら、海に行きたいなと思って」
「海?」
「海岸線ドライブ。寝てていいですよ。僕が運転します」
宿からいったん北へ向かい、とにかく海岸線へ出た。国道だ。そこを西に向かうなり東に向かうなり。鴇田の中でプランがあるようで、彼は「やっぱり日本海って荒れやすいんですかね」と言った。
「僕らが普段目にする海って太平洋が基本じゃないですか」
「関東在住ですからね」
「そう。だからあんまりこっち側の海を知らないなって思って。まあどっち側の海も僕はよく知らないんですけど」
「そんな名前してるのに? ……そういえばあなたの名前の由来を訊いたことがなかったですね。遠い海ってどこの海?」
訊ねると、鴇田は「Kだそうです」とそこそこ名の知れた景勝地を挙げた。白砂青松で有名な日本海側の海岸だったはずだ。
「えーと、F県にあるんでしたっけ」
「さすが。よくご存知ですね。と言っても僕はあまり記憶にないです」
「まさかこれから行こうってわけじゃないですよね?」Fなら方向が違うし遠い。
「行きませんよ。……身内の話でちょっと恥ずかしいんですが、僕の両親はいわゆる駆け落ちというやつで」
「おお」意外な事実だった。
「音大でピアノ弾いてた母を大学の購買部で働いてた父が見染めて猛烈アタックをして、だそうです。母がもうすこしで大学卒業ってころに妊娠が分かって。それが要するに僕なんですけど、とにかく猛反対されたので大学をなんとか卒業して即駆け落ち敢行」
「それは歴史に重みがあるなあ」
思わず感嘆を漏らすと、鴇田もふ、と笑った。
「母は大学ではそれなりにピアノの才能を認められていて、加えて美人だったので、まあちやほやされて生きてたわけです。音大に通えるぐらいに家は裕福でしたしね。なんにも知らないようなお嬢様がいきなり妊娠してしまって、父と祖父がこじれたんです。母には婚約者めいた人もいたらしいので祖父はカンカン。それで駆け落ち。はじめは知人頼って関西にいたらしいんですけど、土地に馴染めなくて。僕が生まれる寸前にFに移ったんです。そこでKの海を見て感動したとか。青くて透き通っていて、緩やかに波が寄せて返すような遠浅の海岸だったそうです。それで遠海、と」
「わー、すごい納得しました」
「あとになって祖父母と和解したのでまたそっちへ戻るんですけど、貧乏暮らしは相変わらずのままでしたね。そのうち弟も生まれたし。だから伊丹さんのところでピアノを弾けたのって、僕にとってはものすごい幸運。母親は音大にすら進学させてあげられなくてって言うんですけど」
「弟さんも楽器やるんですか?」
「これが全く。父に似たみたいです。こっちの名前は『律』ってもらってるんですけどね。旋律のリツ」
「いい名前だなあ。おれは秋生まれなんだけど、あったかくて小春日和、って日に生まれたからハルなわけなんですよね。秋なの春なのどっちなんだよって思いません?」
「あなたの名前は難読ですね。でも覚えたら好きになりました」
「呼んでいいよ」
「はる、って?」
「うん」
その後は会話が続かず、途切れたまま車を走らせる。車内では鴇田が持っているミュージックプレイヤーをBluetoothで繋いで音楽を流していた。少し前のポップスで、南方の民族調のこぶしを効かせて女性が伸びやかにリズムを取り、歌う。
「懐かしいな」と漏らすと、鴇田が「この景色が?」と訊ね返した。海岸線をずっと走っていて、右手側は絶えず海のままだ。
「いや、ここ来るのははじめて。じゃなくて歌。おれが中学生ぐらいじゃないですか? この人の歌が流行ったのって。鴇田さんまだ小学生ぐらいでしょ。なんで音源持ってるんですか?」
「ああ、母が好きだったからです。ファーストアルバムが売れたときに、貧乏だったけど父に買ってもらったみたいです。こういう南方特有のこぶしの効いた歌い方とか、アフリカの民謡とか、ブルガリアの癖のある発声とか、そういうちょっとマイナーな音を好んでたんですよね、母は。だからクラシック弾けるくせにジャズも好きだったのかも」
「なるほど」
女性ボーカルがゆったりとした音調で歌う。切実な恋を訴える曲だった。暖の心を見透かしたような曲に、鴇田は言った。
「この歌を作詞作曲した方、亡くなられたんですよね」
「……そうなんだ」
「歌だけじゃないですけど、音楽はいつまでも残りますね。身体の期限を飛び越えてずっと続く。僕が普段弾いてる曲だって、もう死んでしまった人の曲ばっかりだし」
「でもそれはあなたが生きているから鳴る音でしょう。やっぱり身体がないと出来ないことだと思いますよ。身体の期限があるうちにやらないといけないことって言うか。歌ったり、喋ったり、弾いたり、走ったり、眠ったり、……」
触ったり、と言おうとして、言えずにつまづいて、会話を放り投げた。
「そうかもしれません」
伝わったか伝わらなかったか、男は答えた。曇天の下を進む車は、昼ごろになって岬のドライブインに停まった。
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「僕らが普段目にする海って太平洋が基本じゃないですか」
「関東在住ですからね」
「そう。だからあんまりこっち側の海を知らないなって思って。まあどっち側の海も僕はよく知らないんですけど」
「そんな名前してるのに? ……そういえばあなたの名前の由来を訊いたことがなかったですね。遠い海ってどこの海?」
訊ねると、鴇田は「Kだそうです」とそこそこ名の知れた景勝地を挙げた。白砂青松で有名な日本海側の海岸だったはずだ。
「えーと、F県にあるんでしたっけ」
「さすが。よくご存知ですね。と言っても僕はあまり記憶にないです」
「まさかこれから行こうってわけじゃないですよね?」Fなら方向が違うし遠い。
「行きませんよ。……身内の話でちょっと恥ずかしいんですが、僕の両親はいわゆる駆け落ちというやつで」
「おお」意外な事実だった。
「音大でピアノ弾いてた母を大学の購買部で働いてた父が見染めて猛烈アタックをして、だそうです。母がもうすこしで大学卒業ってころに妊娠が分かって。それが要するに僕なんですけど、とにかく猛反対されたので大学をなんとか卒業して即駆け落ち敢行」
「それは歴史に重みがあるなあ」
思わず感嘆を漏らすと、鴇田もふ、と笑った。
「母は大学ではそれなりにピアノの才能を認められていて、加えて美人だったので、まあちやほやされて生きてたわけです。音大に通えるぐらいに家は裕福でしたしね。なんにも知らないようなお嬢様がいきなり妊娠してしまって、父と祖父がこじれたんです。母には婚約者めいた人もいたらしいので祖父はカンカン。それで駆け落ち。はじめは知人頼って関西にいたらしいんですけど、土地に馴染めなくて。僕が生まれる寸前にFに移ったんです。そこでKの海を見て感動したとか。青くて透き通っていて、緩やかに波が寄せて返すような遠浅の海岸だったそうです。それで遠海、と」
「わー、すごい納得しました」
「あとになって祖父母と和解したのでまたそっちへ戻るんですけど、貧乏暮らしは相変わらずのままでしたね。そのうち弟も生まれたし。だから伊丹さんのところでピアノを弾けたのって、僕にとってはものすごい幸運。母親は音大にすら進学させてあげられなくてって言うんですけど」
「弟さんも楽器やるんですか?」
「これが全く。父に似たみたいです。こっちの名前は『律』ってもらってるんですけどね。旋律のリツ」
「いい名前だなあ。おれは秋生まれなんだけど、あったかくて小春日和、って日に生まれたからハルなわけなんですよね。秋なの春なのどっちなんだよって思いません?」
「あなたの名前は難読ですね。でも覚えたら好きになりました」
「呼んでいいよ」
「はる、って?」
「うん」
その後は会話が続かず、途切れたまま車を走らせる。車内では鴇田が持っているミュージックプレイヤーをBluetoothで繋いで音楽を流していた。少し前のポップスで、南方の民族調のこぶしを効かせて女性が伸びやかにリズムを取り、歌う。
「懐かしいな」と漏らすと、鴇田が「この景色が?」と訊ね返した。海岸線をずっと走っていて、右手側は絶えず海のままだ。
「いや、ここ来るのははじめて。じゃなくて歌。おれが中学生ぐらいじゃないですか? この人の歌が流行ったのって。鴇田さんまだ小学生ぐらいでしょ。なんで音源持ってるんですか?」
「ああ、母が好きだったからです。ファーストアルバムが売れたときに、貧乏だったけど父に買ってもらったみたいです。こういう南方特有のこぶしの効いた歌い方とか、アフリカの民謡とか、ブルガリアの癖のある発声とか、そういうちょっとマイナーな音を好んでたんですよね、母は。だからクラシック弾けるくせにジャズも好きだったのかも」
「なるほど」
女性ボーカルがゆったりとした音調で歌う。切実な恋を訴える曲だった。暖の心を見透かしたような曲に、鴇田は言った。
「この歌を作詞作曲した方、亡くなられたんですよね」
「……そうなんだ」
「歌だけじゃないですけど、音楽はいつまでも残りますね。身体の期限を飛び越えてずっと続く。僕が普段弾いてる曲だって、もう死んでしまった人の曲ばっかりだし」
「でもそれはあなたが生きているから鳴る音でしょう。やっぱり身体がないと出来ないことだと思いますよ。身体の期限があるうちにやらないといけないことって言うか。歌ったり、喋ったり、弾いたり、走ったり、眠ったり、……」
触ったり、と言おうとして、言えずにつまづいて、会話を放り投げた。
「そうかもしれません」
伝わったか伝わらなかったか、男は答えた。曇天の下を進む車は、昼ごろになって岬のドライブインに停まった。
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鴇田の天気予報は当たりで、宿に着くより前に本格的な雨が降りはじめた。I大社から離れない場所にある温泉街に宿を取っていたが、車を突っ込むころにはどしゃぶりで、荷物の運び入れに苦労した。チェックインを済ませ、部屋にたどり着く。ツインベッドの洋室を頼んでおり、雪崩れるようにベッドにダイブした。
温泉街だから泉質に自信のある宿で、広い大浴場と露天風呂があるという。車移動だったからひどく濡れたわけではなかったものの、冷えが身体にべったりと張り付いている。鴇田を風呂に誘ったが彼は緩慢に首を振った。
「あとで行きます」
「そっか。ならおれ先にもらいますね」
なんだかなあ、と沈んだ気分で浴衣とタオルを提げて大浴場に向かう。鴇田も楽しみにしていてくれていると準備段階では思っていたのだが、こうやって来てみたら予想外に盛り上がらない。あれは明らかになにかあったんだよな、と推測をしてみる。昨夜の電話も怪しかった。会社で落ち込むような失敗でもしたとか――いや、鴇田はおそらくそういうことのないように心がけて仕事をする人だし、そういう理由で落ち込んでいるならなおさら逃避の意味のある旅行は楽しいはずだ。
暖がなにか無神経なことでもしたとか。例えばで思いついたのは西川に借りたAVのことだったが別にやましいとは思っていない。性欲を解消するために借りたわけでもなく、中身も西川が勧める通りにただ甘い関係のふたりにカメラが入った、という感じだった。鴇田としたいな、と思えるような内容だったので、学習的な意味合いが強い。それにものはもう返却している。
なんだろうなと考えつつ風呂に浸かっていたらつい長風呂になった。あまり客もいなかったため、気兼ねなく堪能してしまった。先ほどよりは幾分かさっぱりした心地で部屋に戻ると、鴇田は暖を見送った姿勢のままで固定されていた。まるで彫像にでもなったかのようで、さすがに心配になった。
「鴇田さん」
声をかけ、近くに寄る。声だけで身体がこわばったのが分かった。よくないなと思いつつ「触りますよ」と声をかける。
「……」
「いい? 触るからな」
そっと髪に手を伸ばし、ぽんぽんと軽くはたく。温まった暖に反して冷たい髪だった。頬まで冷たい。部屋の空調が効きすぎていることに気づき、操作して室温を上げた。
髪に触れる暖の手首に、鴇田の指がゆっくりと絡んだ。「熱い」と彼は感想を漏らす。
「いいお湯だった。さっぱりしますよ。……鴇田さんさ、なにかあったんだろ」
「……」
「もしくはおれのことでなにか嫌になったり、気にかかっていることがあるんだったら話してほしい。……こういうのは言葉にしないと、分からない」
ごろごろ、と外から大きな音が響いた。雷鳴が轟いている。雨はひどくなる一方で、部屋の扉を開けたらたちまち水に襲われそうな気さえしてしまう。
「昨夜、電話をくれる前になにかあったんじゃないかな。というより、なにかあったから電話をくれた」
「……昨夜、店に」
「店?」
昨夜は出番じゃなかったはずだよな、と思いながら隣に腰掛ける。
「蒼生子さんが来て、すこしだけですが、話をしました」
全く予想しない出来事だった。別れた前妻が鴇田と接触した。自分を全く通さずに。――湯で解けた緊張が急速に固まっていくのを感じた。
「連絡、取ってないんですね」
「必要があれば取れるようにはなってるけど、必要がないから。……彼女、なんで、」
「近くの店で婚活支援の集まりがあって、その帰りに立ち寄ったんだと言っていました。僕は店に行く予定はなくてアパートにいたんですが、伊丹さんから僕に会いたがってるお客さんが来てるけどどうしようかと連絡をもらって。普段なら行かないんですが、名前を聞いたら蒼生子さんだと分かったので、……迷って、行くことに」
行かなくてよかったんじゃないかと思う。いい思いをしないはずだから。暖は黙って聞く。
「三倉さんに会っているかと訊かれ、返事に詰まっていたら、いつかは申し訳ないことをしたと丁寧に頭を下げられました。感情的に行動して謝罪もしなかったから、と。それだけだったんです。それだけで蒼生子さんは帰りました。僕も帰った。けど、……ずっとここに、おさまりがつかなくて」
ここ、と鴇田は自身の胸に手を当てた。暖はそれを痛々しい気持ちで見つめる。おそらく前妻に鴇田を混乱させる意図はなかっただろう。だが彼女自身まだどうしていいのか分からない場所にいるのだと分かって、どうしようもなくなった。おそらくは衝動的な行動で店を訪れた。普段は平然と笑ってなんでも許すくせに、一度こうと決めると一直線で感情のままに動くときがあった。そういう女性だった。
「……僕は明日からあなたと旅行だと浮かれていたから、蒼生子さんを見て本当に衝撃を受けました。あの人はもしかするとまだ、あなたに未練があって」
「それは違う」と暖は否定する。
「おれたちは円満離婚で、離婚届を出しに行くときも――いえ、これはおれたちの話なのでいまは詳しくは話しません。でも別れ際には笑って別れたんです。財産分与も、やっぱり離婚するかしないかも、とにかくよく話し合った結果がいまです。未練があったとしてももう済んだ話なんです。区切りはつけた。それにあなたはなにも関係しない。おれたちの話だから」
「……未練はなくても、後悔はしているかもしれないじゃないですか」
「……それも、彼女自身の話です」
「あんなに子どもが欲しいって言って頑張ってたふたりなんでしょう。それを僕は、僕が苦しいからという理由であんたに散々好きだと言って、壊してしまったんだという感覚がどうしても拭えない。あんなに望んでいただろう人はもう、三倉さんに触れることはないんです。……それは精神的にも肉体的にもものすごいダメージなんだと思った。近かった人がいなくなる感覚は僕には分からないけど、辛いことは想像できる。……僕が望んで壊した関係だと思ったら、あんたとの距離が急に怖い……触れない」
「……なんだそれ……」
ふつふつと血が上昇して耳鳴りがした。離婚協議中でも感じなかった怒りと興奮を感じた。血が湧き立ち、湧くほどに頭が冴えるような、嫌な冷徹。
「彼女が苦しんでいても、吹っ切れていても、いまおれにはどうしようもないし、どうもしない。どうもしない関係になりましょうって話しあって決めて実行したんです。そしてそれらは、本当にあなたには関係のない話だ。あなたがそこまで考えて追い詰められる必要はどこにもない。あなたが壊した関係ではないし、強いていうなら、おれが望んだ未来なんだよ。……なんなの。おれは別れた嫁さんに対していつまで義理堅くいなきゃいけないの。そういう理由であなたはおれを拒むのか。そういう理由でおれたちはいつまで経っても、触れられないままか? あなたが壊した関係だと思うなら――」
放り投げて逃げるなと言いそうになり、言葉を飲み込んだ。そこまで言うべきではない。傷ついているのは鴇田だ。
それでも蒼生子を、そして鴇田を非難する言葉がいくらでも脳に浮かんだ。頭が煮えて煮えて仕方がない。暖は立ち上がった。じっとしたままこの部屋にいられないと思う。
「――ごめん、苛々して八つ当たりをしました。頭冷やしてくる」
そう言い残して部屋を出た。どうすることも思い浮かばず、どしゃぶりの中傘を借りて歩き、こぢんまりとした共同浴場を見つけた。地元民が利用するような簡素な浴場で、そこに浸かった。半露天みたいな風呂には誰もおらず、熱い湯に浸かりながら雨に当たるのはわるくないと思えた。
わるくない。蒼生子も、鴇田も。誰かが悪者だったらよかったのにな、と思う。そいつのせいにして思い切り悪態をつけば、すっきりして旅行を続けられる気がする。
衝動で鴇田に会ってしまった蒼生子には、まだ暖に対する未練があるのだろうとは思う。後悔か。それをまともに食らってしまって鴇田は動けない。暖に触れられない。
わるいのはおれだな、と空を向いて考える。雨粒がびたびたと頬に当たる。蒼生子だけを大事にしていたり、鴇田を好いたりしなければ、どちらかは傷つかなかったかもしれない。もしくはもっと思考して行動していたら。一歩一歩石橋を叩いて叩いて渡らないような選択をしていれば?
暖はいい人間じゃない。人生は楽に気負いなく生きたい。それでも好きだと言ってくれる人に対して誠実でありたいと思って行動しているつもりだった。その結果がこれなのだから、やり方が間違っていたのだろうか。
否、と思う。蒼生子を大事にしていても辛かったし、鴇田を好きにならない選択はなかった。自分が間違っていたと思ったら、いままでの暖をまるごと否定される。蒼生子と暮らして幸福だったし、苦しかったし、暖自身もたくさん悩み傷ついた。その事実をなかったことにはしたくないと思う。
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プロフィール
HN:
粟津原栗子
性別:
非公開
自己紹介:
成人女性に向けたBL小説を書いています。苦手な方と年齢に満たない方は回れ右。
問い合わせ先→kurikoawaduhara★hotmail.co.jp(★を@に変えてください)か、コメント欄にお願いいたします。コメント欄は非公開設定になっています。
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短編「冬の日、林檎真っ赤に熟れて」
2021*08*16-08*19
甘いお菓子のある短編「最善最愛チョコレート」更新。
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