忍者ブログ
ADMIN]  [WRITE
成人女性を対象とした自作小説の物置です。
おはようございます。毎日寒いですね。

夕方5時の更新ですが、ちょっとお休みいたします。
というのも、巷で流行の「おなかにくる風邪」に見事り患してしまい、
夜間外来で点滴を打たれて帰宅、現在ぐらぐらしてます。

すぐ治します。更新があったら「あ、元気になったんだな」と思ってください。

また、せっかく頂いたコメントやメールやメッセージのすべてにお返事が出来ていません。本当に申し訳ないです。
必ずお返事いたしますので、どうか気長にお待ちください。

皆様、本当にほんっとうに風邪にはお気をつけて!


あわづはらくりこ

拍手[53回]

PR
 久々に走ったことで己の老化を知らされた。そうでなくとも今の季節は、少し動いただけでも肺が凍るようだ。息はすぐに切れたし、途端にむせた。鳥肌が立って、熱いのか寒いのか分からなかった。
 落ち着け、と自分を笑ってみる。この年でそんなに急き込んでどうするんだ。みっともない、いい年した大人が。そうやって誤魔化し、余裕のふりをした。
 数年ぶりに押した扉は、数年前と全く同じ音を響かせて開いた。俺に気付いた店主が「お」とだけ顔をあげて反応した。その向かい、俺に背を向けて、短髪の青年が座っていた。
 店主の「遊川くん」の声と同時に、青年が立ち上がる。振り向きざまの動作に溌剌と若さがみなぎっていて、清純なエネルギーに中てられるようだった。
 意思を持った太い眉、その下の黒い目がはっきりと俺を捉える。そうだと分かった瞬間、俺はこの世から消し飛んでしまいたい衝動に駆られた。それほど美しい太陽だったのだ。
 なんという成長だ。
 俺が知っている大稀は、未発達の頃だった。やわらかい髪を風になびかせて道端で遊んでいたと思ったら、少しずつ身長が伸びて、少しずつ手足が長くなった。でもそれはまだ子どもの、少年と呼べる時代の話で、背は俺よりもずっと小さかったし、声変わりだってしていなかった。
 それが、今はどうだろう。とうに追い抜かれた身長、張り詰めた眼差し、引き結ばれた口元。細長い体躯は相変わらずだが、今の若者は皆そうなのだろうか。しっかりと地に足をつけて立ち上がっている。
 見惚れていた。己のみじめな姿を後悔しながら目が離せなかった。たった数秒だが、確かに見合っていた。
 不意に青年が動いた。あ、と思う間もなく身体が近いところにあった。そのまま鋭い痛みが左頬に走って、視界が一気に飛んだ。

「あんた何やってんだよ」

 平手打ちした手を強く握ったまま、大稀は言った。声に怒気が含まれていて、表情も歪み切っていた。
 ギャラリーの店主が面食らったまま「やめなさい」と大稀の側に寄り添う。しわのある手で大稀の手をそっと包んだのが、妙に羨ましくて妬ましいと、こんな事態のさなかで思っていた。
 怒りの目を向けたまま、茫然としている俺に大稀は吠えた。

「描くのをやめた? あんたがそんなこと出来るわけがないくせに」
「……」
「描いてられるだけの生活なんて夢みたいだって笑ってたくせに、今なんだよ。学校の事務? そんなの全然、あんたには似合わない」
「国見くん、もうやめなさい」

 店主が懸命に肩を叩き、大稀は長く息を吐く。うつむいて、「ちきしょう」と呟いた。
 絵の売買の話じゃなかったのかい、と店主は諭す。大稀は首を横に振った。
 また俺の顔を見る、射抜く。黒い目にキャッチライトが入って、それさえも見ていたいほどの表情だった。

「―がっかりだ、にいちゃん」

 ずしん、と心臓に響いた。動けないでいる俺の隣をすり抜けて、大稀は店を去る。取り残された店主がただただ困った顔をしていた。
 今頃になって頬が痛んできた。というよりも、熱を発していた。ここに大稀が触れた、あの手が触れたのだとばかみたいに頬を撫でていたら店主がようやく口を開いた。

「知り合いだった?」
「…昔、隣に住んでた子です。まだこんな背だった」

 このくらい、と手のひらで指し示してみせると、店主は笑い、それから「頬を冷やそうか」と言ってカウンター奥に備え付けてある水道に向かう。

「ここは、変わりませんね」
「うーん、まあね。僕の趣味の店だから、他の画廊みたいにもっと展示入れ替えしたり企画展したり、しなきゃいけないんだろうけど」
「そんなんで、よく保ってる」
「見る目に関して、僕は外したことがない。あとはよく出来た奥さんのおかげだ」

 俺も笑った。店主の妻という人は大学で美術史を教える教授で、大きな公募展の審査員なども務めている。美術界の権威として多くの雑誌で評論も寄せており、何度か会って何度も辛く苦いことを言われたが、そのたびに的を得ていると納得したものだ。
 いつまでも頬を押さえている俺に、店主が冷たいおしぼりをくれた。頬を押さえているのは、これを施したのが大稀だという感動からだった。それも、あんな成長を見せた。数年ぶりの姿、かつての少年。
 タオルを当てると、痛みが途端に増した。遠慮なくぶたれたから、本当は口の中の方が痛かった。
 なんでもないと誤魔化すふりをしてギャラリー内を見渡す。ここには来たくなかった。俺の絵がある、それを見たくなかった。他人の作品さえも見たくなかった。描きたくなる、描いてしまえば俺は間違いなく壊れてしまうと分かっている。
 同時に心地がいいのだ。だからこそ、わざと距離を置いていた。
 失礼、と言い置いて店主は煙草に火をつけた。銘柄も変わっていないんだな、とそれをぼんやりと眺める。アンティークの椅子も机も、狭い部屋に絶妙に配置された絵や彫刻も、照明も、すべてが店主の趣味の良さを物語っていて、無性に泣きたくなる。あの頃、描くことは地獄だと、それでも辞めることができないのだと、静寂と強烈な視野に悩まされていた頃をまざまざと思い出す。
 長い煙を吐き出して、店主はゆっくりと語り出した。「あの青年に乞われてきみの今までを話していたよ」と、遠い目で言った。



  


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
参加中です。クリックいただけると嬉しいです。

拍手[48回]

 今日も仕事が終わり、お疲れ様でしたと声をかけて学校を後にする。これから途中でコンビニに寄り、酒と適当な夕飯を買って帰宅する。飯、風呂、後は何もしない。目にすれば描きたくなるし、頭に入れば指が動いてしまうから、出来るだけ何も情報は仕入れたくない。音も視界も、蝋でかたく塞いでしまいたい。
 携帯電話が鳴って、舌打ちをしたくなった。安息を邪魔するのは誰だと、ディスプレイを見て息を吐いた。ギャラリー白露。学生時代からずっと俺のことを買ってくれた店主がいる小さな店。今さら何の用だ。絵を辞めた俺はもう関係ないだろう。
 出るのをためらった。携帯電話はしつこく鳴る。放っておこうかどうしようか迷っているうちにふつんと途切れ、また鳴り出す。
 しぶしぶ出た。電話の向こうの店主は相変わらずの口調で、「遊川くんは本当に電話に出ないねえ」と笑った。

「…何の用ですか」
『いや、きみの作品、最後の素描をね、複製でもいいからどうしても欲しいというお客がいま、来てるんだ』
「追い返してください」
『僕もそうするつもりだった。あれは売らないでくれっていうきみの希望だから。でもあんまりにも必死で、ついね。まだ若いんだ。きみの作品を好むような、コアなファンではない感じんだけど』
「若い?」
『そう。20代かな。学生さんだと思う。あと、よく似てる』
「え」
『素描の少年に。あれは誰でもないんだと昔きみは言っていたけど、モデルが実在して成長していたんならこうかな、と僕は思った。その、目鼻立ちとか、雰囲気かな』

 どくん、と心臓が音を立てた。うるさい止まれ、と願いつつ期待した。少年を思い出した。
 名前を尋ねると、店主は「しまった、ちょっと待ってて」と受話器をがさんと塞いで大きな声を出した。
 電話の向こうに聞こえる雑音に耳を澄ませていた。早く早くと思っている間に、店主が「もしもし?」と出てきた。

『クニミさんだって。クニミダイキさん』
「…………」

 今度こそ心臓が裂けたかもしれない。全身の血がめちゃくちゃに走り出す。
 店主の「どうする?」の声に、俺は「これから行きます」と、答えていた。


  

 

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
参加中です。クリックいただけると嬉しいです。

拍手[35回]

遊川貢(ゆかわみつぐ)

 

 きみはあの完璧な静寂を、知らない。

 俺には音が邪魔だった。目は閉じれば視界が閉ざされるのに、音だけはどうしたって入り込んでくる。どんなに眠ろうとしても、両手で耳をふさいでも。
 視覚の情報だけが俺は欲しかった。見つめて見続けて、目を凝らし息を詰めて、目に見えるもののその限界を描きつけたかった。見えるものすべてどころか、その裏側にあるはずのものまで描きたかった。だから温度とか手触りとか声とか、そんなのは余計な情報で、身体に入り込んでくるだけ邪魔でうっとうしかった。翻弄されるのだ、いらないものに。もういっそ描く指と見る目、それだけの人間になってしまいたかったくらいだ。あの頃の俺は、そこまで追い詰められていた。

 5年ほど前、ある依頼が舞い込んだ。ちょうど安くて古いアパートを抜けて、俺を高く評価してくれていたとある医者の屋敷、離れにアトリエをもらっていた。彼は同時にコレクターとしても有名で、画廊のオーナーから「制作場所と衣食住を提供してくれる」と紹介されたときはなんていうチャンスだろうと驚いたものだ。
依頼というのは、肖像画だった。それが単なる肖像画だったら俺は絵を辞めずに済んだだろう。難しい依頼だとずいぶんと悩んだのは、亡くなった我が子の成長した姿の肖像画、だったからだ。
 医者が連れてきたのだ。その両親はなかなか子どもに恵まれず、ようやく授かった一人息子だった。だが難病に侵され、3歳で亡くなった。あるのは病魔に苦しみながらも愛くるしい笑顔を見せる幼い息子の古い写真と、遺骨、医者のカルテだった。
 報酬はいくらでも支払うと言った。悩んだ末に引き受けた。生きていれば今年成人だったのです、とすがるように泣く親を見ていられなかった。まず親のデッサンをした。それから成長とともに育つはずの骨格、筋肉、どんなものを食べどんな運動をして肉体が作られたか、その性格は、好きなものは、あらゆる情報を聞いて想像し、徹底的に描き付けた。
 生物の解剖を行い仕組みを根本的に理解して、医者の助言も受けて、制作は1年近くにも及んだ。30号ほどの絵だったのに、それだけの時間を要した。父親に面差しの似た笑みの柔らかな青年を描きあげたとき、両親は何度も頭を下げ、涙を流し、大事に絵を持って帰って行った。口座には見たことのない大金が振り込まれ、俺はそれきり、昏倒に近いかたちでベッドに倒れこんだ。

 目覚めたら、やけに静かだった。一巡りしてやって来た冬のせいかとも思ったが、自分の鼓動さえ聞こえなかった。わずかに聞こえていた耳鳴りや地鳴りや、何もかもだ。僕が憔悴しきったことを心配した医者が様子を見に来て、初めて自分は聴覚を失ったことに気付かされた。
 描いている最中、音が邪魔だ、聞こえない方がいい、やめてくれ、聞かせないでくれ、無音をくれ、と願っていた。
 それが描き終わった途端に叶ってしまった。検査をしたが異常はなく、医者は「精神的なものだろう、いずれ戻る」と文字情報で伝えてくれた。
 確かに聴覚は2週間程度で戻った。そして今度は、見えすぎるようになった。
 正確には色が溢れるようになってしまった。白は白で均一には見えず、幾重にも重なってぶれた。漆黒でも同じことだった。青や赤や緑となると酷かった。ぼやけたり飛び込んで来たり、それは絶叫するほど強烈で、ずっと目を閉じて布団に潜っていたが、目蓋の裏にも色はあるのだ。眠れるわけがなかった。
 これも精神的なものだと判断された。目には異常がなかった。
 俺は画家として相当に恵まれていた。賞もいくつか取り、海外派遣の経験もあり、展示依頼はいくらでも飛び込んできたし、作品は高値で取引される。描いていればいいだけの生活は、夢のようだった。
 けれど描くことは、消耗することだ。身も心も滅ぼしてしまう。俺はみっともなく生き残るためにひとつの決心をした。「もう描かない」。
 周囲は惜しんだが、医者や画廊のオーナーは仕方がないという顔で諦めてくれた。これ以上ここにいるのも悪いと思い、絵具や筆すらも見たくなくて、医者の屋敷を出た。彼は「描きたくなったらまたここに」と言ってくれたが、俺は戻るつもりはなかった。

 決めたと同時に諦めがついたのか、視力は徐々に正常へと戻った。そして今は、関係のない仕事をしている。私立高校の事務職。これは医者の紹介だ。僕の学生時代の友人で理事長をやっている奴がいるからと、無理を聞いてもらった。
 美術の講師でもと言われたが、もう何もかも関わりたくなかった。雑用を淡々とこなす日々は、単調であるけれど平穏だ。安らぎの日々。もう寝食を忘れて描くことはない、その絶望と絶対の安心感。

 ただひとつ、心に引っかかり続けていたことがあった。若い頃、隣室に祖父と暮らしていた幼い少年。俺の絵なんか怖いと言って嫌がっていたくせに、ちょくちょく部屋に来ては息を殺して絵を見続けていた。
 細長い手足や、短くやわらかい髪や、物怖じせず見る真っ黒な目や、日に焼けた肌や、そういうものが俺に備わらなくなったのはいつからだろうと思いながら、過ぎた自分を思いながら、少年を感じ取っていた。自分と二十歳も年が離れていれば兄弟よりも息子の感覚だろうか。とにかく、意味も分からず愛おしかった。
 他人と空間を共にすることは苦痛だった。制作に必ず障った。それは少年の前では尚更で、そのことに感付いた少年の祖父が「行くのをやめろ」と少年に言ったほどだ。だと言うのに、矛盾するのに、俺は待っていた。少年が欲しかった。
 少年の祖父はその道では有名なイラストレーターだったので、少年自身にもそういうものが備わっていたのかもしれないし、こういう事態には慣れっこだったのかもしれない。が、とにかく、少年はいつしか絵を教えてくれと乞うようになった。教えるものはないよと適当にかわし続けていたが、俺もその気になっていた。画家になるなら、こっちへおいで、と。
 一度だけその小さな手を取って筆を滑らせてみたことがある。俺の手のひらに包まれてしまうほどの幼い手は、しかし熱くてしっかりと骨格があって、俺の手に衝撃を与え続けた。

 やがてパトロンが見つかりそこを出ていくことが決まり、俺と少年は小さな約束をした。いつか絵を買うお金が貯まったら会おう、また絵を描こう。
 もうその約束は、果たせない。俺が描くことをやめた。のうのうと生き延びる方を選んだ。少年には、会えない。
 会わないで終わるつもりだった。描かなくなった俺となど。



  
 


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
参加中です。クリックいただけると嬉しいです。

拍手[36回]

 再び画廊に足を運んだのは、それから二日後だった。寝る間も惜しんで卒業制作という仲間がほとんどの中、どうしても集中出来なくて諦めて制作室を出た。通帳の残高を確認し、ショップカードに記された営業時間を確認し、シェア仲間から借りた自転車で暮れかかった街を駆け抜けた。
 あれがどのくらいの値がするものなのかは分からない。ネットで調べた限りでは、遊川貢の作品は圧倒的な技術力とその精神性、そして名のある画家であったのに「辞めてしまった」希少性からコレクターの間では一千万に近い金額でやり取りされていた。そんな絵がなぜ売れずにあの古びた画廊に残っているのかは分からないが、複製だけだったら手持ちの金でなんとか交渉してみようと考えていた。
 ようやくたどり着いた画廊は、頼りない橙色のあかりが灯っていた。冬の夜の町は突き刺さるような凍えをもたらし、指先が切れてうまく扉を押すことができない。ショーウインドウにまだある複製にほっと息をつき、体当たりみたいにガラス戸を押し開けた。

「―や、これはこの間の、」
「絵、売ってくれませんか」

 いきなりの言葉に老いた店主は絶句したが、眼鏡の奥の小さな瞳をゆっくりと瞬かせると「とりあえずこちらへおいで」とストーブの側へ椅子を引っ張り出してくれた。それでも棒立ちになっていたのは、身体中が冷え切っていたせいだ。ゆっくりと足を動かし、勧められた椅子へ腰かけると、ようやくほどけかけた気がした。
 温かい緑茶と、いただきものだという饅頭を軽く火であぶって出してくれた。「こうやって食べるのが僕は好きでね」と穏やかに微笑み、自分も腰かける。しばらく黙ったままだったが、お茶を一口飲むと「絵と言うのはウインドウの?」と本題に入った。

「…そうです。遊川さんの」
「非売品なんだと話したね」
「だから、複製でもいいんです。今ここで20万なら、出せます。あとは、後日ちゃんと、お支払いしますから」
「待った待った、」

 店主は苦笑した。話が早すぎるよ、とまた緑茶をすする。僕はそうまでして、絵が欲しかった。だって描かれているのは間違いなく僕だという自信があった。
 男の絵など大嫌いなはずだった。圧倒的な画力は、その裏にある人の歪んだ精神を描きだそうとしていて、中には血を模した赤が足元に散る、目を覆いたくなる絵だってあるのだ。気分が悪いのに、でも目が離せない。そして僕は約束を覚えている。「大稀の欲しい絵を描いておくよ、その時は買ってくれ」。
 少年の絵は、単なるデッサンの類だろう。独特の繊細な線で描き出される描写力は相変わらずだが、そこには嫌悪していた気持ち悪さはなく、ただ純粋な、遊川貢の原点である気がした。だったらこれが僕の欲しいと思う絵なんだろう。そうだ、僕はこれが欲しい。
 買うことは出来ませんかと、再度店主に詰め寄った。
 彼はあごひげを撫でながら唸り、「本人の承諾を取ってみてからね」と言った。

「―本人? …遊川さんと連絡がつくんですか?」
「まあ、一応は作品を置いている訳だし。絵を辞めたとは言え、売買に関する契約はあるからね、いくらでも」

 慌てないで少し待っていてよ、と店主はカウンターの奥へと引っ込んだ。そこに電話があるらしく、声が切れ切れに聞こえてきた。
 電話の向こうに、男。いまどんな姿なのか。相変わらずくたびれているのか。繊細な指先をしているのか。険しい目をしているのか。会いたい? 
 絵を辞めた、あの人に?

「ああ、ちょっとごめん、きみの名前、なんて言う?」

 奥の方から店主の大きな声が響いた。僕は立ち上がり、電話の向こうを見るように、店主を見る。
 店主は一瞬だけ、小さな目を大きくさせた。

「国見です。国見、大稀」
「クニミダイキさんだね。失礼、お茶の続きを」

 それからまた、店主の姿が見えなくなる。また声が聞こえてきたが、僕は目を閉じた。
 なあ、あんたは俺を覚えているんだろう?
 約束は?
 

  

 

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
参加中です。クリックいただけると嬉しいです。
 

拍手[45回]

HOME]  [次のページ»
プロフィール
HN:
粟津原栗子
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナル小説(BL)書いてます。苦手な方は回れ右。
鶯太郎くんののんびり新生活「おやすみなさい、また明日。」17時にのんびり更新中。

****
20120404:樹海カップリング投票始めました。12時間置くと再び投票できます。10月5日までの半年間。コメント及び投票結果は今のところ私(管理人)しか見れません。遊んでやってくださいw
他、こここうしてほしいとかこれこうがいいとかご意見あればメールフォームよりお寄せください。よろしくお願いしますー

20120329:のんびりまったりやる気ない(そんなこともない)感じで新しいお話始めました。良ければー
カウンター
カレンダー
12 2012/01 02
S M T W T F S
フリーエリア
最新コメント
[05/17 粟津原栗子]
[05/15 粟津原栗子]
[05/13 如月久美子]
[05/11 粟津原栗子]
[05/10 Bei]
フリーエリア
↑日付クリックで一言ぼやいてるの見れます。
Powered by NINJA TOOLS
フリーエリア
バーコード
最新トラックバック
ブログ内検索
ブログ  [PR]レシピ 美容
Template by wolke4/Photo by 0501