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成人女性を対象とした自作小説の物置です。
国見大稀

 

 常盤は「もうちょっと頑張ってくれないかな」と言った。それはつまり、秋津の想いを汲んで続ける努力をしてくれよ、という意味だったのだと思う。
 僕は秋津が、好きだ。でもその好きの意味がもう変わってしまっている。だったら、僕にとっての「頑張る」は常盤の意思とは違う。秋津に真摯でありたいから、どうしようもなく惹かれ焦がれてしまった人のことを、話した。
 秋津はずっと黙っていた。こっちが逃れたいくらい真っ直ぐな目で見ていた。話し終えて、「それで?」と聞き返された。

「だから、もう、」
「別れる必要ってあるのかな」

 その言葉の響きにぞっとした。よく顔を見れば、微笑んでいるようで目はちっとも笑ってなかった。
 あきつ、と呼んだら、「遊川さんの方だって大稀を好きかどうか分からないよ」と言う。いつも穏やかに話す人なのに、口調が速かった。明らかに混乱させていた。

「俺は大稀が好きだし、その、あとくされとか? そういうの、なく、付き合えるよ」
「あきつ」
「繋ぎでもセフレでもなんでもいい。今すぐなんて、」
「あきつ」
「だから、無しにしよう? 別れるとか、そんなの、」
「秋津」

 言いながら秋津はぼろぼろと涙をこぼした。肩を掴むと、拒まれる。うつむいてカットソーの袖口で涙を拭うと、懸命に僕の方を向いた。

「―嫌だ」
「でもごめん。…もう、無理だ」
「嫌だ」
「ごめん」
「嫌だ、謝るなよ、…悪くない……」

 言ったそばからまた新しい涙が頬を伝う。こんな時まで美人でいなくたっていいのに、と思うくらい、秋津に醜いところなんてひとつもなかった。こぼれおちる涙も赤く染まった鼻や頬や耳も、歪む唇も、倒錯的に綺麗だった。
 この顔を、髪を、指を、背中を、愛おしいと思えなくなったのはいつからだろう。今度こそ抱き寄せ、泣きじゃくる秋津の背を叩きながら、そんなことを考えていた。はじめは確かに好きだった。恋に落ちて、毎日が楽しくて、夢のようだった。
 情はある。こうやって抱えあげて髪を梳き、なだめるくらいには。自分をすべて晒し投げ出して、身体まで繋げた人だ。2年も一緒だった。そう簡単に終われる絆じゃないのも分かっている。
 どれだけ僕の中で大きいのだろう。こんな人に別れようと迫れるぐらいの、貢の存在。
 今はあまり考えたくなかった。少し、怖かった。

「―俺、どんどん嫌な人間になってく」

 胸に顔を押し付けたまま、秋津が切れ切れにそう言った。

「大稀さえ側にいればいいって、誰もかもいなくなっちゃえって、思ってる」
「―うん」
「遊川さんのこと、簡単に大嫌いに、なれるし」
「―うん」
「なんで…俺じゃだめなの……」

 またひとつしゃくりあげる。ずっと震えていて、すさまじい力で握りしめられていた。
 その手をひとつひとつ、ゆっくりと剥がす。秋津は僕を見なかった。
 離れていく身体を、引きとめもしなかった。

「ごめん、今までありがとう」

 それが、僕と秋津の終わり方だった。


  


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粟津原栗子
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非公開
自己紹介:
オリジナル小説(BL)書いてます。苦手な方は回れ右。
鶯太郎くんののんびり新生活「おやすみなさい、また明日。」17時にのんびり更新中。

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20120404:樹海カップリング投票始めました。12時間置くと再び投票できます。10月5日までの半年間。コメント及び投票結果は今のところ私(管理人)しか見れません。遊んでやってくださいw
他、こここうしてほしいとかこれこうがいいとかご意見あればメールフォームよりお寄せください。よろしくお願いしますー

20120329:のんびりまったりやる気ない(そんなこともない)感じで新しいお話始めました。良ければー
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