大稀に断り、立ち上がって扉を開ける。隣人の男が立っていた。
「すみません、うるさかったですか?」
「いえ、そうじゃないです。昼間尋ねたらいなかったもんですから。ええと、俺のとこに間違って、宅配の不在票が入ってて」
「ああ、丁寧に。ありがとう」
「それと、俺、来月中にここ、出るんですよ。それでしばらくばたばたしてます。うるさかったら、言ってください。すみません」
「ん? 引越し?」
「はい。就職が実家の方で決まったので」
そういえば隣人も大学生だった、と俺は改めて思い返す。俺よりも先に入っていた。大学生でも大稀よりはずいぶんと年が上で、感覚としては同年代に近かったが、よく見れば隣人もそれなりに若い男だった。
とっさに反応したのが大稀だった。歩み寄り、「あなたの後に入る人って決まってるんですか?」といきなり尋ねる。俺の部屋に人がいたこと事態が珍しかっただろうに、その相手が若い男とあれば、さすがに隣人もあからさまに驚いた顔をした。
「…えっと、どうだろう。大家に聞かないと」
「そうですか。部屋、どんな感じですか? ここと変わらない?」
そしてくるっと振り向き、こちらを見る。「大家さんと連絡取れる?」と俺に訊いた。
「大稀、本気か?」
「部屋次第。話だけでもさ」
でも、満面の笑みだった。
大稀の行動は早かった。
その日のうちに大家に連絡を取り、内見の約束まで取り付けた。なんでも、俺の隣の部屋はすでに入居希望者がいて、その代わり同じ家主の、別の場所にある部屋を見せてもらうことにしたそうだ。
話はあっという間にまとまった。俺の部屋よりは坂の終わりの方、街に寄ったところの小さな部屋を借りることになった。大学までは自転車で行くと言う。何より本人は、部屋からの眺めがやっぱり良いことを凄く気に入っていた。
徐々に引越しの準備を始めている、というメールが入った日。俺は仕事帰りに珍しく寄り道をした。
基本的には引きこもりの人間だ。職場にいるか、部屋にいるかのどちらか。外は刺激ばかりですぐに気持ち悪くなり、消化したくて描きたくなる。分かっているからここ数年は余計に、必要最小限しか出歩かなかった。
まさかこんなところに来るとはな、と思いながら、感じのいいバーの一番隅っこのテーブルに腰かけていた。あめ色に磨かれた木目が綺麗だった。
待ち人はほどなくしてやって来た。いつどこで見ても完璧な男だ。
上原秋津は、店に入るなりすぐに俺を見つけ、ひとつ頭を下げた。店中の人間が彼の姿に息をのむのが手に取るように分かった。俺だってそうだった。それくらい、妙な色気と圧倒する雰囲気があった。
「お待たせしましたか?」
「いや、ちょうどよかったよ。まだ何も頼んでない」
「本当だ。良かった」
おしぼりさえないテーブルを見て完璧に微笑む。外見がそうだからとっつきにくいと思うのに、話してみれば人懐こく、礼儀正しい。誰にとっても魅力的に決まっていた。
一緒にいるだけで芸能人を連れ歩いている気になる。呼び出されたというのもあって、心の底から落ち着かなかった。
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鶯太郎くんののんびり新生活「おやすみなさい、また明日。」17時にのんびり更新中。
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20120404:樹海カップリング投票始めました。12時間置くと再び投票できます。10月5日までの半年間。コメント及び投票結果は今のところ私(管理人)しか見れません。遊んでやってくださいw
他、こここうしてほしいとかこれこうがいいとかご意見あればメールフォームよりお寄せください。よろしくお願いしますー
20120329:のんびりまったりやる気ない(そんなこともない)感じで新しいお話始めました。良ければー

